ダウンチルト同軸コリニア・・評価に協力をして頂いた方々のレポートである程度のアドバンテージがあることが分ってきた。
そこでダウンチルトの最終評価を山岳移動おこない最終確認してみた。
実験場所は伊勢原の高取山中腹の南東斜面、眼下は湘南地域で正面に平塚湘南平、右手には伊豆諸島、大島、利島が見えている。
つまり開けているのは南、東京湾・相模湾が180°見下ろせる場所だ。関東平野全域には飛びにくい場所を選んだ。
なぜか?関東平野が見下ろせる場所では通常同軸コリニアでもRS59なので違いが明確に分からないと考えたからだ。
上記の図は伝搬解析ソフトの描く伝搬状況だ。いわゆる通常GPでの伝搬を表している。
7WでGP系アンテナで送信した時、緑部分はS9になる地域、黄色はS5以下の地域だ。
ダウンチルト同軸コリニアアンテナに限れば
青鎖線で囲まれている南東方向は直接波が届く地域で59で到達する場所だ。
一方、赤鎖線の北から北東方向も黄色(S5以下で届く)で伝搬可能地域となっているがこの方向には300-600mクラスの山があってダウンチルトアンテナでは山は越えられず電波は飛ばない。
地図上のT,T2,E,Sのマークは実験に参加して頂いた局の運用場所だ。最遠はE局の茨城局距離89kmだ。
見通し距離内局2局、見通し距離外で62km,89kmの2局と偶然にも実験には好都合なバラつきだ。
その上使用アンテナがバラバラで・・結果が面白ろそうだ。
特に見通し距離外にあるT,E局との交信が出来るのか?信号はどのくらいか?が興味のあるところだ。
今回私が使用した機材は
無線機 FTM-10S、7W
アンテナ 430MHz 8段同軸コリニア(略称:N8)430MHz 16段ダウンチルト同軸コリニア(略称:D16)
【標高375mの実験地】
表のN8、D16の表記に書かれているのはそれぞれのアンテナで7W送信した際の相手局のレポートだ。またループや八木を使用している局には方向のレポートも頂いた。
通信実験の結果は下記の通りとなった。
【実験結果は、分かりやすくするために相手から頂いたレポートを通常のRSのほかに50(Sメータは振れてないけど聞こえる)と0(入感なしに分類して表記した)】
表の順に評価していく、(N8 8段通常同軸コリニアの性能は国内のアマチュア用メーカー製全GPを上回っている。それとダウンチルトの比較だ)
平塚局、T2:
室内5eleYAGI、本来平塚からアンテナ方向はNNWなのだがSW、つまり湘南平(標高180m)の反射で聞こえている
N8:53、D16:59+ →D16が少なくとも15dB強い
埼玉局、T:
7eleループ、アンテナ方向SW
N8:55、D16:59+ →D16が少なくとも12.5dB強い
16段同軸コリニア(N16)
N8:0、D16:53 →D16が少なくとも15dB強い
通常コリニア同士では入感が無いことから見通しではない事が分かる。
(市場のリグのSメータは殆どがS1 -98dBm程度に設定されている。実際のリグの感度は悪くても-115dBmが受信できる。従って、山岳では入感なしは-115dBm、S3が-90dBmで25dBの差となる。都市部ではノイズが酷いので入感なしは-105dBm程度の信号とし15dBとした。またSがひとつ違うと2.5dB差と計算している。)
謎1:N同士では交信出来ないが(=見通し外)D16では交信出来る
守谷局 E:
12段同軸コリニア(N12)
N8:0、D16:50 →D16が少なくとも6dB強い
10段アップチルト同軸コリニア(U12)
N8:50、D16:51 →D16が少なくとも7.5dB強い
謎2:N同士では交信出来ないが(=見通し外)D16では交信出来る
神奈川区局 S:
X7000
N8:59+、D16:59++ →D16が少なくとも6dB強い
結論:
ダウンチルトタイプは通常タイプのGPと比べ少なく見積もって6dB~20dBく強くなることが分かった
(特に山岳移動局にはお勧めだが使用場所を選ぶ)
次は謎について考察しよう。実は結果が見えていたのでこの移動地へやってきたのだ。そして想定通りの結果となった。
さいたま局の謎1:N同士では交信出来ないが(=見通し外)D16では交信出来る
埼玉局とはN同士で交信が出来ない。見通し内は山岳地帯に阻まれているからだ。普通ならダウンチルトの方がより条件が悪化し交信が出来ないのだ。
なのになぜ交信が可能なのか?それは相模湾~太平洋の海面反射だ。反射が強力でそれを拾って入感していたと考えている。
【眼下には相模湾、太平洋。右下に見えるのが湘南平】
私が目を付けたのは実はこれだ。この交信は偶然でなく必然だった。埼玉局は大山方向とレポートを頂いた・・海面からの反射も大山方向だ。(より南に近い南南西)
守谷局の謎2:N同士では交信出来ないが(=見通し外)D16では交信出来る
守谷との交信をイメージ図で表すと下記の通り。通常コリニアN同士(グレーのパターン)では守谷局は前方の丘にに阻まれる。
これをD16と守谷局がU12水色のアンテナパターンに切り替えると交信出来ることは図を見ればわかる。(地球の婉曲もあり正確ではないが)
アマチュア無線は「個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務」だ。
漫然とレポートを交換していても真実には辿りつかない。「どうして?」を繰り返すうちに真実に近づいてきていると思う。
電波伝搬って面白い。
今回は、電波伝搬実験に参加させていただき、ありがとうございました。
また、素晴らしいレポートを拝見させていただきました。
こちらで受信感度差を確認してみましたが、S5とS9⁺は、SSG入力で11dB差でしたのでほぼ合っています。
N8とD16のゲイン差を3dBとしても11dB差で入感するのは、とても不思議な伝搬ですね。
こちらでもコリニアとループ八木アンテナを遠隔切り替えで受信していますが、多くは、ループ八木を向けた方が強いですが、まれにコリニアが強いことがあり、理由が分からない
ことがあります。
こんな時、とてもイライラしてきます。仰角ローテーターでもつけて見たくなります。
・・・無理な話ですが・・・
不思議なコリニアの電波伝搬にハマりますね。
山岳移動を頻繁に行っていた頃、色々不思議な伝搬に出会いました。
初めて経験したのは今回の移動地だったのです。コリニアで聞こえている局が9eleループでは発見できなかったのです。
それを解明するのに10年かかりました。
TARさんのレポートがあって初めて理解できました。
>N8とD16のゲイン差を3dBとしても11dB差で入感する
ゲイン差3dB(実際にはここまでないでしょう)、上側放射を全て下に向けて3dB・・ここまでは計算できます。
それでも5dBはどこから湧いたのか?
ゲイン差計算はTARさんからかつて頂いたレポートを元に計算しました。
それから16段を超えると特殊な伝搬があることに気づいています。
現在はコリニア常設局に調べて貰っています。これもどうなるやら。
明日、天気が良ければ標高700mから声を出します。時間は11-12時には交信出来ると思います。
ご都合、時間が許せばお会いしましょう。