高校のとき、部活の遠征で関東の町に合宿したことがありまして、民宿みたいなところに雑魚寝して、来る日も来る日も試合して負けて(たまに勝って)、という毎日だったのですが、ひとりわざわざラジカセを持ってきた猛者がおりまして。「これいいんだよ~みんな聴け~」と朝っぱらから流していたのがこのHelloween。聴いたことある人はご存知かと思いますがヘビーメタルです。
バスドラムという、リンゴ・スターがドラム叩くとき「The Beatles」って書いてあるこっち向きの一番でかい太鼓ね、あれを2つ並べて両足で叩くんです。ツーバスとか言うらしいんですが、ふつう拍子をとるために1~2回使うバスドラムを8回とかやるんですね。曲の間中通奏低音が「ドドドドドドドドドドドドドドドド」って。んでギターは唸るしボーカルは叫ぶし、寝てられるかっつーの。
このHelloweenというバンドは、たしか日本では「Keeper of the seven keys」という連作で人気が出たと記憶していますが、クラシックの楽曲構成を意識したような作りだったりけっこう丁寧に作っていて、まじめに聴くとよく出来た内容なんですね。このCDは、それで売れたあとたしかヨーロッパで出してたデビュー前後のミニLPなんかをまとめて出したCDだったと思います。このCDではカイ・ハンセンというギターの人がボーカルもやっていて、時期的にはこの後になる「Keeper~」なんかとは(ボーカルが変わって、というのもありますが)ちょっと雰囲気が違います。僕はどっちかっていうとこっちの方が好きです。荒い感じが残るけど勢いがあって。あと、このカイ・ハンセンの歌がなんとなく悲しげなのも好きですね。「How Many Tears」なんて歌詞をちゃんと読むとヒッピー全盛の頃を思い出すような反戦歌で、このボーカルで聴くと涙が出そうになるくらいです。でもそんな悲しげなはずの曲でもバスドラムはずうっとドコドコ言いつづけるんだよね。
「うるせーな、やめろよそれ」と最初は不評だった朝のHelloweenでしたが、一週間くらいするとみんな慣れちゃって、帰ってからCD買った奴が僕も含めて数人いました。音楽を繰り返し聴かせて馴染ませてしまう「刷り込み」の技法が存在することをこの時初めて実感したのです。
Helloween「Helloween EP/Walls Of Jericho」Noise Records N0088