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福島第一原発から放射性物質が流出していることについて、道原子力安全対策課の担当者は15日、「現時点で道内に影響は出ていない」と明言し、道内の放射線量の値は上昇していないとの見解を示した。午後2時20分から始まった道の会議で、道と北海道電力が泊原発周辺の地域22カ所でリアルタイムの値を測定する機器から得た測定結果に加え、青森県内の値も調べたうえで、報告した。
国立病院機構北海道がんセンター(札幌)の院長で、放射線治療が専門の西尾正道医師も15日、「道内で人体に影響を与えることはまずないと考えていい」と指摘した。
道南で本州に最も近い地域は、福島第一原発から約400キロ離れている。放射線の量は距離の二乗に逆比例し、例えば原発から1キロ地点での放射線量を1とすると、400キロ先は「16万分の1」になるからだ。
ただ道は、放射能の放出状況や気象条件によって放射性物質の飛散状況が変わるため、測定結果に注意を払い、警戒を緩めない意向だ。道と北電は移動して測定できるモニタリングカーを1台ずつ持っており、場合によっては出動させることにしている。
また道は15日から、福島県から道内に来た人を対象に、放射性物質の付着の有無を調べるスクリーニング検査を開始。この日は12人が受け、いずれも異常はなかった。今後も、12日以降に福島県に滞在した希望者に対し、道立衛生研究所(札幌市北区北19西12)で午後1時から同4時まで実施する。
■泊周辺の自治体 重く受け止める
泊原発周辺や本州に近い自治体では、危機的な状況に重い受け止めが広がった。
泊村と岩内町の両役場には、泊原発の放射線量や風向、風速を常時知らせるモニターが設置されている。泊村の牧野浩臣村長は「不安を感じないはずがない。地震だけでなく、大規模津波も大きな課題だと思い知らされた」と語った。
岩内町総務財政課の佐藤博樹防災交通担当係長は「防災計画全体を見直さないといけない」と話す。道、北電、泊原発の地元4町村は年1回、住民の避難も含めた大規模訓練を実施するが、避難する対象は原発から2キロ以内の住民のみという想定だからだ。
道内の市で本州に最も近い函館市には、市民から「放射線測定器はあるのか」という問い合わせが数件あった。だが、原発事故に対する防災計画や備えはないのが実情で、総務部防災担当の武田忠夫参事は「あまり使いたくない言葉だが、想定外の事態だ」と話した。
環境系市民団体は、今回の事態に厳しい視線を向ける。NPO法人の代表理事で風力発電の推進に取り組む環境活動家のピーター・ハウレットさん(55)は「原子力に『想定外』は許されないのに、これまで安全性ばかりが強調されてきた。日本は自然エネルギーにかじを切るべきだ」と指摘。「脱原発・クリーンエネルギー市民の会」(山田剛代表)は15日、菅政権に対して「迅速・正確な情報公開」を求める緊急声明を出した。
道の会議後に開かれた記者会見で、高橋はるみ知事は、道が策定している原子力防災計画について、「福島の状況を見極めたうえで、(計画の)見直しをやっていかなければならないのではないか」と述べた。
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写真:泊原発周辺の町村には放射線量などのデータが常時送られ、住民に公開されている=岩内町役場
2011年03月16日
■放射線治療医師「道内、影響まずない」福島第一原発から放射性物質が流出していることについて、道原子力安全対策課の担当者は15日、「現時点で道内に影響は出ていない」と明言し、道内の放射線量の値は上昇していないとの見解を示した。午後2時20分から始まった道の会議で、道と北海道電力が泊原発周辺の地域22カ所でリアルタイムの値を測定する機器から得た測定結果に加え、青森県内の値も調べたうえで、報告した。
国立病院機構北海道がんセンター(札幌)の院長で、放射線治療が専門の西尾正道医師も15日、「道内で人体に影響を与えることはまずないと考えていい」と指摘した。
道南で本州に最も近い地域は、福島第一原発から約400キロ離れている。放射線の量は距離の二乗に逆比例し、例えば原発から1キロ地点での放射線量を1とすると、400キロ先は「16万分の1」になるからだ。
ただ道は、放射能の放出状況や気象条件によって放射性物質の飛散状況が変わるため、測定結果に注意を払い、警戒を緩めない意向だ。道と北電は移動して測定できるモニタリングカーを1台ずつ持っており、場合によっては出動させることにしている。
また道は15日から、福島県から道内に来た人を対象に、放射性物質の付着の有無を調べるスクリーニング検査を開始。この日は12人が受け、いずれも異常はなかった。今後も、12日以降に福島県に滞在した希望者に対し、道立衛生研究所(札幌市北区北19西12)で午後1時から同4時まで実施する。
■泊周辺の自治体 重く受け止める
泊原発周辺や本州に近い自治体では、危機的な状況に重い受け止めが広がった。
泊村と岩内町の両役場には、泊原発の放射線量や風向、風速を常時知らせるモニターが設置されている。泊村の牧野浩臣村長は「不安を感じないはずがない。地震だけでなく、大規模津波も大きな課題だと思い知らされた」と語った。
岩内町総務財政課の佐藤博樹防災交通担当係長は「防災計画全体を見直さないといけない」と話す。道、北電、泊原発の地元4町村は年1回、住民の避難も含めた大規模訓練を実施するが、避難する対象は原発から2キロ以内の住民のみという想定だからだ。
道内の市で本州に最も近い函館市には、市民から「放射線測定器はあるのか」という問い合わせが数件あった。だが、原発事故に対する防災計画や備えはないのが実情で、総務部防災担当の武田忠夫参事は「あまり使いたくない言葉だが、想定外の事態だ」と話した。
環境系市民団体は、今回の事態に厳しい視線を向ける。NPO法人の代表理事で風力発電の推進に取り組む環境活動家のピーター・ハウレットさん(55)は「原子力に『想定外』は許されないのに、これまで安全性ばかりが強調されてきた。日本は自然エネルギーにかじを切るべきだ」と指摘。「脱原発・クリーンエネルギー市民の会」(山田剛代表)は15日、菅政権に対して「迅速・正確な情報公開」を求める緊急声明を出した。
道の会議後に開かれた記者会見で、高橋はるみ知事は、道が策定している原子力防災計画について、「福島の状況を見極めたうえで、(計画の)見直しをやっていかなければならないのではないか」と述べた。
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写真:泊原発周辺の町村には放射線量などのデータが常時送られ、住民に公開されている=岩内町役場