2025/2/10
表題作と『第三紀層の魚』の二作品。
『共喰い』は、川辺の町で暮らす青年が、暴力と性欲で生きているような父親の影響下にいることに悩む話。
田中慎弥作品は初めてだし、現代作家の純文学もほとんど読んでいない。
年代的に作者の青年時代の実体験もそれなりに入っているんだろうなと思いつつ、描写の細かさと事象の非現実感とのギャップに戸惑う。
陰鬱とした話だなと読んでいるうちに、後ろから表題が追いかけてくるような構成。
文字だけでここまで描けるのはすごい。説明と描写はだいぶん違う。
『第三紀層の魚』は、同じように少年と曾祖父との交流と別れの様子を描いた話。
交流と言っても心温まるようなものではなく、他の家族との距離感の違い、人を亡くしたときの心の動きが細かく書かれている。
作者=主人公ではないにしても、鏡をしっかり見た、ごまかしのない自画像のような作品だった。
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