<雲間の苗割り山稜>
霧雨の中,ヒルを気にしながら登る丹沢;塔ノ岳(今年35回目)
(単独山行)
2014年7月19日(土) 霧雨
■なんでこんな日に出掛けるの…
今日の天気予報が気になる.
どうやら日中は曇で夕方から本格的な雨になりそうである.
”今日は土曜日…ならば,塔ノ岳でも往復してこようか…”
真夜中に起床した私は,にわかに塔ノ岳行を決断する.すると私の心の中に住み着いているもう一人の私が,
“何も,天気が悪くて,しかもクソ暑い日に,無理して出掛けることないじゃないか…そういうのを年寄りの冷や水って言うんだよ…”
と盛んに私を諭す.
“確かにお前さんに言うとおりだよ…でも,今日登っておかないと,また1週間間が空いてしまい,ますます体力が減退してしまうよ…”
…と,言うわけで,諫めるもう一人の私を振り切って,とにかく出掛けることにする.
4時10分,自宅を出発する.今朝もモワ~ッとする生暖かくて湿った空気が覆い被さるように辺りを包み込んでいる.雲が大分低くたれ込んでいる.
“こんな日に大倉尾根を歩いたら,間違いなくヒルに出くわすな…”
私は山ヒルに出くわすことを覚悟しながら,大船駅に向かう.自宅からの山道を下りながら,
“何で,こんな日に,丹沢くんだりまで,行かなければならないんだ…”
と思い続けている.それでも,何か糸に引かれるように,大船駅に向かっている.でも,心の中では,
“引き返すんなら,何時でも引き返せるぞ…”
というエキスキューズが頭の中でチラチラしている.
でも,惰性で東海道本線下り初電に乗ってしまう.こうなったら,もう,塔ノ岳に行くしかない.
■常連の皆さんと前後して登山開始
小田原駅でホームの階段を登る.このとき身体が妙に重くてシンドイことに気がつく.どうやら今日も体調は思わしくないようである.
天候が思わしくないためか,土曜日にもかかわらず,今日は臨時バスがでないようである.それでも,バスは立ち席がでたものの,大混雑になることもなく,6時58分,大倉に到着する.
1番バスに乗り合わせた常連は,TGさん,三角髭のTDさん,韋駄天のUMさん,KIさん,HMさん,HNさんなど.土曜日お馴染みのSSKさん,NMさん,IIさんのグループはどこか他の山へ行っているらしく姿を見せない.
7時02分,多数のご常連と前後して,大倉を歩き出す.前方を見ると,雨雲が低く垂れ込めていて,稜線は雲の中である.山頂付近は間違いなく雨が降っているようである.
“登山を諦めるなら,今の内だ…”
とも思ったが,
“今更,中止なんて…冗談じゃない”
と,もう一人の私が叫ぶ.
“…ん,じゃぁ…,しょうがない.予定通り登るか…”
さきほど小田原駅の階段で,今日の私の体調は芳しくないことを自覚している.私は特に歩き出しの30分ほどに注意を集中して,とにかくユックリ歩くことにする.TGさん,UMさん,KIさん達の足が速い方々との距離は,瞬く間に広がってしまう.
私のすぐ後ろからは,常連の女性群の話し声が聞こえてくる.
7時28分,観音茶屋を通過する.そしてジグザグの登り坂に差し掛かる頃には,常連の集団も次第にバラケ始める.その頃から,私は完全な一人旅になる.
■霧の見晴階段
今日の登山道は昨夜の雨で濡れている.登山道周囲の草木もベットリと濡れたままである.こんな日には,山ヒルが沢山出ているに違いない.私も山ヒルに分け与えるほどの血液を保有しているわけではないので,足元の山ヒルに充分注意しながら,登り続けている.
7時49分,ようやく見晴山荘を通過する.大倉を歩き出してから47分も経過している.
“今日も塔ノ岳山頂まで3時間以上掛かりそうだな…”
と思いながら,見晴階段に差し掛かる.
階段下から,何時ものように定点観測用の写真を撮る…が,すでに雲の中に入っているらしく,階段の上部は霧の中で全く見えない.もし霧が掛かっていなければ,階段の上の方にTGさん達の後ろ姿が小さく見えるはずである.
見晴階段を登っている内に,私は自分の身体が意外に軽いことに気がつく.
“なぜ,身体が軽く感じるんだろう…”
多分,いくら暑いとは言え,今日はここ数日の間では,幾分暑さが和らいでいること,それに,オーストリアから帰国して以来,自分の身体が暑さになかなか馴染めなかったのが,ようやく馴れ始めたことが,身体が軽く感じる原因だろうと勝手に想像する.
余談になるが…
私たちの身体はホメオスタシス(恒常性維持)機能が備わっている.どんなに寒くても,逆にどんなに熱くても,体温をほぼ36~37℃の一定の体温に保っているのもこの機能の例である.ところが加齢とともにホメオスタシス機能がだんだんと衰える.だから,私ごとき高齢者になると,時差ボケや気温の変化に上手く対応できなくなるんだ.悲しいけどこれが現実である.
見晴階段をユックリ登ったので,モミジ坂も疲労感なしに何となく登り続けて,8時02分に一本松を通過する.ここまでで大倉から既に1時間も経過している.身体は楽かも知れないが,ラップは気象条件の良いときに比較して5~6分遅いようである.
<見晴階段>
■常連のKSさんに励まされる
一本松を過ぎて駒止階段までの平坦道を歩き始める.そのとき,霧の中からいきなり人影が見え始める.下山してくるKSさんである.
”やあ!,やあ!…”
と賑やかに握手する.
KSさんとは水曜日にも,ほぼ同じ所でお会いしている.そのときウインドウズ7やウインドウズ8のことで立ち話をした.私のブログが見えなくなったとのことだったが,再び見えるようになったとのこと.
「ブログには悪口は書かないようにしていますが…(気に触る記事があったら言って下さい削除します)」
というと,
「悪口,ドンドン書いて下さいよ…」
と逆に慰められる.
今日は,ほんの1~2分立ち話をしただけでお別れする.
私は何時もKSさんにお会いする度に励まされるので,何か勇気を貰ったような気がしている.
お別れした後,KSさんは霧の中に消えていく.
<霧の中にご常連が消えていく>
■見えない富士山の写真
やがて駒止階段に差し掛かる.この階段も無理をせずにユックリ登る.
8時18分,漸く駒止茶屋を通過する.大倉からの所要時間は1時間16分.気温が快適なときに比較すると6~7分余計に時間が掛かっているようだが,この暑さなら私にとって,まあ,まあ,のペースのようである.
堀山の尾根道に差し掛かる.辺り一面に濃い霧が掛かっている.ここまで登れば気温も幾分下がるので,流れるような汗をかかずに登れるようになる.私はホッとした気分になって,堀山の尾根道歩きを楽しむ.
晴れていれば富士山が良く見える場所に到着する.私には毎回ここで写真を撮る拘りがある.今日も見える筈もない富士山の写真を撮る.下の写真,晴れていれば木の間に富士山が見えるはずである.
8時26分,堀山を通過する.
<大倉の尾根道から見えない富士山を撮る>
■霧雨の小草平
8時35分,小草平に到着する.堀山の家は,早朝にもかかわらず,もう開店している.ここには下山の途中で立ち寄ることにして,登りでは通過することにする.
小草平のベンチは雨で濡れて光っている.
晴れていれば,木の間から富士山が見えるはずである.
小草平を過ぎる辺りから,霧雨が気になり始める.私は壊れたビニール傘のビニールを外して作った簡易ポンチョを頭からすっぽり被る.これで霧雨には十分対応できる.
<小草平>
■萱場平
小草平からの急坂では,自分のペースを崩さずに登り続けることが何より大切である.私はマイペースを保ち続けながら一人旅を楽しんでいる.
やがて,戸沢分岐に差し掛かる頃,YDさんに追い抜かれる.
8時56分,萱場平に到着する.そのとき,すでにYDさんの姿は,もう霧の中に消えている.萱場平には人の姿はなく,霧の中で静まり返っている.
<霧の萱場平>
■チャンピョンとすれ違う
9時丁度に,上から下ってくるチャンピョンとすれ違う.チャンピョンが,
「やあ…蒸し暑いね…」
と私に挨拶する.
霧雨がポツポツと降りしきる小雨に変わる.
<チャンピョンが下る>
■花立山荘
その後も体調はまずまずである.私は折角体調が良いので,このままの状態を崩さないように細心の注意をしながら,歩行ペースを維持している.
後7分坂に差し掛かる.私にとって速くも遅くもない速度で,後7分坂を登り続ける.坂を半分ほど登ったところで,次のバスで来られたMMさんに追い抜かれる.
「お先にどうぞ…YDさんは多分射程距離ですよ」
と言いながら,多分,MGさんより5分程度遅れて私も塔ノ岳山頂に到着するでしょうとお話しする.MGさんは,山頂で私を待っていますという.
9時21分,ようやく花立山荘に到着する.大倉からの所要時間は2時間19分.気温が低くて体調が良いときのラップならば2時間程度である.それに比較すれば,20分程度余計に時間が掛かっているが,この時期,それもやむを得ないなと納得する.
<花立山荘>
■綺麗なホタルブクロに癒される
花立山荘から花立山までは,見えているのに結構時間が掛かり,勾配も急である.
花立山荘で休憩を取っているMGさんを一旦追い抜くが.すぐにまた追い越される.MMさんとの体力の差は如何ともし難い.
私がやっと,花立山のガレ場に入る頃.MMさんは既に浜伊達山山頂付近を歩いている.
足元を見ると,あちこちでホタルブクロが咲いている.可憐な花に結構癒される.
<ホタルブクロに癒される>
■霧に浮かぶ丹沢の山々
9時30分,ようやく花立山山頂に到着する.
紀行がぐっと変わって涼しくなる.何時の間にか低層の雲の上に来ている.霧が掛かる丹沢の山々が美しい.私は立ち止まって霧が掛かる丹沢の山々を何枚かの写真に納める.
こうした四季折々,天候により表情を変える風景に接することができるのも,塔ノ岳を訪れる楽しみの一つである.
<霧が立ちこめる丹沢の山々>
■塔ノ岳山頂
9時36分,金冷シを通過する.
最初の階段を半分ほど登ったところで,下山してくるTGさんとすれ違う.さらに下山してくるUMさん,KIさんとすれ違う.お二人は私の「いかれポンチョ姿」を見て,
「それ,自分で作ったの? 涼しそうだね,流行するかもいれないよ…」
とKIさんがいう.どうせ元はビニール傘である.ビニール傘を手でさすか,それとも首で支えるかの違いだと思えばスッキリする.
その後も,私は,多少,とノンビリのペースで登り続けて.9時53分,なんとか塔ノ岳山頂に到着する.私より先に山頂に到着したTDさんとMGさんがまだ山頂に居られる.
大倉からの所要時間は2時間57分.まあ.3時間を切ったので,今の状態の私にはまあまあの出来だと誉めておこう.
山頂の気温は21℃.かなり高温である.ベンチや足元の座るところも雨でグッショリと濡れている.
尊仏山荘にでも立ち寄ろうかと迷っていると,
「このまま下山しましょう…」
とMGさんに誘われる.
“それもそうだな…”
と思った私はお二人と一緒に下山することにする.
<塔ノ岳山頂>
■下山開始,俄に胃痛
9時59分,下山開始.
その後,先頭のMGさんの後を必死に追いながら下山し続ける.山頂から2番目の階段を下山しているときに,登ってくるHNさん,NMさん達とすれ違う.
10時07分,金冷シを通過する.だんだんとMGさんとの距離が離れるが,まあ,ほぼ同じ速度で下山し続ける.
10時13分,花立山を通過する.丁度その頃,俄に胃痛が始まる.だんだんと胃が痛くなるので,速いペースで歩行するのが困難になる.歩行速度を落としながらも,10時23分に花立山荘にようやく到着する.先行のMGさんとYDさんは,後7分坂の降り口で.私がもうすぐ花立山荘に到着するのを見極めてから,再び歩き始める.
私は花立山荘のベンチにへたるように座り込む.そして携行している救急箱の中からツムラ17を取り出して服用する.
この薬が効いてくるまでに,4~5分掛かる.その間,ずっとベンチに座ったまま…そのとき,TTさんが,
「先に下山しています…」
と挨拶して,私の前を通過する.
私の胃痛はこの頓服のお陰で,数分で解消する.
■堀山の家
またまた一人旅になる.私は,先ほどまで同行していたお二人に追い付こうとする気力もない.私も極ノンビリペースで下山し続ける.途中で若者のグループと何回もすれ違う.
11時04分,堀山の家に到着する.小屋の中は来客で一杯になっている.
”あえて立ち寄らなくても良いか…”
ということで通過する.
11時24分,駒止山荘を通過する.私は大倉発12時40分のバスに乗りたいなと思う,
バスの時間に合わせて,ユックリペースを継続しながら下山し続ける.
11時38分,一本松のベンチに到着する.堀山の家の小屋番が大きな荷物を脇に置いて休憩を取っている.
「今日は天気が悪いので,(堀山の家には)立ち寄らずに下山しました」
と挨拶する.すると,
「今度天気が良いときに立ち寄って下さい」
と彼が言う.
お話しをしながら,何だか会話の中味が編だなと思う.雨のためか堀山の家がお客さんで混雑していたので,立ち寄らなかったという意味の挨拶をしたつもりだったが,挨拶をしている最中に自分の言い方が舌足らずだなと思っていた.
■大倉のネコ
予定通り12時26分に大倉に到着する.下り所要時間は胃痛で休憩した時間を含めて2時間21分.洗い場付近に私より先に下山した常連の皆さんが居られる.
大倉のロータリーの真ん中で,ネコがしたい放題で日向ぼっこをしている.ネコと見ればすぐに写真を撮る私は,このネコに近付いて数枚の写真を撮る.
やがてバスが来る.
「お~いっ…,バスにひかれるぞ」
と誰かがネコに注意する.
ネコは一向に平気.こんなところがネコの良いところだ.私は.
「もう何カ国もでネコの写真を撮りました…でも,どこの国のネコも『ニャ~,ニャ~』と〃啼き声なのが不思議ですね…」
と碌でもないことを周りの人に話す.
私は,なんで人間だけが,英語だ,フランス語だ,日本語だと,訳も分からないほど色々な言葉を使っているかが不思議で仕方がない.他の動物なら,通訳などなしで,世界中通用するのに…人間って,本当にアホだなと思ってしまう.
<大倉の気儘なネコ>
■やっぱりコーヒーだ
渋沢,小田原でバスト電車を乗り継いで13時57分に大船駅に到着する.このまま真っ直ぐ家に帰るのも勿体ないので,駅ビル1階のコーヒーショップに立ち寄って,ホットコーヒーを賞味する.
衣服やリュックが霧雨でベタベタなままだが,暖かい珈琲を飲んでいる内に,何となくほのぼのとした気分になる.
結果良ければ全て良しで,今日も良かった! 良かった!
<駅ビル1階のコーヒー店で>
(おわり)
<ラップタイム>
7:02 大倉歩き出し
7:28 観音茶屋
7:49 見晴山荘
8:21 駒止茶屋
8:35 堀山の家
9:21 花立山荘
9:36 金冷シ
9:53 塔ノ岳頂着(+21.0℃)
9:59 〃 発
10:07 金冷シ
10:23 花立山荘( 10:26まで胃痛のため緊急休憩)
11:04 堀山の家
11:24 駒止茶屋
11:51 見晴山荘
12:07 観音茶屋
12:26 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:02
塔ノ岳 着 9:53
(所要時間) 2 時間51分(2.85h)
水平歩行速度 7.0km/2.85h=2.46m/h
登攀速度 1,269m/2.85h=445.3m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 9:59
大倉 着 12:20
(所要時間) 2時間21分(2.35h)
水平歩行速度 7.0km/2.35h=2.98km/h
下降速度 1,269m/2.35h=540.0m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/b239054f62c2e7dde4d8e42291ec45e6
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/629d47482f68f3000c83b12f53d92927
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