2024/6/4
・青森にある高校の弱小野球部が、中途入部した熱血女子マネージャーと、東日本大震災で被災した元野球部と、イタコのおばあちゃんとともに甲子園を目指す話。
・最初に出演者が舞台に集合してウォーミングアップするところから始まり、シームレスに本編に移行する。
・出演者はおそらく30人弱。
・完全素舞台、照明も最低限。小道具や舞台装置は肉体、音響効果は声ですべて表現する。
・時々なんでそこにいるのかよくわからないモチーフの人たちもいたりするが、それも含めて楽しい。
・演劇博物館の説明によると、被災地など、どんな場所でも上演できるようにこの形態になったとのこと。
・実際、2011年~2020年5月時点で104ステージ上演されている。高校演劇史上、屈指の話題作であり、名作と言っていいと思う。
・戯曲は読んでいたけど、やはり映像は印象が変わる。
・野手がエラーするだけのシーンも、スローモーション演技で見せる。演出の手数が多い。
・夕方カラスが飛ぶシーン。最初は二羽、次が変な鳴き方のカラスを加えて三羽になるところも、細かい。
・被災地から来た転校生に、イタコが往年の名投手沢村栄治の霊をおろすことで地区大会を勝ち進む。
・ズルいと言えばズルいんだけど、イタコの修業自体がハードで誰にでもできるわけではないという条件でバランスをとっている。
・マネージャーが元野球部を勧誘するところ、表面的な説得ではなく、自身の経験を踏まえたお願いにしている。
・既視感ゆえの安定感がある話だからこそ、調整をしっかりきかせた脚本と演出に、技術の高さを感じる。
・結果、東日本大震災のサバイバーズギルドを扱った作品なのに、生々しさの少ない娯楽作に仕上がっている。
・戦争で野球人生を全うできなかった沢村栄治の気持ちまでフォローしているのもすごい。
・現実でこんなに簡単に立ち直るのは難しいのかもしれないけど、イタコが出てきて死者をおろすような有り得ない事象を通して回復していく話なので、当事者の方が見ても不快感は少なそう。
・逆に、そこまでしないと傷は癒えないのかもしれないという視点を、非当事者としては持っておきたい。
(早稲田演劇博物館JDTA)
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