<霧と紅葉>
営業部長がノンビリの丹沢:塔ノ岳(第48回)
(登り単独山行:下りkiyoma氏に同行)
2008年10月22日(水)
■何時ものように出発
天気予報を見ていると今日(10月22日)までは晴れているが,それ以降の天候は下り坂のようである.一昨日(10月20日),歩いて巡る東海道五十三次宿場巡り最終回を終えて帰宅してから,今日はまだ中1日しか空いていないので,山登りをするのは少々億劫な気もするが,昨夜,koyomaさんから「・・丹沢へ登ります・・・」というメールを頂戴しているし,また,今日を逃すと秋雨の日が続くようである.ならば,丹沢へ行くならば今日しかない.私は意を決し,何時ものように,早朝5時10分に家を出発した.
まだ,夜が明けきっていない.寒いと言うほどではないが外気はヒンヤリとしている.でも,私は今日も半袖シャツ一枚で登るつもりでいる.そのために,半袖シャツの上に,極薄でのヤッケを羽織っただけで家を出発する.勿論,リュックの中に防寒具を入れている.
何時もと同じ渋沢7時16分発大倉行2番バスに乗車する.20人足らずの乗客の大半は単独山行の登山客である.顔見知りは一人もいない.
■大倉でヤマカガシさんに会う
7時28分にバス停大倉に到着する.
トイレ脇のベンチに座って,登山の準備を始める.上半身は半袖シャツ1枚になる.そしえ,ズボンの裾を外して,7分丈の長さにする.靴ひもを結んで,ストレッチを開始する.
そのとき,私の直ぐ隣に,例のヤマカガシさんと目線が合う.
「・・・おや,今日は,久しぶりですね」
と互いに挨拶する.
今日のヤマカガシさんは,何時もよりも大分遅く大倉へ到着したようである.バスではなく自家用車で来られている.
ヤマカガシさんは,私より一足早く,そそくさと大倉を出発する.
■雲が低く垂れ込んでいる
7時38分に大倉を歩き出す.
歩き出しの体調は今ひとつ.どうやら,一昨日までの延べ3日間の長距離歩行の疲れが,まだ,少し残っているようである.
天気予報では晴の筈だが,雨雲のような薄暗い雲が低く垂れかかっている.足元は幾分濡れているようだが,まあまあの状態である.気温が何度か分からないが,少しヒンヤリとしていて心地よい.これならば,多少,歩行ピッチを上げても,汗をかかずに済みそうである.
多少速めのピッチで登り始める.そして程なく杉林に囲まれた登山道に入る.同じバスに乗り合わせた登山客,数名を挨拶しながら追い抜く.
<山麓で始まった紅葉>
■ユックリペースの男性
8時12分に見晴茶屋を通過する.この辺りで同じバスに乗り合わせた大半の登山客の先頭に出る.でも,ヤマカガシ氏には追いつけない.ヒンヤリとした朝の空気が心地よい.
見晴茶屋を過ぎて,直ぐに急坂になる.前方の坂を見上げると,霧の中を2人の登山客がユックリと登っているのがボンヤリと見えている.特にこの2人を追い抜くつもりはないが,何時もの速度で登っている内に,だんだんと距離が縮まってくる.
階段路が終わって,紅葉坂に差し掛かる.前方に見えている中年男性との間がだんだんと狭くなる.なるべくマイペースで歩きたい私にとって,こういう合間が一番苦手である.どうしても,追い越す瞬間に気が引けてくるのである.暫くの間,ためらいながら男性から5メートルほど離れたところを並行して歩いているが堪らなくなって,
「スミマセン・・・」
と挨拶して追い抜く.
「どうぞ,どうぞ・・・私はもう65才の年寄りですから,ユックリ登りますよ・・・」
と,この男性が言う.私はどう返事をして良いか分からないので,
「では,スミマセンが先に行かせて貰います」
と言いながら,男性の先へ出る.
■話好きな女性
今度は,この男性と先ほどまで話していたような気がする女性に追いつく.女性は,私のTシャツの胸元にプリントしてあるオコジョを見て,
「可愛いプリントですね・・・どこで手に入れたんですか?」
と聞いてくる.実は,今日着ているTシャツは,白馬山荘で着替えのために購入したダクロン製の山シャツである.白馬山荘で販売しているシャツには左の胸元に2匹のオコジョがプリントされている.
これが切っ掛けになって,女性が次から次へと話しかけてくる.
この女性は,塔ノ岳に登るのは今回が初めて,世田谷に住んでいるが,四国出身で,最近,山を始めた・・・今日は晴の筈なのに曇っているだけでなく,雷が鳴っている(富士山裾野での自衛隊の射撃演習の音を雷と間違えている),・・・等々,次から次へと切りがない.
私は,暫くの間,お付き合いしながら,ユックリと登っていたが,途中でたまらなくなり,先に参りますと挨拶して前に出る.それでも,間が5メートル以上離れるまで,後から話しかけてくる.
■濃い霧に覆われた堀山
8時41分に駒止茶屋を通過する.大倉を歩き出してから1時間03分経過している.世田谷の女性と付き合っていたために,2~3分余計に時間が掛かっているようである.このままだと,2時間20分台後半になってしまう.あえて急ぐ必要もないが,ややピッチを上げて歩き続ける.
堀山の尾根歩きになる.辺りは濃い霧に覆われていて,全く視界が利かない.それでも,定点観測の場所と決めている所で,雲ばかりの写真をデジカメに収める.
8時56分に堀山ノ家を通過する.この分だと,9時55分頃には塔ノ岳山頂に到着できるなと予想する.
<濃い霧で視界が利かない:本当はここから富士山が見えるのだが・・・>
■萱場平
晴れていれば素晴らしい富士山が眺められる小草平だが,今日は何も見えない.ベンチにも誰も居ない.私はそのまま戸沢分岐に続く急坂を登り始める.
9時14分,萱場平を通過する.やや遅れ気味である.今日の萱場平は濃い霧に覆われていて何となく侘びしい雰囲気を醸し出している.切りのベンチで1人の男性が休憩を取っている.
男性に軽く挨拶をして通過する.そして,霧の階段路を登り続ける.
<今日の萱場平:足元がやや滑る>
■ご常連のYさん
9時20分,ご常連のYさんが,霧の中から突然下山してくる.何時もならば,駒止茶屋付近ですれ違うのに,今日は随分遅いようである.Yさんに話しかけようと思っている間に,ドンドンと下へ下ってしまう.
<Yさんが疾走する>
■ご常連のMさんと立ち話
霧の階段を登り続ける.この辺りで何時も修行僧とすれ違っていたが,500日の行を終えた修行僧はもう丹沢へ登ってこない.ご常連だった修行僧と会えないのは,何だか張り合いがなく,寂しい気分になる.
9時34分,花立山荘を通過する.今日はどうも調子が今ひとつである.
この辺りで,ご常連のTさんとすれ違う筈だが,今日はTさんの姿が見えない.少々拍子抜けの気分になる.
引き続き,霧の花立場を通りすぎて,馬の背に差し掛かる.前方からご常連のMさんが下山してくる.
「やあ,今日は・・・この前は,待っていたのに,なかなか下山してこなかったね.尊仏に寄っていたの・・?」
とMさんが話しかけてくる.
「スミマセン・・・先日は尊仏山荘で40分ほど雑談していました・・・」
「・・・で,今日も山荘に寄るの・・?」
「はい・・その積もりです.大倉12時52分のバスに間に合うように下山するつもりです」
こんなやり取りを,Mさんとしている内に,瞬く間に数分のロスタイムが生じる.
9時48分,やっと金冷シノ平を通過する.これはダメだ.でも,仕方がない.そのまま登り続けて,10時01分,塔ノ岳山頂に到着する.
今日の大倉から塔ノ岳山頂までの所要時間は2時間23分.この時期にしては,随分と遅い.でも,世田谷の女性やMさんとの雑談時間合計約5分を差し引けば,実質,2時間18分程度と思われる.不本意ながら,この辺りが今日の体調だろうと推測する.
<深い霧の塔ノ岳山頂>
■尊仏山荘
山頂も濃い霧に覆われていて,何も見えない.それに寒い.霧で良く見えないが,2~3人の登山客が休憩を取っているようである.
一息入れてから尊仏山荘に入る.番台に小屋番のOさんと営業部長が並んで座っている.ネコの前ではチャンピョンが日誌をしたためている.まずは営業部長のご機嫌を伺ってから,数枚の写真をデジカメに収める.Oさんが居ると,営業部長は,実にゆったりとしている.これが実に良い.営業部長に会えると,心が和む.
1番バスで登られたkiyomaさんと,ヤマカガシさんが,席に座っている.お二人とも,到着してから,大分,時間が経っているようである.ヤマカガシさんに,山頂までの所要時間を伺った所,2時間25分程度とのこと.私とほぼ同じである.
今日,10時現在の山頂の気温は+9.3℃.
私は持参した浅間山紅葉の写真を,お二人に見て貰う.
<ご機嫌な営業部長> <山麓にも秋が訪れ始める>
■少しずつ紅葉が始まった
10時36分,尊仏山荘を出て下山を開始する.下山はkiyomaさんとご一緒する.
山頂は相変わらず濃い霧に覆われている.やや寒いので,多少速めのピッチで下り始める.途中,次々に登ってくる登山客とすれ違う.
山旅スクール生とすれ違うことが多いが,今日はスクール関係者と全く合わないまま下山し続ける.
途中,紅葉の進み具合をチェックするために,定点で写真を撮る.
登山道から眺めると,向かいの山の斜面が,少しずつ紅葉し始めている.もう綺麗に紅葉している木もあるが,全体としては,紅葉の見頃は未だ先のようである.
バスの時間に合わせて,途中からユックリと下山して,12時39分,大倉に到着する. 私達より数分遅れて,ヤマカガシさんも大倉に到着する.
■東海道五十三次宿場巡りのAさん
予定通りに,12時52分のバスに乗車する.
渋沢で13時03分発新宿行急行電車に飛び乗る.
「ヤレ,ヤレ・・,間に合った・・・!」
kiyomaさんと並んで,適当な座席に座る.
ふと,前の座席を見ると,つい一昨日まで,一緒に「東海道五十三次宿場巡りの旅」を楽しんでいたA氏夫妻が座っている.
「ありゃ~,偶然ですね」
A氏は,京都に2泊延長して,京都市内の見物を続けていたという.再会を約して,海老名駅でお別れする.
偶然というか,縁(えにし)とは,不思議なものである.
[ラップタイム]
7:38 歩き出し
7:42 登山口
7:50 丹沢ベース
7:57 観音茶屋
8:01 分岐
8:10 雑事場ノ平
8:12 見晴茶屋
8:27 一本松(世田谷の女性に話し込まれる)
8:41 駒止茶屋
9:49 堀山
8:55 堀山ノ家
9:12 戸沢分岐
9:14 萱場平
9:34 花立山荘
9:48 金冷シ(Mさんに話しかけられる)
10:01 塔ノ岳山頂 着
=============================================
10:36 塔ノ岳山頂 発(+9.3℃)
10:46 金冷シ
10:56 花立山荘
11:11 萱場平
11:13 戸沢分岐
11:25 堀山ノ家
11:33 堀山
11:41 駒止茶屋
11:53 一本松
12:05 見晴茶屋
12:07 雑事場ノ平
12:15 分岐
12:18 観音茶屋
12:24 丹沢ベース
12:33 登山口
12:39 大倉 着
[山行記録]
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 7.0km(片道)
■登攀所要時間
大倉発 7:38
塔ノ岳山頂着 10:01
(所要時間) 2時間23分(2.38h)
登攀速度 1,201m/2.38h=504.6m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:36
大倉着 12:39
(所要時間) 2時間03分(2.05h)
下降速度
1,201m/2.05h=585.9m/h
(おわり)
前回の記事
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