・プリン体と認知症Purine and dementia ぷりんたいとにんちしょう
尿酸値が高くなると高尿酸血症Hyperuricemiaと診断し痛風・腎臓、肝臓障害・高血圧症の原因となります。原因物質としてのプリン塩基類には、プリン核を含み総称しプリン体Purineと呼ばれています。血液や尿が酸性に傾いたり、温度が低くなる事で溶けにくくなります。
尿酸は、正常では老化やガンの原因になる活性酸素の働きを抑えるスカベンジャーScavenger(掃除屋)であり血中での抗酸化作用を示します。
基準量において抗酸化作用があることから認知症にも有効ではないかといわれています。
尿酸値が著しく低い場合は低尿酸血症と呼ばれ、基準値は、血清尿酸値が2.0mg/dl以下の場合に低尿酸血症と診断します。
原因は、①尿酸産生低下であり稀な遺伝的疾患で尿酸になる前の物質の沈着で関節炎が起きたり、尿路結石が出来たりします。
②腎臓での尿への尿酸排泄亢進で、1)再吸収障害で遺伝的な原因による特発性、尿細管障害による続発性があります。2)分泌亢進、3)一過性の低尿酸血症があり頸静脈的高カロリー輸液、糖尿病、悪性腫瘍、SIADH(Syndrome of Inappropriate secretion of Antidiuretic Hormone:抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)、薬剤などがあげられています。
尿酸には活性酸素を除去する作用があります。低尿酸血症の人の合併症として運動後腎不全症候群で尿酸が少なすぎると活性酸素の害が出てきます。
やや激しい運動(無酸素運動)の数時間後に腎臓の血流低下による尿細管障害による急性腎不全が起こることがあり自覚症状としては運動後の腰背部痛・嘔気嘔吐です。風邪をひいて解熱鎮痛薬を服用しながら運動したりした後に起こりやすいと言われています。
また、普段から尿中の尿酸が多いのも尿路結石を生じ易くなります。
活性酸素を除去する作用があるので尿酸値が低いほどアルツハイマー病などの脳の変性疾患にかかり易いという報告があります。
アルコールは、40~50歳代からの尿酸排泄機能が低下し血液中の尿酸の量を増加させます。エネルギー源としてたんぱく質から糖に変換される時に尿酸、窒素が多く作られて高尿酸血症を引き起こすことがあります。
ちなみに、尿酸値の数値を女性・男性の性別の違いで比較すると、一般的に女性の方が尿酸値が低いことが殆どで、尿酸値の基準値の設定も女性の方が男性の基準値よりも低い範囲で設定しています。
実際に、高尿酸血症と診断され痛風の症状に悩む患者さんは、圧倒的に男性に多く見られるようです。
2007年米医学誌「Neuropsychology」1月号に尿酸値を調べる簡単な血液検査によって、加齢による認知障害を予測できる可能性を示し掲載していました。
米ジョンズ・ホプキンス大学(ボルチモア)のDavid Schretlen氏らが60~92歳の高齢者96人について血液検査で尿酸値(正常値は2.0~6.0mg/dL)を調べると同時に、ウェクスラー成人知能検査(WAIS)をはじめとする神経心理学テストを用いて情報処理能力および記憶力を評価したものです。
尿酸値が正常高値の女性4.8~7.1mg/dL、男性5.8~7.6mg/dLであった被験者は、年齢、性別、人種、教育、糖尿病、高血圧、喫煙、アルコール乱用などの因子にかかわらず、心的処理速度、言語性記憶および作業記憶の検査スコアが最も低かったと報告しています。
抗酸化作用がありますが、尿酸と認知障害に関連があるのは意外ともいえますが、「この知見は尿酸検査が高齢者の認知障害を早期に検知するためのツールとして有用であることを示すものだ」とSchretlen氏らは述べています。
尿酸値を低下させる高尿酸血症治療薬によって認知力低下ひいては認知症を回避できるかどうかについては、さらに研究を重ねる必要があるといいます。
Schretlen氏によると、尿酸値の上昇と、いずれも認知症の危険因子として知られる高血圧症、アテローム性動脈硬化症、2型糖尿病およびメタボリックシンドロームとの間に関連がみられるほか、末期腎疾患により高齢者の認知障害および認知症のリスクが増大することを示す証拠も増えてきているといいます。
一方一部の研究では、尿酸には神経保護作用があり、神経学的疾患のリスクを低下させる可能性があることを示唆しています。
尿酸の値が低すぎると、認知症、パーキンソン氏病などの神経系の病気を引き起こしやすいことが分かっています。このことから、プリン体を多く摂取しやすいビールが認知症に良いという誤解も生まれたと考えられます。
尿酸には強力な抗酸化物質と認識されており、その血漿中濃度はビタミンC、E等の他の抗酸化物質の約10倍であるとの報告もあります。
尿酸値が基準値よりも高いと痛風の、低すぎると認知症の危険がと身体に障害を生じやすいということが理解できます。
60~92歳の高齢者ではすでに生活習慣病としての高血圧症・糖尿病などが進行していたものと思われます。若年令層では基準値内で少し高めの方が良いのではと考えられます。
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