契りおく花とならびの岡の辺にあはれ幾世の春をすぐさむ(兼好自撰歌集)
歌意「この双ケ岡(ならびがおか)に私の墓をつくった。私の死後に、ともに過ごそうと約束して、その墓に並べて桜の木を植えた。ああ、私は(この墓に葬られた後に)幾たびの春を、この桜とともに過ごすのだろう」。
「並び」と「ならびの岡」は掛詞ですが、その双ケ岡はどこかというと仁和寺(にんなじ)の南。今でいう京都市右京区で、ここに晩年の作者が隠棲して住んだ草庵があったとされます。今でも低い丘が二つ(正確には三つ)仲良く並んでいる地形を見ることができます。
草庵の主の名は吉田兼好(よしだけんこう)といいます。俗名は卜部兼好(うらべかねよし)。学校教科書では「兼好法師」または「兼好」となっているでしょうか。その生没については1283年から1352年といわれますが、実のところはっきりしません。
鎌倉時代後期を代表する随筆『徒然草』が突出して有名であるため......
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