前出のクラシック好きの友人のおかげで、なんとなく聴いていたクラシック曲をひとつひとつ意識できるようになったのですが、これもそういう曲のひとつです。友人が持っていたのはカール・リヒターの全曲集で、最初僕はおまけ(?)で入っていたヴァイオリンとオーボエのための協奏曲の方が気に入っていて、ついでに、といってはあまりにナンですが本編であるこっちもまたよく聴くようになりました。
クラシックはあまり分けて聴いたりしないんだけど、この5番の第1楽章は別で、チェンバロのソロはロックンロールだと思います。って、こんな事クラシック好きな人は言わないか。いや、でもロック好きな人はこの曲は好きになれると思うよ。ダメ?5番はあとパブロ・カザルスの演奏のやつも持っているんですが、面白いのは同じ曲なのに全然違うの。当たり前なんだけど。カザルスのはカザルス色がばっちり出てるし、チェンバロじゃなくてピアノ使ってんだよね、印象がかなり違う。リヒターのはわざとテンポを崩さずにマシンのように音を刻んでゆく。クラシックじゃ言わないと思うけど、ドライブ感が強くてよい。タテノリ。なんかもうその友人に聞かれたら怒られるな。
で、スタンダードというかいわゆる「名演奏」というのも聴いてみよう、と思ってこのCDを買ったんですが、最初意外と5番第1楽章の印象は薄かったんです。とても丁寧に弾いていて、抑揚も必要十分でしつこくもなく物足りなくもない。ところが、全曲とおして聴いてみるとこれが凄い。演奏に何か風格のようなものがあって、曲の作りも丁寧でひとつひとつの音まで曲想を行き渡らせているのがありありと解るんです。リヒターの演奏でついノリで聴いてしまう癖をつけてしまっていた僕にはちょっとしたショックでした。「ああ、本当に綺麗なクラシック曲だったんだな」、って(そのまんま)。その後でもう一度5番を聴いてみると、やっぱり良い。曲が立体的に聴こえるというか、あらためてバッハって凄い人だったんだ、と思い知らされる感じです。良い曲と良い演奏。もちろん、リヒターのが悪い、ってんじゃなくてよ。たとえていえば、レオンハルトのは横綱。リヒターは前捌きが上手い売出し中の三役で、カザルスは型を持ったベテランの前頭(10枚目あたりにいた栃乃和歌みたいな)。
そのあとしばらくしてその友人は「ちょっとオレの印象と違うんだ」と言って持っていたそのリヒター/ミュンヘン・バッハのCDを売りに出していました。別の友人が「お得だ」と言って買ってましたが、今思うといいチャンス逃したな。結局僕は社会人になってからちゃんと定価で買ってしまいました。クラシックなんて特に、最初の演奏の刷り込みって強いんだよなあ、、、ってリヒター版の話しかしてないな。
J.S.BACH「BRANDENBURG CONCERTOS」LEONHARDT SONY SRCR 2107-8