アキノタムラソウは秋よりも夏に花を開く。名前は優雅なのに、刈り取ってもまた芽を出す雑草扱いだが、この時期に貴重な紫の花である。花もよくみると複雑な構造をしていて可憐だ。学名は日本のサルビア(Salvia japonica)で、日本固有種であることをうかがわせる。外来種の花が増えた現在、この種の花を雑草扱いしている余裕はなくなっているのではないか。
(2019-07 東京都 神代植物公園)
アキノタムラソウ (Salvia japonica) は、野原に普通な多年草。細長い穂を伸ばして、薄紫色の花を付ける特徴がある。
特徴
草丈は20cmから80cmにもなる。茎は角張って四角形、まっすぐに立ち上がる。根元で分枝して、数本の束を作る事もある。葉は対生で、その形は単葉のものから複葉に分かれるもの、それも三出複葉から一-二回羽状複葉にまでなるが、とにかく変異が多い。葉の長さは葉柄を合わせて3-15cmと変異の幅が大きい。葉身はおおよそ卵形、深緑で表面はつやがなくて草質、まばらに毛がでることもあるが、無毛のこともある。縁には粗くて丸い鋸歯が出る。
花期は7月から11月にわたる。茎の先端が分枝し、長く伸びて穂状に花を着け、花序の長さは10-25cmにもなる。花は長さ10-13mm、青紫色で唇形、やや斜め上を向いて咲き、花冠の内側の基部近くに毛環がある。雄蘂は2本で、はじめ花冠の上唇に沿って上に伸びて前方に突き出すが、葯が開いてしまうと下向きに曲がる。
和名は秋の田村草だろうが、意味は不明とのこと。なお、タムラソウの名は、キク科にそれを標準和名に持つ種 Serratula coronata ssp. insularis(タムラソウ属)がある。こちらもその由来は不明。漢名は紫参で、鼠尾草は誤りであると、牧野は記している。
生育環境
森林の林縁部から明るい草原、あるいは道ばたにも見られ、日本産のこの属のものではもっとも人里に出る。雑草的な性質が強く、草刈りなどにあっても、再び根元や茎の半ばから枝を出して花をつける。そのため、本来の姿とは大きく異なった形で咲いているのを見ることも多い。
分布
本州から琉球に生育し、国外では朝鮮と中国に分布する。
利害
よく見れば綺麗な花ではあるが、草姿がだらしなく、大きくなるので観賞にはあまり向かない。