縁起笑店

縁起の道も招き猫から
陶芸家猫社長のつれづれコラム
横浜の縁起村から伊豆の満腹村に移住

真夜中のくいだおれ太郎

2008-07-14 | Weblog
道頓堀のくいだおれ太郎、あの顔は名物おかみとそっくりだ。もしかしておかみのデスマスク、今は
ライフマスクって言うのかな、それから起こした顔じゃないかと猫社長は一人で合点している。
真夜中の住宅街、草木も眠る丑三つ時、猫社長は家から逃げ出したピノコを探すために真夜中の屋外にいた。
犬がどこかで鳴いている。ピノコに吠えているのかもしれない。声の聞こえる方角にむかって歩いた。
終電後の住宅街は遠くで車のエンジン音が時折聞こえてくる以外はひっそりしていた。
ピノコ、囁くような声で歩いていたら、トントントン、ブリキを叩くような軽い音が前方から聞こえてきた。
なんだろうこんな真夜中に、家の中からじゃないな、いやな予感に足を止め、前を伺った。
ギョッとした。赤と白の縦縞ストライプの衣装をまとった人間がボーと蛍光灯の薄明かりに浮かび上がって
いる。そいつは腹に巻き付けた太鼓をたたきながらゆっくりこちらへ近づいてきた。
トントントン、太い眉毛が上下に動き、黒い眼鏡をかけて薄笑いを浮かべている。気持ち悪いあの顔、
猫社長は恐怖で足がすくんでその場で固まってしまった。
くいだおれ太郎だった。トントントン、太郎は猫社長の三歩手前まで接近して止まった。もうだめだと思った。
だが彼は猫社長の方へ首を回して魚の腐ったような目で見つめたままだった。ふと足下に目をやると、
太郎のズボンの裾に齧り付いたまま離れないピノコがいた。笑っているけど、かなり困っていたようだった。
ある日家のチャイムがピンポーンと鳴って出てみて、くいだおれ太郎が立っていたらやはりものすごく怖い。
平気なのはピノコだけだ。