中高年の山旅三昧(その2)

■登山遍歴と鎌倉散策の記録■
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アンナプルナ・ダウラギリ展望紀行(18)コラバニの夜

2008年02月23日 22時59分12秒 | ネパール:アンナプルナ展望
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       アンナプルナ・ダウラギリ展望紀行(18)
             ヒレの夜
        2001年3月29日(木)(つづき)
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<午後のひととき>

■少年の懐かしい着物姿

 私達は,14時58分に,本日の宿泊地,ヒレに到着する。これから夕食までは自由時間である。早速,私はテント場が見渡せるところから,テント場一体のスケッチを開始する。テント場の先には段々畑が続く山裾が,折り重なるように見えている。テント場の近くには石畳で舗装された道路が続いている。
 一生懸命,スケッチをしていると,私の背後に何となく人気を感じる。振り返ってみると,5~6才の男の子が,私の手許を熱心に覗き込んでいる。可愛い顔をしているが,もの凄いボロ布のような着物を着ている。顔や手は垢まみれである。私は田舎育ち。自分が子供の頃のことが,なんとなく連想される。私も,子供の頃は青い鼻水を何時も垂らしていたっけ・・・それに着物を着ていた。着物の袖は,拭いた鼻水でテカテカと光っていた。今,私の後に立っている少年と全く同じだった。
 30分ほどスケッチをしたり,彼方此方をブラブラした後,自分のテントに戻る。

                      <ヒレのテント場>

■ティーブレーク
 15時49分,テント場の片隅にある食堂小屋で,お茶の時間を楽しむ。ティーに独特の香りのある牛乳(?)を入れて飲む。
 HAガイドから,これから現地通貨で空港税1,300Rb程度は残しておくように注意を受ける。
 16時20分頃,突然雨が降り出す。雨と同時に気温が急激に下がり始める。雨が降りしきっているが,16時45分頃,西日が当たり始める。ティーブレークは流れ解散となるが,HAガイド,仙人,YMさん,それに私の4人は,なおも残って,山談義に花を咲かせる。

■シュラフが濡れる
 17時30分,自分のテントに戻る。すると何時の間にか,リュックの中に入れておいた水筒の水が漏れていて,困ったことに,マットとシュラフの一部が水でビショビショになっている。これも自業自得。仕方がない。シュラフを絞って,できるだけ水を少なくしてから,我慢して寝るしかない。
 手拭いで,その辺りの水気を搾り取る。たまたま持参していたビニール製の100円マットをマットレスの上に敷いて,急場をしのぐことにする。
 同じテントで寝起きする仙人と雑談をしながら夕食を待つ。

<夕食とフェアウエルパーティ>

■夕食

 18時30分から夕食である。仙人と一緒に食事小屋へ移動する。辺りは,すっかり暗くなっている。食堂の天井には,めずらしく蛍光灯が付いている。ここは,この辺りでは珍しい大都会である。
 まずはチキンスープ。メインディッシュは,オジヤ風親子ドンブリ,うどん,オクラ,紫色のオニオン,大根・ニンジンの和え物,おせんべいのようなものと盛りだくさんである。美味。 夕食後,HAガイドを囲んで雑談。
 最初に,HAガイドから明日の行動予定の説明がある。
 明日は6時30分起床。7時00分,朝食。7時30分に歩き出し。ビレタンティというところで昼食。チャプルでバスに乗ってポカラ空港に向かう。ポカラ15時15分発カトマンズ行の飛行機に乗って,カトマンズに帰る予定だとのことである。
 カトマンズでの観光,買い物,お金のことなど雑談しながら時間を過ごす。

                      <ヒレの夕食>

■フェアウエルパーティ
 テント生活も今夜で終わりである。明日の夜はカトマンズのホテルで迎えることになる。そこで,現地スタッフが,私達のためにフェアウエルパーティを開いてくれるという。
 19時30分に食堂に集まる。
 現地スタッフが大きなケーキをテーブルの上に置く。ケーキの上には,SEE YOU AGAINと赤い字が書いてある。人数分に切り分ける。ところが,この切り分けられた一切れが,結構,大きいので,なかなか食べきれない。
 HAガイドによると,現地スタッフはケーキなど食べたことがないという。しかし,器用な彼らは,見様見真似で,ケーキを作っているようである。道理で,ベースのパン生地の出来は余り良くないが,それでも十分に美味しい。
 ケーキを食べながら雑談の花を咲かせる。HAガイドからカトマンズの登山用品店で品物を買うときは,品質に十分注意するように言われる。外国の登山隊が,登山をするときに,シェルパに登山用品を支給することになっているという。これらの中古品か,あるいは何回も登山に参加したシェルパが,貰った品物を,市場に流したものが大部分だという。

               <フェアウエルパーティのケーキ>

<夜が更けて>

■踊り狂う

 ケーキを食べ終えた私達は,広場に出る。夜が更けている。広場にポーターやシェルパが並んで立っている。私達は,彼らの前のテーブルに座る。
 シェルパ達は,笛と太鼓を使って,リズム感のある音楽を演奏し始める。太鼓に合わせて手拍子を始める。その内に2人が前に出て,身体をクネクネさせながら踊り出す。時々,
 「ギャー・・・ギャー・・・」
と奇声を挙げて,踊るメンバーが交代する。
 隊員の何人かが,前に出て,踊りの輪に入り込む。段々と踊りのテンポが早くなる。 私はこの種の馬鹿騒ぎに参加するのが大の苦手である。やがて大半の隊員が踊りに加わってしまう。憮然として座ったままなのは,仙人や私を含めて,ほんの数名になってしまう。
 “Excuse me Sir・・・”
と言いながら,現地スタッフの一人が,私の手を引っ張って,無理矢理に踊りの輪の中に引き込む。内心,
 「こん畜生・・!」
と憤懣やるかたない気分になるが,これ以上抵抗して座を白けさせるのも,大人げないので,不承不承踊りの輪に加わる。その内に,集落に住んでいる子供達も踊りの輪に入ってくる。口笛も増えて,踊りは絶好調になる。
 「ドンドコ,ドンドコ・・・」
と太鼓が打ち鳴らされる。現地スタッフは,全員,踊りが大変上手である。
 私は適当に,いなした後,席に戻るが,調子づいた団員が,「月が出た出た・・」「サクラ,サクラ・・・」など,古い歌を次から次へと歌い出す。

                   <踊り狂うヒレの夜>

■素晴らしい夜空
 私は,そっと会場から抜け出して,自分のテントに戻る。暫くの間,シュラフの中に潜り込んで,彼らの歌声を,聞くでもなく,聞かないでもなく,ボンヤリと過ごす。
 22時58分,トイレに行きたくなる。ズボンを履いてから,テントを出る。あいにくトイレテントには先客が居る。仕方なく,夜空を仰ぎながら,トイレが空くのを待つ。
 満天の星空である。上空は澄み渡り,三日月,オリオン,北斗七星などがピカピカと輝いている。プロキオン,シリウスなど春の大三角形がクッキリと見えている。そして,北極星が随分と低い位置で輝いている。
 用を済ませて,テントに戻る。耳を澄ますと,遠くから「ゴー・・」という音が微かに聞こえてくる。川の音だろうか。隣に寝ている仙人の寝息が聞こえる。何となく目が覚めてしまい,なかなか寝付けない。
 黒い番犬が,絶えずテント周辺を巡回している。

                    <ヒレの夜景>

                                (つづく)


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