英検の合否発表の季節になりました。受験した皆様いかがだったでしょうか?
大学入試よりはるかに素直な問題が出題されるのが実用英検とはいえ、大きな欠点があります。それは2級以下の一次合格ラインが六割前後であるため、基礎が未完成なまま上の級に誘導されてしまうシステムになっているということです。
たとえば、実用英検3級では中学卒業程度の問題が出題されるとはいえ、3級合格者の大半は中学英語が不完全です。客観式四択問題の一次試験で六割の得点でも合格できるということは、自信をもって正解できた問題が五割程度でも受かってしまうということです。最難関の1級と準1級のみが七割程度で2級以下は六割程度という合格ラインは、合理的な英語習得の観点から見れば完全に倒錯しています。基礎的なものほどしっかりマスターしなければ英語は伸び悩みます。
5級から2級までの一次合格ラインを八割に上げて、準1級、1級の一次合格ラインを現行の七割程度に据え置けば準1級、1級の合格者は確実に増えるでしょう。もちろん準1級、1級合格者とて七割程度の得点で満足しないのがさらなるレベルアップのカギになります。
すでに合格している級のレベルの英語をコンスタントに九割程度得点できる位まで基礎を固めてから上の級の勉強を始めるのが、「お金をかけない英検合格法」です。
このことに気づいて私は八回も落ちてしまった英検1級にようやく合格し、英検1級より一ランク上の国連英検特A級には一度落ちただけで合格しました。この対策はあらゆる級に有効です。3級に合格したい中学生には4級レベルの英語を固めてから3級レベルの勉強を始めること、2級に合格したい高校生には準2級レベルの英語を固めてから2級レベルの勉強を開始することを助言して、ほとんどの場合いい結果が出ています。
英検が英語検定産業をほぼ独占していた時代には、低い得点で合格させて上の級を何度も受けさせるのが儲かる方法だったのかも知れません。しかし最近は、スコアのはっきり出るTOEICに英検は押され気味と聞きます。
設問は良質な上、試験問題を持ち帰れて、しかもネット上に問題と解答を公開するという良心的な側面が英検協会にはたくさんあるのですから、一次合格ラインを上げるという改革を望まずにはいられません。そうすれば実用英検の社会的信用は高まり受験者は増え、同じ級を受けて何度も落ちる「英検難民」が減っても英検協会の収益は増えると思います。
大学入試よりはるかに素直な問題が出題されるのが実用英検とはいえ、大きな欠点があります。それは2級以下の一次合格ラインが六割前後であるため、基礎が未完成なまま上の級に誘導されてしまうシステムになっているということです。
たとえば、実用英検3級では中学卒業程度の問題が出題されるとはいえ、3級合格者の大半は中学英語が不完全です。客観式四択問題の一次試験で六割の得点でも合格できるということは、自信をもって正解できた問題が五割程度でも受かってしまうということです。最難関の1級と準1級のみが七割程度で2級以下は六割程度という合格ラインは、合理的な英語習得の観点から見れば完全に倒錯しています。基礎的なものほどしっかりマスターしなければ英語は伸び悩みます。
5級から2級までの一次合格ラインを八割に上げて、準1級、1級の一次合格ラインを現行の七割程度に据え置けば準1級、1級の合格者は確実に増えるでしょう。もちろん準1級、1級合格者とて七割程度の得点で満足しないのがさらなるレベルアップのカギになります。
すでに合格している級のレベルの英語をコンスタントに九割程度得点できる位まで基礎を固めてから上の級の勉強を始めるのが、「お金をかけない英検合格法」です。
このことに気づいて私は八回も落ちてしまった英検1級にようやく合格し、英検1級より一ランク上の国連英検特A級には一度落ちただけで合格しました。この対策はあらゆる級に有効です。3級に合格したい中学生には4級レベルの英語を固めてから3級レベルの勉強を始めること、2級に合格したい高校生には準2級レベルの英語を固めてから2級レベルの勉強を開始することを助言して、ほとんどの場合いい結果が出ています。
英検が英語検定産業をほぼ独占していた時代には、低い得点で合格させて上の級を何度も受けさせるのが儲かる方法だったのかも知れません。しかし最近は、スコアのはっきり出るTOEICに英検は押され気味と聞きます。
設問は良質な上、試験問題を持ち帰れて、しかもネット上に問題と解答を公開するという良心的な側面が英検協会にはたくさんあるのですから、一次合格ラインを上げるという改革を望まずにはいられません。そうすれば実用英検の社会的信用は高まり受験者は増え、同じ級を受けて何度も落ちる「英検難民」が減っても英検協会の収益は増えると思います。
> すでに合格している級のレベルの英語をコンスタントに九割程度得点できる位まで基礎を
> 固めてから上の級の勉強を始めるのが、「お金をかけない英検合格法」です。
スキル向上の要諦の一つである「負荷の調整」ですね。
「自分が容易に制御可能なレベルのものを繰り返す」ことが基本と思います。難易度を上げる負荷のかけ方は、必要ですが、全体学習時間のうちの比率はそれほど高いものではなく、基本が繰り返されることが大半を占める中で、周期的に行うものと思います。
> 3級に合格したい中学生には4級レベルの英語を固めてから3級レベルの勉強を始めること、
> 2級に合格したい高校生には準2級レベルの英語を固めてから2級レベルの勉強を開始することを
> 助言して、ほとんどの場合いい結果が出ています。
こうして、実践されたご経験を披露していただけることは、大変参考になります。
> しかし最近は、スコアのはっきり出るTOEICに英検は押され気味と聞きます。
おそらく、年間の総受験者 (のべ数) に関することかと思いますが、私は、少々異なる見解を持っています。
まず、2008 年の実績では、TOEIC 約 172 万人 ( 公開テスト: 94 万人、IP テスト: 78 万人 )、英検は約 234 万人であり、「押され気味」とは単年度の受験者数比較ではなく、 TOEIC の経年の推移が、1979 年 (初年度): 3,000 人、1985 年: 88,000 人、1990 年: 33 万人、1995 年: 56.5 万人、2000 年: 109 万人、2005 年: 149 万人の増加実績であることを指して、「押され気味」などの表現がマスメディアで取り沙汰され、英検は堅実な実績を上げていても、「マスメディア受け」する題材がないだけであると考えます。
そして、両者は、受験者数による単純比較ができないと思います。
英検は、二次試験がある関係上、年 3 回開催が今後も限度と思いますが、TOEIC は、公開テストが年 8 回に加えて、企業、学校などがその施設で随時開催する IP テストがあり、本来、マークシートのみで大量処理しやすい TOEIC と、二次の試験官確保の問題で開催地を増やすにしても限度のある英検とでは、受験者数で比較するには注意が必要でありながら、こうした背景はあまり語られないのが実情と思います。
スコア方式とグレード方式、問題内容の差異など本質的な題材はあるにしても、結局のところ、「マスメディア受け」するネタの有無に影響されて世間一般では語られていると思っています。
やや長文気味となり、失礼しました。
今後ともよろしくお願いいたします。
英検の場合、3級受験者が最大集団で、(手元にある2004年度版、2006年度版英検問題集の情報)、TOEIC受験層と単純比較はできません。この点については、ニュアンスは別ながら同感です。
ただ、「合格」=「マスター」と勘違いしたかつての私のような愚行を繰り返す英語学習者を減らしたいと考えて英検の一次合格ラインの低さを今回改めて槍玉に挙げました。
英検であれTOEICであれ、あらゆる英語検定試験は目的ではなく道具に過ぎませんので、より有効な道具にしていくための議論は不可欠と考えます。
あえて言えば、一次合格ラインが六割の英検(2級以下)が健在では困るわけです。もちろん願望と事実を混同するつもりはなく、「最近は、スコアのはっきり出るTOEICに英検は押され気味と聞きます」と企業の英語研修等での伝聞を書いたわけですが、これはやや軽率な行為だったかもしれません。
問題内容自体は英検の方がTOEICよりも面白いと思います。しかし「合格」の魔力で受験者を英語学習の迷路に引き込むのはやめてほしいと英検協会に対して切に願いたいです。
> 英検の場合、3級受験者が最大集団で、(手元にある2004年度版、2006年度版英検問題集の情報)、
> TOEIC受験層と単純比較はできません。
おっしゃるとおりで、私の考察は、踏み込みが足りませんでした。
なお、2008 年度は、3 級受験者の比率は 28.2 % で、また、学生 (小学校から大学、各種学校) が 206 万人、社会人 28 万人であるため、この類の分析は、最初に分析要因を明確化しないと思わぬ見落としがあることを、改めて感じました。
( 特に TOEIC は公開テストに関する年齢別のデータを開示していないため、開示されているデータ要因が同一でない以上、ちまたで言われていることは、客観的なデータに基づくものでなく、主観的なものがかなりあることになると思いました )
> あえて言えば、一次合格ラインが六割の英検(2級以下)が健在では困るわけです。
この課題提起は、重要と思います。
合格ラインを上げるか (厳しくするか) の検討の前に、私は、まず合格ラインを公式開示し、合格級の復習の重要性を英検協会として正式表明することが先決と思います。合格ラインが重要情報でありながら、明確にわからない現状 (英検のサイトで見つけることができませんでした) を解決すべです。
( 私は、以前工業英検に取り組んだことがありますが、2 級の合格ライン 6 割、1 級一次は 7 割の情報を「合格者のつどい」で知り、現時点でもこうした基本情報が工業英語協会のサイトで知ることができない現状が問題であると思います )
また、英検 (正式には「実用英検」) にしろ、工業英検にしろ、記述式のある級に関しては、採点基準も公開すべきと思います。
以前、東大、京大の難解問題について課題提起されたと記憶します。これに関しても、合格者、不合格者の最低点、平均点、最高点および採点基準をまず公開すべきで、検定試験および大学入試において、こうした情報開示を文部科学省が指導すべきと考えています ( 官僚的でやりやすい仕事のはずなのに、一向にやる気配がないのが疑問です )。
「こうした情報開示を文部科学省が指導すべき」というご意見には大賛成です。ただ、官僚任せでは何も変わらず、国民が政府に対して声を上げる必要があり、そのために何をすべきか考えていきたいと思います。
大学入試のみならず大学の英語教育にも大きな問題があります。
以下はネットで拾った、ギャグではなくどうやら真面目に書いているらしい大学教授の英語教育論です。(http://www2.he.tohoku.ac.jp/center/forum/gaikoku.htm)
TIMEFORKIDSが読めない学生にTIMEを読ませるようなことでは、「学生達に決意を喚起したにもかかわらず、成績は依然として悪く、平均点は30点台である」のも無理はありません。
(引用開始)
東北大学英語教育の危機的状況
言語文化部教授 野中 克彦
◇東北大学の学力レベル
現在、本学では外国語教育改革に関する検討が行われていて、それはそれで結構なことなのだが、正当な見方に基づいた有効な議論が行われているとは認めがたい。その批判と提言を行う前に、一つのショッキングな事実を披露したい。
それは1999年度前期の私の担当クラスの学生成績である。使用テキストはアメリカの週刊誌「TIME」である。工学部3年の「英語演習A」の履修人員は67名。放棄した者6名。100点満点で、0点6名、10点台9名、20点台11名、30点台9名。履修放棄者を除いて、実に61名中35名が40点にも達していない。平均点は37.27点である。
(中略)
◇学生にどのレベルを要求するのか
確かに、注釈やマニュアルなしの実力のみで無作為にTIME誌を読むのは難しいだろう。例えば、コソボ情勢、NATOによる空爆に関する技術的な説明、インドネシアの人種問題、アジアの経済危機などの多岐にわたる記事の理解は、多様な知識が要求されて、研究者ですらまともに読めない者がいるのではないかと疑っている。学生が苦労するのは当たり前かもしれない。しかし、教室で一度詳しく読んで説明を受けた箇所からの出題であるとすれば、テストが0点ないしそれに近い点で終わるというのはいかにも異常ではないか。このレベルの英語を受け入れる能力が学生に完全に欠如しているが故に、読み直しても文意が全く頭に入らない、としか考えられない。
(中略)
【追記】99年度後期の成績が出た。前期の成績について、学生達に決意を喚起したにもかかわらず、成績は依然として悪く、平均点は30点台である。
(引用終了)
追記
残念ながらこの珍妙にして貴重な英語教育論の引用元は現在何らかの理由でなくなり、全文は読めない状態になっています。
(引用開始)
今の日本人の英語力は、一流と言われる大学の学生のそれでさえ、不安になるほど低いところに止まっています。大学の事情を詳しくお話しする時間はありませんが、その低い英語力を向上させる手段も全くとられておりません。この事態は是非お知りいただいて、改善の方向へ社会的な圧力をかけていただければと思うのです。
アメリカの有力週刊誌にTIME があります。たかか週刊誌なのですが、広い情報収集力と緻密な分析力と格調高い文体で、世界のニュースを伝えています。学生の将来のことを考えて、少しでも彼らの役に立つようにと東北大学ではTIME を教材に使っています。しかし、学生はこれがみじめにも読めません。どれほど読めないかは後でお話いたします。
いやしくも東北大学の学生ですから彼らも日本の出版社が作った、いわゆる英語の教科書ならば十分にこなすのです。しかし、それはある意味で当然なことです。なぜならば、日本の出版社は日本の学生の実力を熟知していて、それに合わせて教科書を作っているからです。教員もそれを使えば無理なく授業ができますから、そういう教科書は売れます。これで四方が丸く収まるわけですが、そういう安易な授業を続けていく限り、日本人の学力の向上は全く望めません。しかし、波風を起こしたくないのが日本人特有の習性ですから、結果として日本の津々浦々の大学で無難な授業が行われることになります。
そこでいきなり高度で異質のTIME を何の注釈もなしに自力で読ませると、どういうことになるかです。固定クラスの一般的な26 名の学生の平均点が21 点。TIME を読むと覚悟して、私の授業を選んだ11 人の学生の平均点で40 点。もちろん100 点満点です。しかも、よく説明し詳しく和訳した範囲から、原文と全く同じ文章を問題として出した結果です。要するに日本の学生(あるいは院生あるいは大人)の大半はアメリカの週刊誌が読めないということになります。
(引用終了)
「いやしくも東北大学」といった権威主義的発想をもって受験生のレベルとかけ離れた入試英語問題を作成し、同様の発想で大学の英語授業を行うことが、「日本の学生(あるいは院生あるいは大人)の大半はアメリカの週刊誌が読めない」という現状の大きな要因であることを大学の英語教育関係者は自覚すべきです。
中高六年間の英語教育の結果としては、英英辞典が使えて英語圏の小学生の読み物が読める程度になれば十分でしょうし、大学入試問題もその程度の英語を速く正確に読む能力を問う方向に変わるべきと思います。
日本の学生の実力に合わせて日本の出版社が作った「養殖英語」がこなせたところで、ネイティブがネイティブのために書いたやさしい「天然英語」に大量に触れなければ、いつまでたってもTIMEレベルの英語は読めるようになりません。
私もネットで同教授のことを見てみました。
学生の英語力養成は大いに結構ですが、この教授の行ったことは、「英語力の養成」ではなく、わざわざ大学の授業時間を使い、実際の英語力と剥離した題材で「英語力の測定」をしただけでした。
「英語力の測定」は TOEIC や英検に任せ、学生には受験を勧めればいいことです。そして、自身も受験 (あるいは問題集を精査) するなどして検定試験の相場を把握していなければ、まともな学生指導はできないでしょう。
また、工学部の 3 年生という前提ならば、TIME ではなく工業英検で使われている題材を使用する方が、よほど現実的で、学生の興味も引きつけることができるでしょう。
この教授は理系ではないようですが、「いやしくも東北大学の教授ならば」と思って学生に教えるために自分が工業英検の勉強をしてもよいでしょう。
(「いやしくも東北大学の教授が検定試験にかかわることはできない」では困りますが )
> 受験生のレベルとかけ離れた入試英語問題を作成し、同様の発想で大学の英語授業を行う...
受験生は、まだ世の中の相場がわからず、合格には他に選択肢がないため立ち向かうことになりますが、結局、その場限りの瞬発力にしかならず、健全性は大いに疑問と思います。
大学入試は通常一生に一度であり、その一度のためだけに学生は注力したのであって、同じ状況を大学の授業で再現することは本質的に無理なことを大学の教育関係者は自覚すべきでしょう。
> 中高六年間の英語教育の結果としては、英英辞典が使えて英語圏の小学生の読み物が読める程度になれば十分
本来、こうした明快な基準が指導要領で記載されるべきと思います。その場限りの瞬発力で乗り越えたところで、結局はどこかでこの種の基本に立ち返るわけですから。
「いやしくも東北大学の教授」ならば、立ち返るべき基本を学生に明示すべきで、「高い負荷を与えれば、基本が網羅される」と勘違いし「負荷の調整」を誤った ( または元々「負荷の調整の概念」がなかった ) のだと思います。
合否という形で結果がはっきり出る入試を、入学者の基礎力増強に大学は利用すべきだと思います。
難問を出題して六割前後の得点で合格させるような入試英語は例えて言うなら「高層バラック建築」のようなもので何の役にも立たず、そういった試験をテクニックで乗り切ることを受験生が煽られる現状は早急に改善されなければならないでしょう。
英語に限らず、大学の沽券にかけて難問を出すのではなく大学の沽券にかけて良問を出す大学が増えることを願わずにいられません。