<塔ノ岳山頂からの眺望:春茫洋>
もう初夏のような丹沢:塔ノ岳
(第20回)
(単独山行)
2008年4月15日(火) 晴れ
■雨の狭間の日に・・・
毎度,天候のことから書き出すのは,如何にもマンネリだが,この所の天気の移り変わりは,ついつい愚痴をこぼしたくなる。春だから天気がネコの目のように変わるのも,仕方がないじゃないかと言われれば,それまでだが,「登るのは今日しかないぞ」が,突然やってくるので,とても困っている。今日(3月15日)は,まさにその突然日である。今日登らなければ,明日からまた長雨になるという天気予報の有り難くないご託宣である。
例によって,登山用具を入れっぱなしにしているリュックを担いで,5時10分に家を出る。もう辺りはすっかり明るくなっている。そういえば,前回,泥だらけのスパッツを,そのまま,リュックに入れっぱなしにしている。今日は泥だらけのスパッツを,そのまま使うしかない。でも,まあ,いいか・・・
■大倉を歩き出す
藤沢から廉価版のナントカキップを使って,何時ものように,7時13分に小田急線藤沢駅に到着する。すぐに大倉行のバスに乗車する。平日なのに登山客が丁度10名乗り合わせている。夫婦の方が1組。後の大半は60才代と思われる一匹狼と思われる男性ばかりである。ご常連の顔は見当たらない。
今日は,朝から胸焼けがして,体の調子が今ひとつである。でも,まあ,歩いている内に,胸焼けも収まるだろと期待して,7時42分にバス停大倉を歩き出す。
昨日までの雨のため,バス停周辺の道路はタップリと濡れている。暗い杉林の登山道に入ってからも,辺りはベチャベチャに濡れたままである。登山道に敷かれた石が,ツルツルと良く滑る。私は,「今日は,身体が少し重いな・・・・」と感じながら,マイペースで歩き続ける。
寒暖計を持っていないので,正確な気温は分からないが,とにかく山歩きには暑い。少しピッチを上げると,額から汗が流れ落ちそうになる。そこで,少しペースを落として,汗ばむ程度の負荷で登るように心掛ける。
■見晴茶屋から急坂へ
8時02分に観音茶屋を通過する。茶屋の前のベンチで,同じバスに乗り合わせた方が,荒い息をしながら休憩を取っている。
8時06分,大倉高原山の家へ向かう道との分岐を通過する。前方からパンツ一枚のご常連が猛烈な勢いで,下山してくる。Yさんである。私はYさんに,
「おや・・今日は随分と早いですね・・」
と挨拶する。
8時16分に見晴茶屋を通過する。茶屋のベンチで,2人の登山者が休憩を取っている。見晴茶屋を通過すると,いよいよ急坂となる。この急坂の登り具合で,今日の身体の調子が大体分かる。無理をしないように,また,山旅スクールのサンダーウエスト氏から教わった歩き方に注意しながら,登り続ける。
「膝を少し曲げて,上体を落とせ・・尻を後に突き出すな,重心を少し前に移動せよ,腹式呼吸を忘れるな・・・」私は,一歩一歩,自分に言い聞かせながら登り続ける。
8時31分に一本松を通過する。ここで一人の女性を追い抜く。この女性も,度々,バカ尾根を登っているらしい。私の顔を見て,
「こんにちは・・・またお会いしましたね・・」
と挨拶する。頭がボケ始めた私は,この女性の記憶は全くないが,
「やあ,暫くでした・・・2番のバスでしたか?」
と当たり障りのない返事をする。すると,
「いえ,私,1番バスですよ・・・」
と苦笑する。私は不味いことを聞いちゃったなと後悔する。
■泥濘の尾根道
一本松の直ぐ上は,凄い泥んこ道になっている。この辺りは日当たりが悪くて,何時までも残雪があった所である。グシャグシャ,ヌルヌルする道が暫く続くと,やがて平らな尾根道になる。この辺りまで来ると,重苦しい天井が突き抜けたような開放感があって,ホッとする。
暫く水平道を楽しむと,再び急な階段道になる。階段の木が濡れていて,とても滑りやすい。前方には,疲労で,足がほとんど上がらない状態の登山者が,2人居られる。申し訳ないが,追い越させて貰う。
8時45分に駒止茶屋を通過する。私の場合,大倉から,駒止茶屋まで,1時間以内で到着すれば,まあ体調が良いと判断できる。だが,今日は,僅か2分とはいえ,1時間を越えている。このままの調子で歩き続ければ,塔ノ岳山頂まで,2時間25分から30分ぐらい掛かると予想が付く。
堀山の水平道に出る。今日は良く晴れていて爽快である。この辺りまで登ると,標高が高くなるので,蒸し暑さもなく,気分がよい。春霞を通して残雪で真っ白な富士山が茫洋と見えている。景色の良い所で,数枚の写真を撮る。
<今日(3月15日)の萱場平:雨の翌日にしてはまあまあの状態>
■しんどい急階段
9時02分に堀山ノ家を通過する。何となく体調が回復しているようである。そのままガレた坂道を登り始める。丁度その時,坂の上から修験僧が下山してくる。
ここの坂道を登るのは,毎度のことながら,とても辛い。一歩,一歩,自分の体調と相談しながら,慎重に登り続ける。遠くの谷間から,キツツキが「ダダダダ・・」と忙しなく乾いた音を立てているのが聞こえてくる。
9時18分に戸沢分岐を通過する。この辺りでも止まりそうになっている登山者の先を行かせて貰う。萱場平の泥の状態は,多少泥んこのところもあるが,水溜まりもなく,案外歩きやすい。やがて,日当たりの良い階段に出る。紫外線をタップリ含んだ日光が容赦なく照りつけるので暑い。
花立山荘まで,もう少しのところで,先日お会いした私より3才年下のとすれ違う。私は,
「今日は,もう下山ですか・・」
と挨拶する。
「ええ・・今日は山頂まで,1時間59分でしたよ。2時間を切りました・・」
「凄いですね! 私は,今日,2時間20分台で登るのがやっとですよ・・」
「いや・・・大したものですよ。20分ぐらいの差は,年の差ですよ」
と妙な具合に慰められる。
「お互いに元気で続けましょう・・」
で,お別れする。
<花立場から塔ノ岳山頂が良く見える:大分春らしくなった>
■塔ノ岳山頂に到着
9時40分に花立山荘を通過する。私の前を登っていた2人の男性が,倒れ込むように,ベンチに座り込む。そのまま登り続けて,花立場のコルで,定点観測として,富士山の写真を撮る・・・が,もう富士山の廻りに雲がまとわりついていて,ほとんど見えなくなっている。
11時54分に金冷シを通過する。そう長い時間,道草をした覚えがないのに,意外に時間が掛かっている。もう,ここから急いでも仕方がないので,息が切れない程度の速度で登り続ける。そして,10時09分,塔ノ岳山頂に到着する。
山頂からの眺望は,晴れているので,まあまあの見晴らしだが,春霞が立ち込めていて,遠目が利かない。天候が良いので,何人かの登山者が,山頂の広場で休憩を取っている。
■尊仏山荘
尊仏山荘に入る。先客は3人。小屋番はオーナーのHさん。今日の山頂の気温は+11.3℃。私は,独り言を言う。
「随分と暖かですね・・」
「今朝は,5℃でしたよ」
とHさん。
カメラマン氏が先に到着している。雑談が始まる。私が下らない質問をする。
「この間は,随分と霧が深かったですね。霧のときも写真を撮るんですか・・」
「霧も風景ですよ・・」
と明快な答えが返ってくる。なるほど!
誰かが,
「今年のシロヤシオはいつ頃見頃でしょうかね」
と質問する。Hさんが,首を傾けながら,
「そうですね~ぇ,・・何時も5月中旬頃ですが。今年はどうなるか分かりませんが・・」
そういえば,今,山旅スクール10期に入っているKさんと知り合ったのも,昨年の今頃だった。Hさんが,思い出したように,
「Kさん,このところ,見えないですね」
と言う。
「Kさんですか,私も良く分からないんですが,少し足を痛めたとかで,リハビリ中とか・・・シロヤシオの頃には,多分,復帰されますよ・・」
今日も,営業部長の「ミー君」はお出ましにならなかった。
■奇遇
11時35分頃,山荘を出る。
山頂の景色を一回り見回す。山頂で休憩を取っている人が大分増えている。大倉13時22分のバスでゆっくり返ろうかな・・でも急げば12時52分に間に合うかな,などと思いながら,下り始める。
その時,丁度山頂に到着した夫婦連れに,いきなり話しかけられる。
「こんにちは,今日もお早いですね・・・水戸黄門ですか?」
先週,水曜日に,尊仏山荘でお会いしたご常連である。度々,登山を繰り返していると,顔見知りの方が増えてくる。これも楽しいことである。ここで,ほんの1~2分お話ししただけだが,12時52分に間に合わせるために,そそくさと下山するのが馬鹿馬鹿しくなって,あえてノンビリと下山しようと思い始める。
11時57分に金冷シを通過する。次々に登ってくる登山客とすれ違う。
花立場のコルからガレ道を下っているときに,夫婦が登ってくる。私の顔を見ると,
「あれ,flower-hillさんでしょう・・・ミルフォードサウンドでご一緒した○○ですよ。何時もブログを拝見しています。何時かお会いできると思っていました」
挨拶を受けながら,私もミルフォードサウンドのことを,つい昨日のことのように思い出す。懐かしさの余り,その後のことなど,ついつい3~4分ほど立ち話に耽る。
その内に,私も年だから,だんだん山歩きができなくなる・・・打ち止めには,ツールドモンブランを歩きたいと言う。すると,
「戸塚には,83才になっても現役で,頑張って居られる方が居ますよ・・・まだ,まだ,頑張ってください」
と励まされる。そして,再会を約してお別れする。
■予定通りに大倉に下山
暖かな日差しを受けながら,眠くなるような春の尾根道を,ノンビリと下り続ける。時計を見ながら,13時10分頃大倉に到着するように,歩行速度を調節する。途中で,数名の方に追い抜かれる。
13時10分,予定通りの時間に,大倉に到着する。下りの所要時間は,2時間30分。登りよりも,下りに,余計に時間が掛かったという奇妙な結果になった。
今回の登りは,結構,大変だった。まだ,登山回数が少ないので,ハッキリとは言えないが,やっぱり体力が少し落ちている懸念がある。ダラダラと下ったからかもしれないが,何だか何時もより疲れた感じがする。
余談だが,これから先,私は80才になっても,バカ尾根を3時間で登りたいものだと思っている。 題して「プロジェクト803」とでもしておこうか。
[ラップタイム]
7:42 大倉歩き出し
7:47 登山口
7:55 丹沢ベース
8:02 観音茶屋
8:06 分岐
8:14 雑事場ノ平
8:16 見晴茶屋
8:31 一本松
8:45 駒止茶屋
8:54 堀山
9:02 堀山ノ家
9:18 戸沢分岐
9:20 萱場平
9:40 花立山荘
9:54 金冷シ
10:09 塔ノ岳山頂 着
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10:40 塔ノ岳山頂 発(+11.3℃)
10:57 金冷シ(途中ミルフォードサウンド同行者と雑談)
11:16 花立山荘
11:37 萱場平
11:39 戸沢分岐
11:53 堀山ノ家
12:00 堀山
12:08 駒止茶屋
12:21 一本松
12:36 見晴茶屋
12:38 雑事場ノ平
12:47 分岐
12:50 観音茶屋
12:57 丹沢ベース
13:04 登山口
13:10 大倉 着
[山行記録]
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間
大倉発 7:42
塔ノ岳山頂着 10:09
(所要時間) 2時間27分(2.45h)
登攀速度
1,201m/2.45h=490.2m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:40
大倉発 13:10
(所要時間) 2時間30分(2.50h)
下降速度 1,201m/2.50h=480.4m/h
(おわり)
コメントありがとうございました。
どうやら、シロヤシオの頃までには、復帰できそうですね。心待ちにしております。
今日は、東海道五十三次宿場巡りで浜松にきております。ホテルのパソコンから、コメントのお返事を書いております。
またお目にかかれるのを楽しみにしています。