<塔ノ岳・丹沢山の稜線にて>
新緑の尾根道を歩く:塔ノ岳から丹沢山往復
(今年度25回目)
(往路単独・復路K氏に同行)
2008年5月21日(水) 晴れ
この所,低気圧や台風接近で,天候が思わしくない日が続いている.そんな毎日の中で,たまたま好天気が続いたのは先週の土日だった.ところが,土日には,予め決まっていた鎌倉散策が入っていたために,肝心の塔ノ岳には行けなかった.
前回,塔ノ岳に登ったのは,5月12日である.もうあれから,10日も間が空いてしまっている.これまでの経験から,塔ノ岳へ登る間隔を1週間空けると,登攀力が落ちているのが分かる.やはり,1週間の間に2回程度は,応分の山に登っていないと,体力維持はできないようである.
もちろん,鎌倉の天園を歩いていても,体力維持に,ある程度の効果はあるに違いないが,まあ,有り体に言えば「歩かないよりはマシかな・・・」程度の効果しか感じられない.
5月20日(月).南太平洋上を北東に進んでいる台風に誘発された茨城県海上の低気圧の影響で,私が住んでいる湘南地方にも,午前中,もの凄い風雨が吹き荒れた.東海道本線,横須賀線,湘南モノレールなど,当該地方の交通網は軒並み影響を受けた.それでも,午後になると,風雨は止んで,曇の天候に回復した.
天気予報によると.今日(5月21日)は,大雨の後の晴れ日である.ならば,もう,塔ノ岳に登るしかない.ただ,大雨の後なので,登山道が荒れている可能性がある.それに泥濘に悩まされるかもしれないので,スパッツをリュックに入れて,何時ものように,5時10分に家を出発する.
塔ノ岳山頂の尊仏山荘に立ち寄ると,偶然,ご常連のKさんが居た.成り行きで,予定外の丹沢山往復もしてしまった.塔ノ岳と丹沢山の間にあるシロヤシオは,まだ咲いていなかった・・・
<登山地図>
<プロフィールマップ>
コース バス停大倉→観音茶屋→見晴茶屋→一本松→駒止茶屋→堀山ノ家→戸沢分岐→花立山荘→金冷シ→塔ノ岳(尊仏山荘)→日高→龍ヶ馬場→丹沢山(往復)
■サボっていたので体調が悪い
急に塔ノ岳へ登ろうと思い立った私は,何時ものように,藤沢から小田急電鉄を利用して静沢駅に出る.駅前から大倉まで,7時17分発2番バスに乗車する.同じバスに乗り合わせた登山客は,たった5名.天気が良い日にしては,登山客はやや少ない.
歩き始めると直ぐに,自分の体調が良くないことに気が付く.
気温も高いせいかもしれないが,少し歩くピッチを上げると,直ぐに汗が噴き出てきて,息苦しくなる.それに,今日は,気温が高いとはいえ湿度はかなり低いようである.本来ならば歩きやすい筈なのに,このざまである.
私は無理はしないと自分に言い聞かせながら,こんな状態のときには,一体,どの程度の時間で山頂まで登れるのかなと想像し続ける.
■ホトトギスとコジュケイが元気
8時40分に駒止茶屋を通過する.7時38分に大倉を歩き出してから,1時間02分経過している.身体の調子が良ければ,大倉から駒止茶屋までの所要時間は,58~59分程度である.もし,この所要時間が1時間を切っていれば,塔ノ岳山頂までの所要時間が2時間10分台になる可能性が高いが,1時間を数分オーバーしたときは,山頂まで2時間20分以内に到着できる可能性は殆どなくなる.
近くの茂みの中で,ホトトギスが大きな啼き声をあげている.
ここまでの体調を考慮して,今日の山頂までの所要時間は,多分,2時間25分程度かなと予想する.
駒止茶屋を通過して直ぐに,見晴らしの良い尾根道に入る.ここまで来ると,そよ風が尾根を越えて吹き抜けている.そよ風が火照った肌を優しく冷やしてくれる.天気は快晴だが,茫洋とした富士山が,遠く春霞の中に浮いて見えている.
尾根道からの美しい風景を眺めている内に,体調も段々と回復してくるようである. 足元の茂みで,コジュケイが「チョットコイ,チョトコイ」と,盛んに啼いている.
■ご常連も元気
8時53分に堀山ノ家を通過する.晴れていれば,小草平の大きな杉の木の間から,富士山が良く見えるはずだが,先ほどまで見えていた富士山が白い雲に覆われて全く見えない.
直ぐに急坂に差し掛かる.案外,良いペースで登ることができる.途中,数名の登山客を追い越す.多分,1番バスの乗客ではないかと思う.
この年になっても,他人を追い越せば気分が良いし,追い越されれば気分は悪い.でも,こんなときには,何時も「お前が競争しているのは他人ではない.過去のお前自身と,それに,未来のお前と,競争しているんだぞ」と自戒する.そして,決して無理はしないと,改めて自分に言い聞かせる.
花立山荘手前の階段を登る.もう少しで,花立山荘に到着するところで,上から降りてきたご常連とすれ違う.私より3才年下のご常連である.私が登っていく姿を見付けると,手を挙げながら,「やあ~」と声を掛けてくる.彼は,
「今日は4分切りましたよ・・・今日は暑いですね.山頂の気温が8℃もありましたよ」
と私に報告する.塔ノ岳山頂まで,1時間56分で登ったことになる.正に驚異的である.
<今日の萱場平:案外状態は良い>
■花立山荘から塔ノ岳山頂へ
9時30分に花立山荘を通過する.さきほど雲に隠れていた富士山が,ふたたび茫洋と見え出す.沢山の登山客がベンチで休憩を取っている.ここまで来れば,もう難所は終わりである.後は応分に歩いていれば,間違いなく山頂に到着する.
8時45分に金冷シを通過する.後はもうすぐ山頂という喜びと安堵が混じったような気分で,楽しく登り続ける.そして,9時59分に塔ノ岳山頂(標高1,491m)に到着する.今日の大倉から山頂までの所要時間は,2時間21分.登り始めの体調の悪さから勘案すると,まあ,まあの記録である.
山頂から周囲の景色を見回す.春霞のために遠目は利かないが,やわらかな陽春の日光が降り注いでいる.数名の登山客が,ベンチに腰を下ろして休んでいる.
私は周辺の風景をデジカメに収める.そして尊仏山荘に向かう.山荘の裏手に雌鹿が1頭,草をはんでいる.ご常連が鹿の写真を撮ろうとしている.鹿に,カメラを見るように,一生懸命,いろいろなことをしている.小屋の窓から営業部長のミー君が身体を半分外に出して,その様子を興味深げに眺めている.その様子がユーモラスなので,私も思わず写真を撮る.
<営業部長:ネコのミー君>
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.ご常連のカメラマン氏,Kさん,それに見知らぬ男性1人が先客で居る.今日の小屋番はOさんである.直ぐに,山荘の温度計で山頂の気温を見る.今日の10時現在の気温は,+9.5℃と暖かい.私が山荘にはいると,Kさんが,待ってましたとばかり,
「・・・やあ,,,flower-hillさんが必ず登ってくると思っていましたよ・・」
と言う.天気の移り変わりを見ていると,今日,私が山に登ってくると確信したという.正に,図星である.私が,Kさんに,
「今日は随分早かったですね・・・3時間を切ったでしょう?」
と伺う.それを切っ掛けにして,暫くの間,カメラマン氏,K氏で,誰が何時間で登ったという他愛のない雑談に花を咲かせる.カメラマン氏が,私に,
「ところで,肺活量はどのくらいあるの・・・?」
と聞く.咄嗟には思い出せなかったが,昨年7月の健康診断で測定したときの数値を思い出す.
「それだけ肺活量があるなら,足を鍛えるともっと速く登れるようになるよ・・」
と嬉しいことを言ってくれる.
ふと,番台の奥を見ると,ミー君がボンヤリと座っている.Oさんに,
「ミー君の写真を撮らせてください・・・」
とお願いする.するとOさんが,柄にもなく優しい声で,
「ミャ~や,出てお出で・・・」
とミー君を呼ぶ.ミー君は幾分スマートになったようである.相変わらず可愛い.
<丹沢山へ向かう伸びやかな峠道>
■丹沢山へ向かう稜線
そろそろ尊仏山荘を退散しようと思ったときに,Kさんから,丹沢山へ行かないかと誘われる.内心で,
「丹沢山を往復するのも,悪くはないな・・・でも,夕方のテレビ水戸黄門には間に合わないな.どうしようか?」
と迷うが,丹沢山往復も悪ないなと行く気になる.
Kさんと一緒に,10時34分に,尊仏山荘を出発する.直ぐに急な階段道を下る.進行方向左手に群生するシロヤシオの花は,まだ咲いていない.私達より先に出たカメラマン氏が盛んに写真を撮っている.
<丹沢山へ向かう稜線:開放感がある伸びやかな散策路>
<丹沢山山頂の桜とバイケイソウ>
■丹沢山山頂
鞍部を越えて,峠道を先へ進む.前方には一面にクマ笹の斜面が広がっている.明るい日の光を浴びて,新緑の木の葉が輝いている.植林の多い大倉尾根とはひと味違う美しさである.ブナ林が続く.
10時56分に日高(1,461m)を通過する.なだらかな下り坂を進む.長い木道を渡って,再び坂を登る.両側の景色を眺めたり,道端の花を見たりのノンビリ旅である.この辺りまで来ると,登山客の数も極端に少なくなる.夫婦1組と前後しながら先へ進む.
11時16分,龍ヶ馬場(1,504m)に到着する.ここからの眺望は素晴らしい.遠く大山が聳えている.振り返ると木立に覆われた塔ノ岳が三角形に屹立している.
11時36分,やや急な坂道を登りきって,丹沢山山頂(1,567m)に到着する.山頂は広場になっている.広場の片隅にある桜が満開である.広場の真ん中に大きな腰掛けが4脚設置されている.そこに座って,暫くの間,辺りの風景を楽しむ.
<丹沢山山頂の「みやま山荘」:静かなただずまいの小屋である>
■尊仏山荘へ戻る
丹沢山の長閑な山頂に何時までも居たい気分だが,11時57分に塔ノ岳に向けて山頂を出発する.出発してから直ぐに,急に下腹部が痛くなりはじめる.暫くの間,我慢して下り続ける.
鞍部を通過して,龍ヶ馬場手前の登り坂に差し掛かった頃,遂に我慢しきれなくなる.仕方なく,Kさんに先に行って貰い,草陰に隠れて雉討ちをする.尾籠な話で恐縮だが,猛烈な下痢である.それでも渋り腹が治まらないので,暫くの間,しゃがみ込んだまま過ごす.やっと治まってからも,出した物を土に埋めるのに,また手間取る.
先に行って貰ったKさんの後ろ姿は見えないが,やや急ぎ足で,再び歩き続ける.そして,ユックリと歩いているKさんに,龍ヶ馬場手前で何とか追いつく.
12時15分に龍ヶ馬場を通過する.進行方向右手には,富士山の7合目付近から上だけが,靄の上に抜けて見えている.結構見応えのある景色である.
12時38分に日高を通過する.
<木の間から富士山が見える:龍ヶ馬場付近から>
鞍部を抜けて,急坂を登り返す.そして,13時丁度に尊仏山荘に到着する.山荘に入る.山荘は沢山の登山客で賑わっている.
小屋番のOさんが,
「随分ゆっくりでしたね」
と話し掛けてくる.
「ゆっくり,丹沢山まで行ってきましたよ・・」
「丹沢山まで行ったんですか・・・それなら,随分と速いですね」
<もうすぐ咲きそうなシロヤシオ:塔ノ岳付近>
■無事下山
13時22分,塔ノ岳山頂を出発して下山を開始する.ゆっくりペースだが,Kさんと一緒の下山なので,何時ものように余り道草しないで下り続ける.1ピッチで下って,15時10分,大倉に到着する.下りの所要時間は,1時間48分.
バス停前には10名ほどの登山客がバスを待っている.その中に,山旅スクール5期のスケルトンさんが居る.
「今日は,flower-hillさんが登っていると思っていましたよ・・・何時もの場所ですれ違わないので,不思議に思っていました.今日は,随分遅いですね」
「いえ,今日は,丹沢山まで行ってきましたんで,遅くなりました・・」
3人は,その後,渋沢から同じ電車に乗車する.私は相模大野で江ノ島線に乗り換える.丁度その時に,特急えのしま75号に間に合うことが分かる.慌てて300円也の特急券を購入して,特急に飛び乗る.さすがに特急は速い.相模大野から僅か20分ほどで藤沢に到着する.
[ラップタイム]
7:38 大倉歩き出し
7:42 登山口
7:50 丹沢ベース
7:58 観音茶屋
8:02 分岐
8:11 雑事場ノ平
8:13 見晴茶屋
8:27 一本松
8:40 駒止茶屋
8:48 堀山
8:53 堀山ノ家
9:06 戸沢分岐
9:11 萱場平
9:30 花立山荘
9:45 金冷シ
9:59 塔ノ岳山頂 着
===============================
10:34 塔ノ岳山頂 発(+9.3℃)
10:56 日高
11:16 龍ヶ馬場
11:36 丹沢山山頂 着
===============================
11:57 丹沢山山頂 発
12」15 龍ヶ馬場
12:38 日高
13:00 塔ノ岳山頂 着
===============================
13:22 塔ノ岳山頂 発
13:34 金冷シ
13:44 花立山荘
13:57 萱場平
13:59 戸沢分岐
14:07 堀山ノ家
14:14 堀山
14:22 駒止茶屋
14:32 一本松
14:41 見晴茶屋
14:43 雑事場ノ平
14:51 分岐
14:55 観音茶屋
15:06 丹沢ベース
15:08 登山口
15:10 大倉 着
[山行記録]
<大倉・塔ノ岳間>
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間
大倉発 7:38
塔ノ岳山頂着 9:59
(所要時間) 2時間21分(2.35h)
登攀速度 1,201m/2.35h=511.1m/h
■下降所要時間(K氏に同行)
塔ノ岳山頂発 13:22
大倉発 15:10
(所要時間) 1時間48分(1.80h)
下降速度 1,201m/1.80h=667.2m/h
<大倉・丹沢間>
■登攀・下降高度 1471m
■水平移動距離 8.8km
(おわり)
塔ノ岳(第24回目)の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/a0bba77737883c8670eafe6db7503bd7
新緑の尾根道を歩く:塔ノ岳から丹沢山往復
(今年度25回目)
(往路単独・復路K氏に同行)
2008年5月21日(水) 晴れ
この所,低気圧や台風接近で,天候が思わしくない日が続いている.そんな毎日の中で,たまたま好天気が続いたのは先週の土日だった.ところが,土日には,予め決まっていた鎌倉散策が入っていたために,肝心の塔ノ岳には行けなかった.
前回,塔ノ岳に登ったのは,5月12日である.もうあれから,10日も間が空いてしまっている.これまでの経験から,塔ノ岳へ登る間隔を1週間空けると,登攀力が落ちているのが分かる.やはり,1週間の間に2回程度は,応分の山に登っていないと,体力維持はできないようである.
もちろん,鎌倉の天園を歩いていても,体力維持に,ある程度の効果はあるに違いないが,まあ,有り体に言えば「歩かないよりはマシかな・・・」程度の効果しか感じられない.
5月20日(月).南太平洋上を北東に進んでいる台風に誘発された茨城県海上の低気圧の影響で,私が住んでいる湘南地方にも,午前中,もの凄い風雨が吹き荒れた.東海道本線,横須賀線,湘南モノレールなど,当該地方の交通網は軒並み影響を受けた.それでも,午後になると,風雨は止んで,曇の天候に回復した.
天気予報によると.今日(5月21日)は,大雨の後の晴れ日である.ならば,もう,塔ノ岳に登るしかない.ただ,大雨の後なので,登山道が荒れている可能性がある.それに泥濘に悩まされるかもしれないので,スパッツをリュックに入れて,何時ものように,5時10分に家を出発する.
塔ノ岳山頂の尊仏山荘に立ち寄ると,偶然,ご常連のKさんが居た.成り行きで,予定外の丹沢山往復もしてしまった.塔ノ岳と丹沢山の間にあるシロヤシオは,まだ咲いていなかった・・・
<登山地図>
<プロフィールマップ>
コース バス停大倉→観音茶屋→見晴茶屋→一本松→駒止茶屋→堀山ノ家→戸沢分岐→花立山荘→金冷シ→塔ノ岳(尊仏山荘)→日高→龍ヶ馬場→丹沢山(往復)
■サボっていたので体調が悪い
急に塔ノ岳へ登ろうと思い立った私は,何時ものように,藤沢から小田急電鉄を利用して静沢駅に出る.駅前から大倉まで,7時17分発2番バスに乗車する.同じバスに乗り合わせた登山客は,たった5名.天気が良い日にしては,登山客はやや少ない.
歩き始めると直ぐに,自分の体調が良くないことに気が付く.
気温も高いせいかもしれないが,少し歩くピッチを上げると,直ぐに汗が噴き出てきて,息苦しくなる.それに,今日は,気温が高いとはいえ湿度はかなり低いようである.本来ならば歩きやすい筈なのに,このざまである.
私は無理はしないと自分に言い聞かせながら,こんな状態のときには,一体,どの程度の時間で山頂まで登れるのかなと想像し続ける.
■ホトトギスとコジュケイが元気
8時40分に駒止茶屋を通過する.7時38分に大倉を歩き出してから,1時間02分経過している.身体の調子が良ければ,大倉から駒止茶屋までの所要時間は,58~59分程度である.もし,この所要時間が1時間を切っていれば,塔ノ岳山頂までの所要時間が2時間10分台になる可能性が高いが,1時間を数分オーバーしたときは,山頂まで2時間20分以内に到着できる可能性は殆どなくなる.
近くの茂みの中で,ホトトギスが大きな啼き声をあげている.
ここまでの体調を考慮して,今日の山頂までの所要時間は,多分,2時間25分程度かなと予想する.
駒止茶屋を通過して直ぐに,見晴らしの良い尾根道に入る.ここまで来ると,そよ風が尾根を越えて吹き抜けている.そよ風が火照った肌を優しく冷やしてくれる.天気は快晴だが,茫洋とした富士山が,遠く春霞の中に浮いて見えている.
尾根道からの美しい風景を眺めている内に,体調も段々と回復してくるようである. 足元の茂みで,コジュケイが「チョットコイ,チョトコイ」と,盛んに啼いている.
■ご常連も元気
8時53分に堀山ノ家を通過する.晴れていれば,小草平の大きな杉の木の間から,富士山が良く見えるはずだが,先ほどまで見えていた富士山が白い雲に覆われて全く見えない.
直ぐに急坂に差し掛かる.案外,良いペースで登ることができる.途中,数名の登山客を追い越す.多分,1番バスの乗客ではないかと思う.
この年になっても,他人を追い越せば気分が良いし,追い越されれば気分は悪い.でも,こんなときには,何時も「お前が競争しているのは他人ではない.過去のお前自身と,それに,未来のお前と,競争しているんだぞ」と自戒する.そして,決して無理はしないと,改めて自分に言い聞かせる.
花立山荘手前の階段を登る.もう少しで,花立山荘に到着するところで,上から降りてきたご常連とすれ違う.私より3才年下のご常連である.私が登っていく姿を見付けると,手を挙げながら,「やあ~」と声を掛けてくる.彼は,
「今日は4分切りましたよ・・・今日は暑いですね.山頂の気温が8℃もありましたよ」
と私に報告する.塔ノ岳山頂まで,1時間56分で登ったことになる.正に驚異的である.
<今日の萱場平:案外状態は良い>
■花立山荘から塔ノ岳山頂へ
9時30分に花立山荘を通過する.さきほど雲に隠れていた富士山が,ふたたび茫洋と見え出す.沢山の登山客がベンチで休憩を取っている.ここまで来れば,もう難所は終わりである.後は応分に歩いていれば,間違いなく山頂に到着する.
8時45分に金冷シを通過する.後はもうすぐ山頂という喜びと安堵が混じったような気分で,楽しく登り続ける.そして,9時59分に塔ノ岳山頂(標高1,491m)に到着する.今日の大倉から山頂までの所要時間は,2時間21分.登り始めの体調の悪さから勘案すると,まあ,まあの記録である.
山頂から周囲の景色を見回す.春霞のために遠目は利かないが,やわらかな陽春の日光が降り注いでいる.数名の登山客が,ベンチに腰を下ろして休んでいる.
私は周辺の風景をデジカメに収める.そして尊仏山荘に向かう.山荘の裏手に雌鹿が1頭,草をはんでいる.ご常連が鹿の写真を撮ろうとしている.鹿に,カメラを見るように,一生懸命,いろいろなことをしている.小屋の窓から営業部長のミー君が身体を半分外に出して,その様子を興味深げに眺めている.その様子がユーモラスなので,私も思わず写真を撮る.
<営業部長:ネコのミー君>
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る.ご常連のカメラマン氏,Kさん,それに見知らぬ男性1人が先客で居る.今日の小屋番はOさんである.直ぐに,山荘の温度計で山頂の気温を見る.今日の10時現在の気温は,+9.5℃と暖かい.私が山荘にはいると,Kさんが,待ってましたとばかり,
「・・・やあ,,,flower-hillさんが必ず登ってくると思っていましたよ・・」
と言う.天気の移り変わりを見ていると,今日,私が山に登ってくると確信したという.正に,図星である.私が,Kさんに,
「今日は随分早かったですね・・・3時間を切ったでしょう?」
と伺う.それを切っ掛けにして,暫くの間,カメラマン氏,K氏で,誰が何時間で登ったという他愛のない雑談に花を咲かせる.カメラマン氏が,私に,
「ところで,肺活量はどのくらいあるの・・・?」
と聞く.咄嗟には思い出せなかったが,昨年7月の健康診断で測定したときの数値を思い出す.
「それだけ肺活量があるなら,足を鍛えるともっと速く登れるようになるよ・・」
と嬉しいことを言ってくれる.
ふと,番台の奥を見ると,ミー君がボンヤリと座っている.Oさんに,
「ミー君の写真を撮らせてください・・・」
とお願いする.するとOさんが,柄にもなく優しい声で,
「ミャ~や,出てお出で・・・」
とミー君を呼ぶ.ミー君は幾分スマートになったようである.相変わらず可愛い.
<丹沢山へ向かう伸びやかな峠道>
■丹沢山へ向かう稜線
そろそろ尊仏山荘を退散しようと思ったときに,Kさんから,丹沢山へ行かないかと誘われる.内心で,
「丹沢山を往復するのも,悪くはないな・・・でも,夕方のテレビ水戸黄門には間に合わないな.どうしようか?」
と迷うが,丹沢山往復も悪ないなと行く気になる.
Kさんと一緒に,10時34分に,尊仏山荘を出発する.直ぐに急な階段道を下る.進行方向左手に群生するシロヤシオの花は,まだ咲いていない.私達より先に出たカメラマン氏が盛んに写真を撮っている.
<丹沢山へ向かう稜線:開放感がある伸びやかな散策路>
<丹沢山山頂の桜とバイケイソウ>
■丹沢山山頂
鞍部を越えて,峠道を先へ進む.前方には一面にクマ笹の斜面が広がっている.明るい日の光を浴びて,新緑の木の葉が輝いている.植林の多い大倉尾根とはひと味違う美しさである.ブナ林が続く.
10時56分に日高(1,461m)を通過する.なだらかな下り坂を進む.長い木道を渡って,再び坂を登る.両側の景色を眺めたり,道端の花を見たりのノンビリ旅である.この辺りまで来ると,登山客の数も極端に少なくなる.夫婦1組と前後しながら先へ進む.
11時16分,龍ヶ馬場(1,504m)に到着する.ここからの眺望は素晴らしい.遠く大山が聳えている.振り返ると木立に覆われた塔ノ岳が三角形に屹立している.
11時36分,やや急な坂道を登りきって,丹沢山山頂(1,567m)に到着する.山頂は広場になっている.広場の片隅にある桜が満開である.広場の真ん中に大きな腰掛けが4脚設置されている.そこに座って,暫くの間,辺りの風景を楽しむ.
<丹沢山山頂の「みやま山荘」:静かなただずまいの小屋である>
■尊仏山荘へ戻る
丹沢山の長閑な山頂に何時までも居たい気分だが,11時57分に塔ノ岳に向けて山頂を出発する.出発してから直ぐに,急に下腹部が痛くなりはじめる.暫くの間,我慢して下り続ける.
鞍部を通過して,龍ヶ馬場手前の登り坂に差し掛かった頃,遂に我慢しきれなくなる.仕方なく,Kさんに先に行って貰い,草陰に隠れて雉討ちをする.尾籠な話で恐縮だが,猛烈な下痢である.それでも渋り腹が治まらないので,暫くの間,しゃがみ込んだまま過ごす.やっと治まってからも,出した物を土に埋めるのに,また手間取る.
先に行って貰ったKさんの後ろ姿は見えないが,やや急ぎ足で,再び歩き続ける.そして,ユックリと歩いているKさんに,龍ヶ馬場手前で何とか追いつく.
12時15分に龍ヶ馬場を通過する.進行方向右手には,富士山の7合目付近から上だけが,靄の上に抜けて見えている.結構見応えのある景色である.
12時38分に日高を通過する.
<木の間から富士山が見える:龍ヶ馬場付近から>
鞍部を抜けて,急坂を登り返す.そして,13時丁度に尊仏山荘に到着する.山荘に入る.山荘は沢山の登山客で賑わっている.
小屋番のOさんが,
「随分ゆっくりでしたね」
と話し掛けてくる.
「ゆっくり,丹沢山まで行ってきましたよ・・」
「丹沢山まで行ったんですか・・・それなら,随分と速いですね」
<もうすぐ咲きそうなシロヤシオ:塔ノ岳付近>
■無事下山
13時22分,塔ノ岳山頂を出発して下山を開始する.ゆっくりペースだが,Kさんと一緒の下山なので,何時ものように余り道草しないで下り続ける.1ピッチで下って,15時10分,大倉に到着する.下りの所要時間は,1時間48分.
バス停前には10名ほどの登山客がバスを待っている.その中に,山旅スクール5期のスケルトンさんが居る.
「今日は,flower-hillさんが登っていると思っていましたよ・・・何時もの場所ですれ違わないので,不思議に思っていました.今日は,随分遅いですね」
「いえ,今日は,丹沢山まで行ってきましたんで,遅くなりました・・」
3人は,その後,渋沢から同じ電車に乗車する.私は相模大野で江ノ島線に乗り換える.丁度その時に,特急えのしま75号に間に合うことが分かる.慌てて300円也の特急券を購入して,特急に飛び乗る.さすがに特急は速い.相模大野から僅か20分ほどで藤沢に到着する.
[ラップタイム]
7:38 大倉歩き出し
7:42 登山口
7:50 丹沢ベース
7:58 観音茶屋
8:02 分岐
8:11 雑事場ノ平
8:13 見晴茶屋
8:27 一本松
8:40 駒止茶屋
8:48 堀山
8:53 堀山ノ家
9:06 戸沢分岐
9:11 萱場平
9:30 花立山荘
9:45 金冷シ
9:59 塔ノ岳山頂 着
===============================
10:34 塔ノ岳山頂 発(+9.3℃)
10:56 日高
11:16 龍ヶ馬場
11:36 丹沢山山頂 着
===============================
11:57 丹沢山山頂 発
12」15 龍ヶ馬場
12:38 日高
13:00 塔ノ岳山頂 着
===============================
13:22 塔ノ岳山頂 発
13:34 金冷シ
13:44 花立山荘
13:57 萱場平
13:59 戸沢分岐
14:07 堀山ノ家
14:14 堀山
14:22 駒止茶屋
14:32 一本松
14:41 見晴茶屋
14:43 雑事場ノ平
14:51 分岐
14:55 観音茶屋
15:06 丹沢ベース
15:08 登山口
15:10 大倉 着
[山行記録]
<大倉・塔ノ岳間>
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間
大倉発 7:38
塔ノ岳山頂着 9:59
(所要時間) 2時間21分(2.35h)
登攀速度 1,201m/2.35h=511.1m/h
■下降所要時間(K氏に同行)
塔ノ岳山頂発 13:22
大倉発 15:10
(所要時間) 1時間48分(1.80h)
下降速度 1,201m/1.80h=667.2m/h
<大倉・丹沢間>
■登攀・下降高度 1471m
■水平移動距離 8.8km
(おわり)
塔ノ岳(第24回目)の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/a0bba77737883c8670eafe6db7503bd7