2024/7/6
・終戦後の広島、原爆で親しい人たちを失った美津江が、自分だけ生き残ってしまった罪悪感と、芽生えてしまった恋心との板挟みに苦しむ話。二人芝居。
・自分が観た回は飛世早哉香さんと松井真人さん。
・劇団あおきりみかんの松井さんはたぶん初めて。
・終始、早口かつ言葉が全部クリアに頭に入ってくる。
・父親の竹造は存在自体がイレギュラーな役で、時には怒り、時には囃す、常に場を動かす立場。
・緩急も声色も自由自在で役の高い要求に応えていた。
・竹造は幽霊なのか娘の想像なのかどちらだっけと思いながら見ていたら、セリフ的に想像のほうだった。
・幽霊は人の死を矮小化する側面もあるので、こういう題材にふさわしくないのはわかる。
・美津江の頭の中に竹造の人格が生成されて、彼女自身の思考を通さずに勝手に話し出す感じなのかな。
・美津江の中の竹造の人格は当然生前の竹造がもとになっているので、それまでの彼の人生が反映される。
・死を矮小化せず、死者を蔑ろにしないようにする仕掛け。ありがちに見えて結構ギリギリのバランス。
・そんな竹造の頑張りに対して娘はなかなか動かない。
・死んでいった人々のためにも生きるというのは正論だけど、人間正論だけでは動かない。
・美津江は、人より強いわけでもなく、臆病なところがあり、判断を間違えたりもする。つまり、より生身の人間に近い。
・飛世さんの過去の二人芝居を思い返してみると、どちらも比較的迷いを表に出さないタイプの役を演じていたと思うので、今回の美津江役は新鮮だった。
・恋心は様式としては強いけど、地に足の着いた人間として表現するのはかなり難しそう。
・悲惨なことを繰り返さないため、後世に記録を残そうとする話ではあるんだけど、今現在、自分たちがこの悲劇を引き継げているのかはかなり怪しい。
・ちょうど都知事選で、過去の虐殺事件を無かったことにしようとする人が圧勝しているのを見て、ちょっと無理かもとは思ってしまう。
・感動して泣くのもいいけど、その先が大事。
・先人が大きな犠牲を払いながら残してくれた記憶や文化が活きる世の中であってほしいなと思う。
(演劇専用小劇場BLOCH 7/5 19:30)
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