我が社は、目下「開店休業」状態で、工場のシャッターも閉まりっぱなしである。
そんな昨日午後6時を回った頃、インターフォンが鳴った。
そこには、大きなマスクをした見知らぬ人が立っていて、「ああ、〇〇君いてる?」とめっちゃ馴れ馴れしい。
誰かさっぱり分からなかったが、取り次ぐと、息子巨体を揺らして、3階から駆け下りて、1階で暫く話をしていた。
ふむ、あれは一体誰だ?名乗りもせず、息子をファーストネームで呼ぶ謎の男?
漸くリビングに戻ってきたので、「誰やのん?」と問うたら
「ああ、山田さんや」それは、随分前に、還暦になったのでという理由でうちを辞めたおっちゃんやった。
それが何で今頃?何の用事?カネの無心?なんて疑問が頭をぐるぐる回る。
「で、それで、何しにきたん?」
「いや、元気かなって、近所迄来たから寄ってみたんやて」ホンマカイナと何処までも疑う私。年取ると、色んな経験が積り、どう見ても良い方向が見えなくなっている。
元気ですかぁ~って用も無いのに寄るなんて、アリか?と思っちゃう。
山田さんは、ワクチンを接種したんだそうだ。をを、それを報告に来たのかな?
山田さんは、所謂長屋に住んでいる。長屋の年寄全員で接種に行ったんだそうだ。
「そら良かったねえ。で、どうも無いのん?」
「うん、今も打った所がちょっと痛いけど、熱もないし、打って良かったて言うてたで」ほうほう・・・で、息子も接種するのに前向きなのかな。でも、まだ接種の対象でも無いしな。
「でもね、同じ長屋に住んでいたボクと同じ年の兄ちゃんが、コロナ陽性になったらしい」
「ええええ”、そら、アカンやん」
「ほんで、予防接種してへんし、自宅待機になったんやて。でも、次第に具合が悪くなって、山田さんらが救急車呼んだんやけど、受け入れしてくれる病院がなくて、断られて断られて、結局死んでもーたんやて」
「それは・・・・気の毒な事やなあ」
「そんで、ボクの事思い出して、元気にしてるんかなと思て、訪ねて来たんやて」
今迄私の知る範囲の人で「コロナにかかった」とか「死んだ」なんて一人も居なかったので、安穏としていたけれど、案外身近にコロナが忍び寄っているのかもしらん。
若者が、それも接種券も送られて来ていないのに、自宅待機の末、救急車の中で、何軒もの病院に断られて死亡するなんて、しんどかっただろうなぁ、悔しかっただろうなと、胸が痛い。
そもそも訪ねてきた人も、顔さえ知らないし、若者に至ってはその人の近所だと言うだけで、私とは、無関係なんだけど、狭い大阪、より一層の対策を考えなくてはいけないのかしらん。
外出から帰宅したら、手洗いウガイは必須。
コロナはどこからやって来るか、姿が見えないだけに、怖い。