グーグルから消されたサイト――サーチエンジン対策の行き過ぎに注意
グーグルの検索順位をよくしようと各社がしのぎを削っている。写真はグーグル本社〔著作権:AP.2006〕 |
インターネット広告代理店大手のサイバーエージェントのグループが運営する複数のサイトが3月28日に突如として、検索サイト「グーグル」の検索結果から消えた。「メルマ」「ECナビ」などはサイバー社グループが展開するブランド名だが、サイト名や関連するキーワードをいくら入力してもグーグルの検索結果には表れなくなった。なぜか―。
グーグルは検索用のシステムを使って、世界中のインターネットサイトを巡回し、自社の検索データベースに情報を登録している。その際に、サイトの内容やサイトが外部のサイトからどれだけリンクを張られているかなど様々な要素から判断して、検索結果の表示順位を決めている。
その独自の順位付けの結果を意図的に変えようという行為がなされた場合、検索結果からそのサイトをはずすという手段をとっている。それらの意図的な順位操作は「サーチエンジンスパム」とも呼ばれる。
3月28日に検索結果から消されたサイバー社では翌29日に、グループの持つサイト間で相互にリンクを張っていたのが問題ではないかと気付き、それを削除した。そしてその翌々日の31日朝には、グーグルの検索結果に同社グループのサイトが入っていることを確認した。つまり、自社グループのサイト間で張っていた相互リンクがグーグルのシステムによってサーチエンジンスパムと判定されてしまったのだ。
検索結果から消されたのはサイバー社だけではない。検索サイトを利用したネット上のマーケティングや企業サイトのコンサルティングを手がけるセプテーニの佐伯竜司シニアマネジャーは「同時期に他の複数のサイトも消え、いまだに復帰していないものもある。それらはおおむねリンクファームという手法を取っていた」と指摘する。
佐伯氏によるとリンクファームとは、サイトの内容に関連性がないにも関わらず、相互に大量のリンクを張る行為という。グーグルは、リンクが張られていることによって順位付けが上がるため、これを意図的に操作しようというものだ。
グーグルやヤフーなど大手検索サイトで上位に表示されることは、サイト運営企業にとって大きな意味を持つ。そのため、検索エンジンの特徴を分析して表示順位を上げようとする工夫はごく普通に行われており、「SEO(Search Engine Optimization)」と呼ばれる。
■順位付けの基準、頻繁に変更
28日に検索結果から消されたサイトは、SEOを指導する複数のコンサルティング会社の顧客だった企業が少なくないと見られる。行き過ぎたSEOの下、お互いに資本関係や内容の関連性がないにも関わらずリンクを張っていたのではないか、とSEOに詳しい業界関係者の間では推測されている。
ところで、なぜ3月28日という日に一斉に消されたのか。グーグル日本法人は「検索結果を最適にするために、頻繁にシステムの設定を変えている。今回検索結果から消されたサイトは必ずしも同一の理由ではないが、設定変更で影響を受けたためでは」と説明する。
一方で、セプテーニの佐伯氏は「グーグルはビッグダディーと呼ばれるデータセンターの移行プロジェクトを現在進めている。そのシステム変更の中で、新しいスパム対策を適用したのではないか」と推測する。
グーグルは今やネット上の検索サービスの巨人だ。そこでの順位を上げれば一般顧客が自社サイトを見てくれる可能性が高まるため、ネット社会での影響度が増している。それゆえに、SEO業者がしのぎを削って、順位を上げるための手段を講じている。
ただ、その手段は今回の事例から見ても、諸刃の剣になる。行き過ぎた対策や意図せずにした行為によって、突如として検索結果から消されてしまう可能性もあるからだ。
今やほとんどの企業がウェブサイトを持つ時代になっている。特にサイト上で収益を上げる事業の場合、集客に躍起になるかもしれないが、そこで無理にネット上での検索結果順位を上げるよりも、「見る人のためになるようなサイト作りが欠かせない」(佐伯氏)だろう。
グーグルはサイトを運営する人向けの「ウェブマスターのための Google 情報」(http://www.google.co.jp/intl/ja/webmasters/index.html)というページで、グーグルの方針などを説明している。そこにはSEOについて、「サイトの掲載位置の向上に貢献するSEO」と「検索エンジンのインデックスから追放される可能性を高めるだけのSEO」の2つがあると、指摘している。
[2006年4月12日/IT PLUS]