<初夏の緑陰:大倉尾根山麓>
沢山のご常連と会った丹沢塔ノ岳
(今年度28回目)
(単独山行)
2008年6月10日(火) 曇
■梅雨の合間に
梅雨時になると,当然のことながら,お天気のことが気になる.雨の日が多い今日この頃,天気予報を見ながら,雨が降りそうもない日があると,それとばかり塔ノ岳に出掛けている.予報では,今日(6月10日)は,数少ない晴れの日である.私は天気予報を信じて,早速塔ノ岳を往復することにした.
例によって,藤沢で小田急に乗り換えて,渋沢へ向かう.車窓から大山が見えてくる.スッキリと晴れ渡っている訳ではないが,山頂がクッキリと見えている.ニノ塔,三ノ塔に続く表尾根も見渡しても,全く雲が掛かっていない.久々に綺麗な富士山が見えるかなと期待する.
■体調は上々
何時ものように渋沢発7時17分の2番バスに乗車する.座席がほぼ埋まるほどの乗客が乗っている.ごく数名を除くと,全員が塔ノ岳を目指す登山客のようである.バスの中にはご常連の顔は見えないようである.
大倉バス停を,7時40分に歩き出す.道路は意外に乾いている.昨日の予報では夜中にかなりの降水があると言っていたので,今日はドロドロ道を覚悟して来たのに拍子抜けする.そうは言っても,もちろん乾いた登山道は大歓迎である.
歩き出してみると,足元が意外に軽い.どうやら,今日の体調は上々のようである.体調が良いと,気分も高揚し,気分がよい.私は上機嫌で辺りの風景を楽しみながら登り続ける.そして,申し訳ないが,ユックリ歩いている方々を追い抜かさせていただく.
■地元の方に話しかけられる
まもなく雑事場ノ平に近付く頃,前方にリュックは背負わずにペットボトルだけをぶら下げた中年のご婦人が歩いている.8時10分に雑事場ノ平に到着する.このご婦人も,私とほぼ同時に到着する.そして私に,
「何時も塔ノ岳へ登っているんですか・・・?」
と質問する.私がビックリしていると,
「前にもお見かけしましたよ・・・」
言われてみれば,確かに以前お見かけした方である.これを切っ掛けにして,暫くの間,雑談をする.この方は,近くに住んで居られて,ときどきこの辺りを散策されているようである.
■ご常連が頑張っている
8時13分,雑事場ノ平を出発する.そして,見晴茶屋を通過して,一本松手前の急坂に差し掛かる.会談が終わって,両側にモミジが植林されているガレ坂で,前を歩いている高年の二人連れに追いつく.お二人は,私が乗ったバスより30分早く渋沢を出発する1番バスで来たという.このお二人も,以前見掛けたような気がする.
「私達はとても遅いけれども,こうして登れるだけでも幸せですよ」
と実感を込めて言っている.確かにその通りである.私も同感.
考えてみれば,私が幾ら体調に合わせて,自重しながら登っていると言っても,やっぱり山頂まで到着する時間が気になる.速く登れれば嬉しいし,遅くなると悔しい.今日の私は体調が良いので,このまま無理をしないで登っていれば,多分,2時間20分台,あるいはヒョッとしたら2時間10分台で山頂に到着できるだろう.そうなれば嬉しいし,逆に2時間30分をオーバーすればガッカリするだろう.
でも,考えてみれば,仮に2時間30分掛かったとしても,どうしても3時間を切れない人から見れば,とんでもなく羨ましい時間だろうし,平素,2時間前後で登っている肩から見れば,何とも遅いなということになる.まあ,所要時間なんて,所詮,そんなものなのだ・・・とはいえ,やっぱり気になって仕方がない.大切なことは,元気で登れると言うことだ.私は,改めて,本当の充実感とは何かが分かったような気分になる.
■尊仏山荘のOさん
8時43分,駒止茶屋を通過する.途中,雑談で数分のロス時間があったが,大倉を出発してから,1時間03分で駒止茶屋に到着である.実質には1時間を切っている.今日の体調は確かに良さそうである.これは嬉しいことである.
駒止茶屋から,ほんの少し石を敷き詰めた階段を登るとベンチがある.このベンチに差し掛かると,いきなり,誰かが,
「flower-hillさん・・・」
と私を呼び止める.
誰かなと一瞬戸惑うが,尊仏山荘の小屋番,Oさんである.Oさんは表尾根の方にレンズを向けて,盛んに写真を撮っている.
「Oさんが居ないと,今頃,尊仏山荘の営業部長は寂しがっているだろうな・・」
と余計な心配をする.
近くのベンチで,Oさんのお相手をしているご常連の男性が座っている.この方の名前は知らないが,昔の漫画「フクちゃん」に出てくる荒熊さんのような威風堂々の方である.一言,二言挨拶を交わす.
「2番バスですか・・・?」
と私に質問する.Oさん達は1番バスで来られたようである.
「・・・2番バスには何人ぐらい乗っていましたか」
という定番の質問が,Oさんからある.
<今日の萱場平:定点観測>
■靄の中の富士山
8時47分,荒熊さんを先頭に,ベンチを出発する.荒熊さんは半ズボンを履いている.後ろから見ていると,荒熊さんのガッチリした足がとても魅力的である.
私は荒熊さんに挨拶をして,先に急がせて貰う.トップギヤー型の私は,この辺りの水平道は,速度を上げて歩きたかったからである.
やがて,定番の富士山観測点を通過する.辺り一面にこの時期特有の靄が掛かっていて,茫洋としているが,山麓まで残雪で真っ白な富士山が見えている.
9時丁度に堀山ノ家を通過する.小草平の片隅から,大きな杉の間に,富士山が見えている.
急なガレ場に差し掛かる.今日は体調が良いので,気分良く登れる.もう少し速度を上げることもできるが,余裕を持って登るのに快感があるので,そのままの速度を保ちながら登り続ける.すると,全く疲れが蓄積してこない.これがまた快感であり嬉しいことでもある.
9時19分,萱場平を通過する.路面は意外に乾いている.昨日,雨が降ったのだろうかと疑いたくなる.
念のために定点観測の写真を撮る.
<小草平からの富士山>
■若い人の集団と会う
ここから花立山荘まで,まだ長い登り坂が続く.今日の私は快調に登り続けることができる.嬉しい.途中で,何時もの修行僧とすれ違う.
花立山荘の100メートルほど手前の階段で,立ち止まっている数名の若い人達のグループに会う.会社の仲間達だという.大分「ヘタって」いるようである.1人を除いて,全員初めての塔ノ岳登山だという.
「もうチョット登ると,花立山荘ですよ.そこまで登れば山頂も間近・・ベンチもありますよ」
と激励する.
花立山荘前の広場で,若い人のグループに,プロフィールマップを見せながら,
「山頂は,もうすぐそこ・・・頑張って」
と励ます.
山で若い人に会うと,本当の気分が良くなる.
9時19分に花立場を通過する.残念ながら,雲が立ち込めていて,南アルプスだけでなく,富士山も雲の中である.
9時54分に金冷シを通過する.いつの間にか,私の前後に,登山者は誰も居なくなっている.今日は体調がよいので,もう山頂に到着かという気分である.
10時07分,塔ノ岳山頂に到着する.大倉からの所要時間は2時間27分.決して速いタイムではないが,途中で,合計10分余りのロス時間があったことや,山頂へ到着したときの余力を勘案すると,まあ満足できる結果だろう.
山頂は薄い霧に覆われている.谷間から雲が沸き上がっていて,視界は余り良くない.山頂は無風に近い状態なので,日射しは弱いものの寒くはない.先客が2人ほどベンチに座って休憩を取っている.
<名残のミツバツツジ:花立場付近>
<花立場からの塔ノ岳>
■尊仏山荘
山頂付近の景色をデジカメに収めながら,辺りを一回りする.
尊仏山荘の方に目を遣る.山荘オーナーのHさんが,山荘の窓ガラス越しに私を見付けて,会釈する.私はもう少し辺りを散策してから山荘に入ろうかと思っていたが,この会釈を受けたので,そのまま山荘に入る.私が何も注文しない内に,定番の,お茶が出てくる.
早速,山荘の寒暖計を覗く.10時一寸過ぎの山頂の外気温は+15.8℃.やはり,今日の気温は,かなり高いようである..
先客が2人居る.お一人はご常連のカメラマン,M氏である.もうお一人の男性は,ご常連らしいが,私には見覚えのない方である.小屋番のHさんが,
「flower-hillさん,土曜日も来ていましたよね・・」
と私に話しかける.それを切っ掛けにして,暫くの間,Mさんを交えて,雑談が続く. どこからともなく,営業部長がノソノソと出てくる.営業部長を「ネコっ可愛がり」するOさんが居ないので,営業部長も寂しそうである.
暫くして,Mさんはカメラを抱えて,撮影に出掛けてしまう.
Hさんが,思い出したように,私に,
「・・・そうそう,そういえば,先日,flower-hillさんの山友達の方が,
『トドさんの登場です』
と言いながら,来られましたよ・・・」
と報告する.お話によると大分盛り上がったようである.どうやら,我が山旅スクールの名士,トド様も,尊仏山荘の有名人になったようである.ご常連として,認知されたらしい.まことに目出度いことである.
暫くして,中年の女性が山荘に入ってくる.ご常連らしい.話を始めると,どうやら私と同じ2番バスに乗っていたようである.登山の途中で,私が追い越したようだが,いつ追い越したか覚えていない.
<今日の営業部長>
■名残のミツバツツジ
営業部長が小屋の外へ出たいらしくて,入口付近で中腰になって立っている.私もそろそろ下山しようかと思う.できれば,ノンビリと下山して,大倉発13時22分のバスに乗りたい.そうすれば,電車の乗り継ぎが,とても円滑で,遅くても,15時半頃には家に帰れる.
10時55分,山荘を出発する.私が山荘入口の扉を開けると,私より早く営業部長が外へ出る.
私は,時間を計りながら,ノンビリと下り続ける.
11時05分に金冷シを通過する.馬の背付近で,名残のミツバツツジが咲いている.ミツバツツジや周辺の写真を撮りながら,花立場に差し掛かる.その時,前方から登ってきたOさん,荒熊さんとすれ違う.
「やっと,ここまで来ましたよ・・・」
とOさんが言う.
11時20分,花立山荘を通過する.山荘前のベンチは休憩を取る登山客で一杯である.山旅スクールの関係者は居ないかなと思いながら見回すが誰も居ない.そういえば,この所,スケルトンさんも見掛けないようである.
<岩の間で可憐な花が咲いている>
■頑張る後期高齢者
次から次へと登ってくる登山客と擦れ違いながら,長い階段を下り続ける.
ガレ場で黄色い花の写真を撮る.正確な花の名前は,ジャイアンさんにでも聞かないと分からない.
11時36分,萱場平を通過する.戸沢分岐を過ぎて,再び長い階段を下り続けて,ガレ場になる.ガレ場を下って,もう少しで堀山ノ家に到着する頃,登山道の片隅で座り込んでいる2人連れの老人に会う.お一人が,
「もう下りてこられたんですか・・? 何時頃登られたんですか?」
と,私に話しかけられる.
「今朝,7時40分に大倉から登り始めました.山頂の小屋で,50分ほど休憩してから,下りてきました」
「その日の内に,下りられるんですか.凄いですね・・・私はもうダメだ.山頂は,まだまだでしょう?」
私はプロフィールマップをお見せしながら,まだ,山頂までは,大分ある・・・あまりこまめに休まずに,ユックリ登られた方が良いですよ・・と,お節介な注意をする.
伺うと,お一人は後期高齢者である.
「俺は,血圧が高いからダメか・・」
と頻りに弱音を吐く.
私も塔ノ岳を登り始めた頃は,大倉から山頂まで,4時間半も掛かっていたが,歩いている内に,2時間半程度で登れるようになったと体験談を話す.すると,勇気づけられたと感謝する.私にとっても,元気な老人が増えることが何よりも嬉しい.
■予定通り下山
その後,順調に下山を続けて,予定通り,13時11分,バス停大倉到着する.
大倉13時22分発のバスに乗車.渋沢から相模大野で快速急行に乗り換えて藤沢へ,さらに特別快速湘南新宿ラインに乗り換えて大船へ.予定通り,15時30分に帰宅.
何となく,体力が余っている.気分がよい.
[ラップタイム]
7:40 大倉歩き出し
7:58 観音茶屋
8:02 分岐
8:10 雑事場ノ平(8:13までご常連と雑談)
8:15 見晴茶屋
8:30 一本松
8:43 駒止茶屋(8:47までOさんと雑談)
8:53 堀山
9:00 堀山ノ家
9:17 戸沢分岐
9:19 萱場平
9:39 花立山荘(9:41まで若手グループと雑談)
9:54 金冷シ
10:07 塔ノ岳山頂 着
===========================================
10:55 塔ノ岳山頂 発(+15.8℃)
11:05 金冷シ
11:12 花立山荘
11:20 萱場平
11:36 戸沢分岐
11:59 堀山ノ家(途中5分ほど雑談)
12:06 堀山
12:14 駒止茶屋
12:27 一本松
12:39 見晴茶屋
12:40 雑事場ノ平
12:52 観音茶屋
12:58 丹沢ベース
13:05 登山口
13:11 大倉 着
[山行記録]
■登攀・下降高度 1201m
■水平移動距離 6.5km
■登攀所要時間
大倉発 7:40
塔ノ岳山頂着 10:07
(所要時間) 2時間27分(2.45h)
登攀速度 1,201m/2.45h=490.2m/h
■下降所要時間
塔ノ岳山頂発 10:55
大倉着 13:11
(所要時間) 2時間16分(2.27h)
下降速度 1,201m/2.27h=529.1m/h
(おわり)
後の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/de3a7ffe3b1ca44222dcbfc709f26717
前の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/6857505d120b7975fe2f1e91d4e91976
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