宮美庵

幸せはいつだって、わたしの中に。

幸せは どんなときも 私の中に・・・

昔は人に本を薦めるのが好きだった・・・「エイラ」を知らない人生なんて・・・

2015-01-14 20:39:50 | 映画・本

よほど気の合う人からじゃないと、

人に薦められた本は読もうとしない・・・にもかかわらず、

人には「これ面白いよ~」と、薦めたくなる・・・という困った癖があった。

仕事を辞めた今はその被害に遭う人はほとんどいない・・・

 

いまもし、誰かに、面白い本ない~?と聞かれたら、

私はこれを薦めるだろうなぁ~

『猟師の肉は腐らない』

小泉武夫著

新潮社 1、512円

 

私のヘタな説明より、こちらを読むほうが、

うまく伝わると思うので、引用~

 

[ エッセイスト平松洋子さんの書評より引用]

自然と一体に生きる

 凄腕(すごうで)の猪(いのしし)撃ち、義(よ)っしゃんが住んでいるのは福島、茨城、栃木三県にまたがる八溝(やみぞ)山系の山奥。ひとり暮らしの小屋には電気も水道もない。得意料理は猪の燻製(くんせい)、兎(うさぎ)の灰燻(いぶ)し、蝉(せみ)の串焼き、地蜂の炊き込みご飯、どじょうの蒲(かば)焼き、薬草茶……自給自足という言葉がナマぬるく思われる、スケールのでかい暮らしぶりだ。

 飄々(ひょうひょう)と野生に生きる義っしゃん。夏と冬、二度にわたって八溝を訪ねた「俺」。そして、義っしゃんの飼い犬クマ。三者が山奥で繰り広げる数日間の物語はあまりにも密度高く、血湧き肉躍る面白さ。わたしは、読むにつれ、ページが減ってゆくのが惜しくて困るほどだった。

 「俺」の目を通して語られる山の出来事すべてに、激しく惹(ひ)きつけられる。義っしゃんは野兎の臓物を枝一本で巧みに抜き出し、頭脳プレーでどじょうをおびき寄せ、雑木林に入れば一本の木に目星をつけて自在に「虫を涌(わ)かす」。かと思えば、赤蛙(がえる)の肉片を白い絹糸につけて宙に放ち、地蜂に運ばせて巣を発見する秘技を披露する。手負いの猪に瀕死(ひんし)の重傷を負わされたクマには、現場でたちどころに手術――生きるための知恵と技術が無限に繰り出される。また、撃ち取った猪に戒名をつけて供養し、食料から経済手段まで利用し尽くす様子には、命の重さにたいする尊敬と感謝が宿る。

 「俺はない、この八溝の空気、山、川、谷、木、花、土、水、生き物、ぜんぶ好きなんだあ。だがらよ、そいつらと毎日いられっからよ、一人で居るなんて気はまったぐしね」

 自然と一体になって生きる義っしゃんの軽やかさ、情の篤(あつ)さ。人間は、これほどまでに生命の連鎖を輝かしく体現できるものなのか。わたしの内部に潜む、なけなしの野生にも火がつき、奮い立つ。現代社会に向けた辛辣(しんらつ)な批評の矢でありながら、ランプの灯の下、囲炉裏を囲んで呵々(かか)大笑、底抜けの明るさにとっぷりと酔わされる冒険譚(たん)。小泉武夫、入魂の物語である。

著者 小泉武夫=1943年、福島県生まれ。東京農大名誉教授。食文化論、発酵学、醸造学に関する著書多数。

 

フィクションなのか、ノンフィクションなのか・・・おそらく半々? そんなことはどうでもよい。

生きる知恵と技、そして男の友情・・・猟犬クマの逞しさと健気さ愛らしさ・・・

とにかく文句なしに面白かった!面白くて泣けた・・・

 

そしてもう一冊・・・じゃなくもう16冊!シリーズものの物語。

3万年以上前の、クロマニョン人の少女が主人公のこの物語は、

一人の女性の壮大な人生の物語であり、

考古学的な研究に基づいた人類の祖先の記録であり、

人間の社会への鋭い考察に満ちた社会小説であり、

宗教、芸術、医学、植物・動物、食品・料理、社会、旅行、精神世界、そして愛・・・

とにかく「すべて」がある、といっても過言ではない。

いや、とにかく面白くて面白くて面白くてたまらない。

 

20年近く前、職場(病弱養護学校)の図書室で見つけたのが、

この物語との最初の出会い。

この評論社版は、青少年向けとして出版されたらしく、

書店でも「児童図書コーナー」に置かれていた。

読み始めた私は、そのことに驚愕した。

「子どもの読むもんじゃな~い!!!!!!!!」

かなり原文から削除されていたとは言っても、

ネアンデルタール人に拾われた主人公エイラがたどるのは、

今でいえばDV。女性が男性に隷属する社会での苦難の日々。

それでも人類の進化上、上位にあるクロマニョン人の少女エイラは、

愛情ある義理の家族の中で、多くのことを学び、そして越えていく。

ついに一族から追放されたエイラは、たった一人で、

過酷な大自然の中で、智恵と生命力を駆使し、

ペットの原点と思われる、オオカミや馬やライオンたちと心通わせながら 生き抜き、

ついに、同じクロマニョン人の男性と衝撃的で感動的な出会いを果たし、

ネアンデルタール人の暴夫から受けたトラウマを解消し・・・

物語は豊かに続いてゆく・・・。

 

評論社版を読み終えた後、何年か後の今から10年ほど前、

集英社から大人向けの完訳版が出版された。

私は狂喜乱舞して、分厚い、高いそのシリーズを買って夢中になって読み、

ついに昨年・・・全16巻のエイラの物語完訳の、完結版が出版され、

私はエイラの人生と、ようやくお別れした。

 

エイラシリーズは、当然何人かに薦め、無理やり貸したりもし・・・

でも16巻 最後まで読み切った人は・・・・??

そういえば母のコーラス仲間の方も、母を通して借りて下さり楽しんでくださった。

まぁ、最後の数巻は最初ほどの魅力がないので、16巻すべて読むことにそんなに価値は感じないけれど、

最初の10巻くらいまでは、いや、7巻目まででも、損はさせません!

今まで読んだ物語の中で、ダントツ一番の面白さで、

あれ以来このレベルの物語にお目にかかったことはない。

集英社版『エイラー地上の旅人』全16巻

著者 ジーン・アウル (アメリカの小説家)

 

今も私は、

エイラが作っていた鶏のお肉に詰め物をしたお料理とか、

体調の悪い時に入れるハーブのお茶とか、

ベリーの実を口を赤くして頬張る幸せとか、

ことあるごとに思い出す

 

あんな面白い物語・・・やっぱりお薦めせずには、いられま・・・せん

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