＜古い絵：「夏山」＞
セピア色の画集：追憶の夏山
この絵を描いたのは何時頃だっただろうか．定かな記憶はないが，多分，昭和29～30年頃の夏である．ただ，この絵を描いたときのことは，なぜか，とても良く覚えている．
当時，私は田舎大学の学生であった．あの頃，夏休みになると，故郷の小諸に帰っていた．そして天気さえ良ければ，浅間山麓をウロウロしながら，水彩画を描いていた．イーゼル，絵の具付パレット，絵筆一本，20号の紙が貼れる画板，筆洗代わりの空き缶，それにお袋に握って貰った大きなオムスビ２個，雨のときに絵を包む油紙を持って，あてどもなく山へ向かうのが日常だった．
この絵を描いたときは，とにかく暑かった．眼下に佐久平が広がる．その向こうに八ヶ岳の山々が連なっている．少し離れたところに数本の黒松が生えている．この絵を描いてから，ほぼ50年の歳月が過ぎている．あの黒松は健在だろうか．それとも．もう枯れてしまっただろうか．
絵の裏を見ると，「日本水彩画会上田支部・・・」の印鑑と，お袋の字で，この絵の題目と私の名前が書いてある．どうやら，日本水彩画会の上田支部というところに出展したらしいが，私は良く覚えていない．
50年も経つと，画用紙は少し黄色に変色，絵の具の色は結構そのままである．ちなみに紙はワットマン，絵の具はホルベインである．
この絵を，地元の絵の先生に見て貰うと，
「・・・また，草餅を描いているな・・・あまり，ベタベタ塗りたくってもダメだよ・・」
とのことだった．
この教訓は，今でも鮮明に覚えている．
２０１０年６月１日（火） 晴れ
月日が過ぎ去るのは速い．もう今日から初夏である．今年ももうすぐ半年を過ぎようとしている．正に光陰矢のごとしである．
私は，部屋の掃除をしながら，たまたま見つけた自分の古い絵を感慨深げに眺め続けた．
・・で，この絵を描いたときの青年は，幾星霜も過ぎた今，もう後期高齢者になっている．
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高齢者の私の所に，鎌倉市役所から交通費を補助してくれるという通知が届く．年間2,000円である．仮に僅かな金額とはいえ，頂戴できるのは大変に有り難い．6月は京急バスの高齢者優待定期券の更新月である．時間を見計らって，更新に出掛けようと思っている．
朝から上々の天気である．
昔の自分の絵に飽きた私は，例によって「外へ出たい出たい病」がうずく．
午前中は家の中のヤボ用や，先日の甲州道中四十五宿の資料まとめとブログ記事執筆に費やす．そして，これまで描き続けてきた絵を，ひとまず額に入れて見る．
絵は額に入れると一段と引き立つが，まだ，まだ，不満なところが多い．完成は当分先のことだなと実感する．
昼食後，早速，大船までブラブラ歩きを楽しむ．往復約５キロメートルの散歩である．暑くも寒くもない正に絶好の散策日和である．途中通過した鎌倉中央公園の広場では，幼児を連れた数組の親子が車座になって日光浴をしている．
私のブラブラは，何処へ行かねばならないという目的もない．特段，何を買沸かなければということもない．とにかく気の向くまま，足の向くままである．
歩きながら，誰が作曲した歌か知らないが，「口笛吹きの散歩（題名は正確ではない）」のメロディーを，小さな音で口笛を吹きながら歩き続ける．例によって．山崎を抜けて，大船へ向かう．
歩きながら，
「・・そうだ！ 散歩を終えて，家に帰ったら，○○の続きを仕上げよう，待てよ，その前に××をしよう・・・」
と，次から次へと，やりたいことが，頭の中から湧き上がってくる．そして，一刻も早く家に戻って，○○の続きをしたくなる．
折角散歩を楽しんでいるのに，このような焦れったい気分になることがしばしばある．そのくせ，実際に家に帰っても，結局はグズグズしていて，何もしないのだが・・・
誠に困った性分である．
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大船駅前のコンビニで，鎌倉の地図を数枚コピーする．これは，山旅スクール５期「鎌倉トレッキング」と，五十三次洛遊会６月例会の資料作りのためである．コピーをしながら，
「さて，この二つのグループ．鎌倉のどこを案内しようか・・」
と迷っている．
（おわり）
「セピア色の画集」の前回の記事
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