学生時代に一応音系と言ってもいいかな?的サークルにいたことがありまして、今や楽器の方はさっぱりですが当時友人や先輩に引きずりこまれた音楽にはいまだに、というか当時以上にはまっていたりして、その影響は思った以上に深刻であるわけです。いや、いい意味で。
「趣味はクラシック鑑賞」と豪語する友人(ほんとにすごかったけど)にいろいろ紹介してもらって僕もクラシックをちょこちょこと聴くようになったんですが、やっぱり強烈な印象として残っているのは、当時20世紀最後の巨匠とか言われたレナード・バーンスタインをリアルタイムで見れたことでしょうか。NHKだったかでリハーサルの様子を番組にしていて、「ああ、こうやってオーケストラの演奏が作られていくんだ」というのが分かってから、ベートーベンやらブラームスやらをまともに聴くようになりました。だってさ、それまでどっかで「何で棒振ってるだけの人がえらそうなんだろう?」って思ってたもんね。
バーンスタインがその番組で振っていたオーケストラがウィーン・フィルで、曲がこの「ブラームスの1番」でした。、、、確か、、、違ったっけ?(シューマンだったかもしれない)その友人はそのライブCDをかけて第1楽章の冒頭「どう、絶望的だろ?」って言うんですよ。しかも最初の40秒を繰り返して。そう言われたらそう聴こえるよね。そのせいではじめはなんだか暗い曲で、しかも4楽章もあって、リハーサルの映像に興味を持たなければ最後まで聴かなかったかも、という印象でした。
これもバランスのいいヘッドホンで音量を大きくして聴くと気持ちいい曲の代表格ですが、こういう第1楽章の重ったいところをじっくり聴いてずぶ濡れになってから第3楽章、そんで第4楽章の最後の主題が出てくるところなんかを聴くと、ほんとうに“赦される”感じがします。今でもじっくり聴くとこの部分で鳥肌が立ちます。あー、クラシックを聴く人ってこういうことを楽しんでるのかなあ、と思います。ゆっくり時間をかける余裕がないとなかなかこういう聴き方はできないんだけど、費やした時間の分だけ音楽が応えてくれる、音楽から単純な感情だけではないものを引っ張り出すことが出来るんだな、ということを経験すると、やっぱり時間を見つけてこういう音楽の浸り方をまたしたくなります。あ、いや、逆に音楽を触媒に自分から引っ張りだすのかな。
ブラームスさんも当時は売れっ子作曲家だったわけで、つまり「今のオレの気持ちを曲にしたんだ、聞いてくれ」って言ってるラップシンガーとかとやってることは基本的に同じですよね、クラシックっつったって。まあ量感は圧倒的に違いますが。そんなことを最近なんとなく思ったんですが、リハーサルでバーンスタインと楽団の奏者を見たそのときの感想も、今あらためて言葉にしちゃうとつまり、やっぱ結局どいつもこいつも人間なんだな、って言う事なのかなって思いました。えーと、終わります。
BRAHMS「SYMPHONIE NR.1」Wiener Philharmoniker/Bernstein Grammophon 410 081-2
学生のときよく「○○の夕べ」と称して、ただ友人の家に集まって酒飲んでダベるだけなんですが、いちおうテーマを決めて集まるわけです。だいたいいつも話のきっかけになっただけで終わりなんだけど。その日は「現代音楽の夕べ」ということで、みんなじぶん家のCDからいわゆる難解なやつを選んで持ち寄ったのですが、その時ある友人が持ってきたのがスティーブ・ライヒの「6台のピアノ」でした。
スティーブ・ライヒは「ミニマル・ミュージック」というジャンルの人で、これは単調なリズムやメロディーを繰り返す中での変化を表現するんだそうです。この曲では録音テープの片方だけ回転速度を下げるような感じでリズムがずれていく所があって、その友人も「そこがふわふわした感じで気持ちいい」と言っていました。当時は何言ってんだこの人と思ったものでしたが、就職してしばらくしてから、目新しいCDないかなと思ってレコード屋に出向いたときにそのライヒさんが打楽器だけで何かやってるのを見つけて、物は試し、買ってみました。
ピアノの時は音が鋭利な感じがしたのですが、この「Drumming」では、インドのタブラみたいな太鼓と、マリンバ、あと鉄琴を使っていて、それほどキツい感じがなく、気に入って繰り返し聴くようになりました。ミニマル・ミュージックに共通みたいですが「前の小節よりちょっと違う」がずうーっと続く、そのちょっとした変化の積み重ねが、あるときは偶発的なメロディを浮き上がらせたり、拍の強弱がちょっと変わっただけでリズムの印象がぜんぜん違ったり。それでいて全体としては単調なリズムが続くわけですから、「気を抜けば眠れる」ほどのリラックス状態になります。あの時の友人の言葉、結局今じゃ自分が同じような音楽を聴いていたりするわけで、なんだか不思議な感じです。
ライナーノーツを見ると、ライヒさんがガーナから帰ってきて作った曲らしいですが、言われてみればアフリカの民俗音楽的な雰囲気がしなくもない。それも僕が気に入った理由かもしれません。いちおうCDでは4曲、ということになってますが、太鼓→マリンバ→鉄琴→全部、と50分近く鳴りっぱなしです。最近、あれ何ていうんだ、メモリだかHDDだかで再生するやつ、に入れてるんですが、あれ歌謡曲用に作ってあって曲と曲の間に操作時間のための無音部分が必ず1秒近く入るんですよね。こういう曲聴くとホント台無しです。まあ通勤のとき聴いてるわけだから、電車の音とかアナウンスとかどうせ何かしらうるさいんで気にしないけどさ。
ちなみにその夜、僕が持っていったのはビートルズのホワイトアルバム、「Revolution 9」です。ヘンだよね、オノ・ヨーコ。
STEVE REICH「DRUMMING」NONESUCH WPCS-5054
「出没アド街ック天国」とかでよく使われる「テケテケテケテケ・・・」って音楽、ザ・ベンチャーズよりはちょっとトガった感じのやつね、知ってる人どのくらいいるのかな。ディック・デイルというギター弾きのおっさんの曲です。
NHK-BSが見れた頃だったか、昔の音楽シーンについて3夜連続とかで番組があって見たら、ベンチャーズやビーチ・ボーイズとかの曲の合間になんか汗臭いおっさんが凄いギターを弾いてるんですよ。長い髪を後ろで結わえて、よれよれのシャツに擦り切れたジーンズ、肩にかけたギターをただ無心に弾きつづける不思議な画。それがそのアド街テケテケ、「miserlou」だったんですね。
今はもうBGMの定番みたいになっちゃってるのであまりよく聴いたことある人ってそんなにいないかもしれないんですが、冒頭から低い音で「ベケベケベケベケ・・・」と始まってベースとシンバルが「バシン」という感じで入るところなんか、最初聴いたときは圧倒されました。そこからいわゆるサーフィン・ギターと呼ばれる曲の常套でシンバルが鳴り続けるきらびやかなリズムに乗せてトレモロ(テケテケテケと弾き続けながら音を伸ばす弾き方)がメロディーを奏でる、非常にドライブ感があって僕好みの曲です。最後に現れるピアノなんか早くて文字通り叩いてる感じ。
これはベスト盤ということで、ほかにはハリー・ベラフォンテで聴いた事があった「ハヴァ・ナギラ」のアレンジもあるんですが、何じゃこりゃ?全っ然違う曲になってる。「ハヴァンナ、ランナンナ」みたいなのんびりムードまるで無し、トルク丸出し。次の「Riders in the Sky」の出だしはドラムソロからギターの「ギュン」で主題に入り、これも基本の3,4,7のスネアが特急列車のようなスピード感出っぱなし。中にはボーカルが入った曲やちょっとゆったりめの曲もあるんですが、この手の早い曲を選んでベンチャーズと混ぜて聴くと色合いの違いが出てなかなか面白いです。
ときに、なぜか途中でちょっと間の抜けた掛け声が入るんですが、あれ何だろう?
「THE BEST OF DICK DALE & HIS DEL-TONES」RHINO R2 75756
正確なタイトルすらよくわからないんですよ、このディスク、、、
僕がガッコを出たあたりから、明治でしたっけ、左翼活動組織とのからみか何かで学生協が解体されたとか聞いたことがあったりとか、もう今では学生生活が僕の頃とはだいぶ違うみたいなんですが、卒業してからこのかた、学校にはちっとも寄り付かないのであまりよく知らないのです。ま、そんな話とはあまり関係ないですが、学生の時は食堂の前によく安いCD売りが生協主催で来たりしていたなあ、と。企画CDというのか再販CDというのか分かりませんが、1枚千円くらいで、まあ普段よりは冒険できるんでよくいろんな変わったディスクを買っては友人と持ち寄って聴いたりしていました。
これもそんなCDのひとつで、パッと裏を見たとき、収録曲の中に「ゲイ・ハワイアン・パーティ」という文字を見て即買いしました。何故って、ネタになると思って。だって「ゲイ」で「ハワイアン」な「パーティ」ですよ、聴かなくてどうしますか。ってまあ、実際にはそれはいい意味で期待はずれでして、普通のハワイアンなポップソングでしたけど。「ゲイ」って「楽しい」って意味があるんですってね。そんだけ。どっちかっつーと「ハワイアン・カウボーイ」の方がコンセプト不明だったな。
友人のひとりはこういうCDを「インチキCD」と(親しみを込めて)呼んでました。ホント口が悪いな。別の友人はCDが出始めた頃のドイツ・グラモフォンのCDを持ってましたが、蒸着が荒くて電灯に透かすと穴が見えました。こういうのこそインチキCDって言うんじゃないですかねえ。
(2024/7/7 修正)
「HAWAIIAN WORLD MUSIC」AILE DISC GRN-2087
ジョン・ゾーンというヘンな兄ちゃんというかおっちゃんのCDです。ボーカル入り。というと知らない人はどんな歌を思い浮かべるのだろう、、、?
実を言うと僕がこの人の音楽をはじめて聴いたのは何を隠そう「空耳アワー」なのです。そう、タモリがやってる深夜番組のアレ。あの一部で超有名なコーナーでたまたま「田中がカタカナ、ださー」と絶叫する曲を見たのが最初で、第一印象は「ヘンなの。また、あの、デスメタルとかあっちですか」でした。知る人ぞ知るデスメタルの頻度は結構高いのと、ビデオの出来もあって印象は強かったのですが、僕自身はデスメタルはとんと疎いしあまり興味がなくってよくわからないので、いわゆる余所の世界かな、と。そしたら友人が「ジョン・ゾーンいいよ。ライブ貸したげる。ボーカル日本人なんだぜ」といって、衛星かなんかで撮ったライブのビデオを借りたのです。
ジョン・ゾーンは、なんていうんですかね、ジャンル分けの難しい人なんですが、いちおうジャズ・フュージョンと一括りにすると入るみたいです。本人はサックス吹きですが、とにかく挑戦的というか実験的というか、いろいろ試してみている感じの強い変わった曲をたくさん作っているみたいです。で、その日本人ボーカル入りのライブも、まあ今まで聴いたことのないような曲ばっかり。だってさ、フリー演奏っていうの?めちゃくちゃな音程でピロパロ吹きまくったかと思うとドラムがドカドカ、ボーカルなんて「声という楽器」で同じことをやる、つまり絶叫し続けるんですよ。チッチッチッチッドタドタドタドタブロロロロロロ「ゥワー!ゥワー!ゥワー!ィヤッ!ィヤッ!ィヤッ!」何をどう楽しめっていうんだ?と思いつつ、繰り返し聴くとだんだん慣れてくるところが怖い。
ただ、そういうことを曲作りでもライブでもやるんで、呼ばれてる演奏者はみんな一流の腕ききなんですね。同じ実験的でも、ボーカルなしの曲はメロディもちゃんとあって聴いてて分かるし、演奏がしっかりしているのですごくカッコいい。エフェクトのかけ方で遊んでる「Sunset Surfer」13分にわたる掛け合いの「The Yodel」えーとこれ、15拍子なのか「Metaltov」ほか「Party Girl」「Terkmani Teepee」あたりは、そのライブビデオをきっかけに聴くようになりました。
このうち「The Yodel」以外が入ったのがこの「Radio」。ほんとは「The Yodel」の入ったやつがほしかったんだけどその時レコード屋になかったんで、ほか全部入っているからいいや、と思って買いました。前半はインストゥルメンタル中心、だんだん雰囲気が刺々しくなってきてちょうど真ん中あたりからボーカルが入りだす、という構成もなかなかカッコよくって、ボーカル入りの曲も結構聴くようになりました。でも、脳波でいったら間違いなくβ波だから、聴くタイミングを間違えるとすごく疲れちゃうんですよね。一度会社に行くとき聴いちゃって、正門を入るときにちょうどボーカル真っ最中。その日はあまり仕事に集中できませんでしたよ、と曲のせいにしとく。
(2024/7/7 修正)
NAKED CITY「RADIO」AVANT AVAN003