<霧の中の白い花>
梅雨の合間,熱中症を気にしながら登る丹沢;塔ノ岳(今年29回目)
(上り単独・下り常連と一緒)
2014年6月10日(火) 曇一時霧雨一時晴
■天気予報を見て急遽丹沢へ
とうとう梅雨に入ってしまった.その途端に,来る日も来る日も雨ばかり.イクラ山好きの私でも,朝から雨が降っている日にわざわざ山に出掛ける気にはなれない.そんなわけで,毎週,水曜日,土曜日の2回,塔ノ岳に出掛けるようにしている私だが,先週の土曜日は雨に嫌気がさしてサボってしまった.
本来ならば明日(6月11日)が塔ノ岳に登る日になるが,天気予報はまたもや雨.それにひきかえ,今日(6月10日)の塔ノ岳山頂は8時から12時までは晴,午後は曇という予報である.毎月,300円也の料金を支払っている山専門の天気予報なので信じることにしよう…という訳で,急遽,火曜日の今日,塔ノ岳に出掛けることにする.先週水曜日に塔ノ岳に登ってから約1週間のご無沙汰である.多分,今日は身体が重くて登るのが大変だろうなと予想する.
4時10分に家を出る.外はドンヨリと曇っていて,辺り一面に濃い霧が掛かっている.まだ朝が早いというのに,近くの公園からはホトトギスの啼き声が聞こえてくる.
大船発5時10分熱海行初電は浜駅近くの2箇所の踏切で置き石があったとかで,安全確認のために17分遅延する.その影響で,小田原で小田急電鉄への乗換も,何時もより1本遅い電車になる.
車窓からの富士山の眺めを楽しみにしていたが,富士山はおろか近くにある矢倉岳も低く垂れ込めた雲に遮られて全く見えない.
渋沢駅でバス乗り場へ.バス乗り場では常連のYUさん,NGさん,HMさんがバス待ちしながら雑談をしている.天候が思わしくないので,1番バスの乗客は,何時もよりかなり少ない.後から到着した常連のTGさん,YDさんが加わって,乗客の過半数は常連である.
■たちまちの内に常連のビリッカス
何時もより少し早い7時03分に,大倉から歩き出す.常連の殆ど全員がほぼ同じ時間に前後して歩き出す.
足許は降り続いた雨のためにベタベタに濡れている.
案の定,歩き出してすぐに身体が重いことに気が付く.それに湿度がベラボーに高くて,とてもではないが,何時もの速度では登れないなと気が付く.
「どうぞお先に…私はユックリ登ります…」
と同行の方に促す.
歩き出してから,ほんの1分も経たないうちに,TGさんの後ろ姿が私からドンドン遠のいていく.たちまちの内に私の一人旅になる.
登山口手前の民家の庭先に沢山のアジサイが植えられている.まだ見頃になるまでには数日かかりそうだが,今からが楽しみである.
<登山口入り口付近のアジサイ>
■霧深い登山道
登山道に入る.
相変わらず辺りには深い霧が掛かっている.そして路面はビショビショである.
“そろそろ山ヒルに気をつけなければ…”
と思いながら,重い身体を引きずるようにして登り続ける.
目の前には杉林が広がっている.何時もならば何気なく通過してしまうところだが,今朝は霧が掛かっている.奥の方にある杉が霧のために霞んで見える.これが何とも美しいので,立ち止まって写真を撮る.
“この風景…いつか水彩画にしなければ…”
<杉林に霧が掛かる>
■見晴階段
とにかく蒸し暑い.イヤになるほどの湿気が身体に纏わり付く.こうなると熱射病になるのが何よりも怖い.私は大げさに言うと,熱射病を恐れて,ノソノソ歩きしかできなくなる.それでも,体中からジワジワと汗が吹き出てくる.
7時27分,観音茶屋を通過する.身体に纏わり付いているベトベトな空気が微風に乗って幾分動く,その途端に,ほんの一寸だけ涼しくなったような気がする.
7時45分,やっと見晴茶屋を通過する.大倉を出発してから,もう42分も経過している.
“今日は超スローだな…”
と思うが,身体が言うことを聞かない.
間もなく見晴階段に差し掛かる.例によって定点観測の写真を撮る.階段の遙か上の方に,つい先ほど私を追い越して行ったYDさんの後ろ姿が小さく見えている.YDさんの前にはTGさん,YUさんが居られるはずだが,もう私の視界が届かないほど先を歩いておられる.
<見晴階段>
■霧の一本松
モミジ坂を登り切る.
8時04分にやっと一本松を通過する.大倉を歩き出してから,もう1時間を経過している.
霧が一層深くなる.どうやら,私は雲の中を歩いているようである.私の前後には全く人の気配はない.私の廻りには静けさと霧だけがある.なかなか幻想的で素晴らしい雰囲気である.私は両手をグルグル回しながら深呼吸を繰り返す.
霧の中,駒止階段に差し掛かる.この階段,正直なところ,実にシンドイ.幸いなことに私の前後には人が居ないので,追い越したり,追い越されたりがないので,惑わされることなしに極々ユックリと登り続ける.
8時20分,ようやく駒止茶屋に到着する.大倉からの所要時間は1時間17分.蒸し暑さと身体が重いことにより,何時もより10分ほど余計に時間が掛かっている.
<霧の尾根道>
■堀山の尾根道から小草平へ
駒止茶屋を過ぎて堀山の尾根道に差し掛かる.ここまで登ると,さすがに蒸し暑さはなくなる,また,身体の方も何時のまにか軽く感じられるようになっている.
例によって富士山が良く見えるはずの場所で,見えない富士山の写真を撮る.自分でも,
“何で見えない富士山を撮るなんて馬鹿なことをやっているの…”
と呆れている.
9時40分,小草平に到着する.堀山の家のベンチがグッショリと濡れている.辺りには全く人の気配はない.
小草平に差し掛かる頃,霧雨が降り出す.天気予報では8時頃から12時頃までは晴の予報だったのに…
“雨か…適当なところで下山しちゃおうかな”
と軟弱な気持ちが芽生える.でも,まあ,折角,電車賃を掛けて出てきたんだから,もう少し登って見よう.
大倉から小草平までの所要時間は1時間37分.情けないほどの遅速だが,歳だから仕方がないかと自分を慰める.
<堀山の尾根道で見えない富士山の写真を撮る>
■萱場平
雨の中,萱場平までの急坂に差し掛かる.相変わらす霧雨が降り続く.ただ雨合羽を引っ張り出して着込むほどの降りではない.
ガレ場の岩礫が滑りやすいので,一歩一歩注意して登るように,絶えず自分に言い聞かせながら登り続ける.ただ,標高が高くなるにつれて気温が下がってくるので,随分と歩き易くなる.
流れるような汗をかかないように細心の注意をしているが,霧雨のために衣服が濡れるので,汗で濡れているのか霧雨で濡れているのか自分でも良く分からなくなる.
9時02分,漸く萱場平に到着する.小草平からの所要時間は14分.ここだけのラップはそれほど悪くはない.
ここで定点観測の写真を撮る.
相変わらす霧雨が降っている.ベンチに座っている人は誰も居ない.萱場平は静まり返っている.木道の間に繁茂するアザミが元気に大きくなっているのを眺めながら,萱場平を通過する.
<萱場平>
■花立山荘
萱場平から続く階段道を登り続けている内に,何時の間にか,霧雨が止んでいる.それと同時にまた幾分蒸し暑さを感じるようになる.
誰にも追い越されず,誰も追い抜かないまま,全くのマイペースで登り続けて,9時17分にようやく後7分坂の下に到着する.ここでも見えない富士山の写真を撮ってから,後7分坂を登り始める.
これまでユックリペースで登ってきたので,体力に余力が出始めたのか,ピッタリ7分で坂道を登り切って,9時24分に花立山荘に到着する.
“これで,10時前には塔ノ岳山頂に間違いなく打擲できるな…”
と確信する.それと同時に少し気が抜けてくる.
山荘前のベンチでは数名の登山者が休憩を取っている.
相変わらず霧が深くて富士山は全く見えないが,やっぱりここで写真を撮らないと気分が悪いので,見えない富士山の写真を撮る.
どこからともなくツツドリとホトトギスの啼き声が聞こえてくる.
大倉から花立山荘までの所要時間は,2時間21分,いくら何でも遅すぎる!!! でも,まあ,小草平からの所要時間は44分.こちらは今日の蒸し暑さを勘案すれば,まあこんなものか.このことから,今日は,蒸し暑い山麓を登る間に多大な時間を要したことが良く分かる.
<花立山荘>
■花立山
花立山に向かう.
どうやら雲の上に近付いたらしく,辺りの景色がだんだんと見えるようになる.霧の間から深緑の鍋割山稜が見え始める.何とも美しい風景である.
“是非,水彩画にしたいな…”
と思いながら,この風景を目に焼き付ける.それと同時に沢山の写真を撮る.そんなことをしている内に瞬く間に余計な時間が掛かってしまい,花立山荘を通過してから11分後の9時35分に花立山を通過する.
写真を撮りながら馬の背に差し掛かる.後ろから迫ってくる人の気配に気が付く.2番バスで来られたMGさんである.私より30分も遅く大倉を出発したのに,もう追い付かれてしまう.
「私,写真を撮りながら登りますので,どうぞお先に…」
ということで,MGさんを見送る.
“そんな格好いい言い訳をするな…全速力で登ってもMGさんには付いていけないことが分かっているのに…”
と,またもや私の体内に巣喰っているもう一人の私が嫌みを言う.
“オマエには言われたくないよ…そんなこと先刻分かっているよ…”
9時41分,金冷シを通過する.
<花立山付近から鍋割山稜を望む>
■塔ノ岳山頂
金冷シから先は,写真を撮りたいなと思うところもそれほどないので,少しずつ遠のくNGさんの後ろ姿を見ながら,真面目に登り続ける.
金冷シから最初の階段を半分ぐらい登ったところで,下山してくるTGさんとすれ違う.さらに,塔ノ岳山頂直下の階段で,下山してくるYDさん,HMさんとすれ違う.
9時55分,ようやく塔ノ岳山頂に到着する.私より先に山頂に到着したMGさんがまだ山頂に居られる.山頂の気温は+15℃.山頂は涼しくて気持ちが良い.
大倉からの所要時間は2時間52分.かろうじて3時間を切ったものの何とも不甲斐ない記録だが,
”まあ,こんなもの…これが現実だよ…”
と自分に言い聞かせる.
山頂でMGさんとたまたま顔をあわせた若い女性と雑談をしている内に,尊仏山荘に立ち寄る気がしなくなる.
しばらくして,MGさんが先に下山するとのことで,10時頃塔ノ岳から下山し始める.
<塔ノ岳山頂>
■山頂からの眺望
暫くの間,山頂からの眺望を楽しむ.ちぎれ雲がユックリと流れている.雲の間から丹沢の山々が見えている.晴れた日の山頂からの風景は正に絶景だが,こうして見ていると,霧が流れる風景も,また絶景である.
“やっぱり,山の風景はいつ見ても綺麗だな…”
余談になるが…
昨日(6月9日),所用があって同居人と一緒に千葉の親戚を訪れた.そのときに,
「何でどうせすぐ下ってくるのに山になんか登るの…気がしれない」
と異口同音に言われてしまった.私は心の中で,
“この哀れな群衆よ…お前達は山の美しさ,見事さを知らない愚か者よ…”
と口には出さずに,この者達を哀れんだ.
まあ,それはともかく,10時05分,私も尊仏山荘には立ち寄らずに下山開始.山猫ミャ~君には会わないまま…
<山頂からの眺望>
■慎重に下山
足許が濡れている.濡れている木道,石は滑りやすい.もし転倒したら怪我をしかねない.この年で怪我をしたらジ・エンドだ.独り歩きの気楽さから,ノソノソ,モタモタとした調子で下り続ける.今日は大倉12時22分発のバスに乗車する積もりである.それならば2時間15分程度時間を掛けて下っても十分に間に合う筈だ.そう考えると随分と気楽である.
今日は平日,すれ違う上り客も少ないのも嬉しい.
10時16分,金冷シを通過する.ここで同じバスに乗っていたNGさんとすれ違う.
「えっ…! もう下りですか…速いですね」
と私に話しかける.この足の遅いコンプレックスを持つ私に対して…である.人様々世の中色々である.
…ま,それはともかく,10時29分に花立山荘を通過する.後7分坂とそれに続くガレ場は我ながら実に慎重に下り続ける.
花立山荘と萱場平のほぼ中間点に差し掛かる頃,後ろに人の気配を感じる.振り返ると青いコートを閃かせながら走るバットマンのような方が居られる.
“どなただろう…”
すぐに俊足常連のYUさんが青いポンチョを着て居られるんだと気が付く.
この辺りから,見晴山荘まで,二人で雑談しながら下山し続ける.YUさんは見晴山荘で何かすることがあるというので.ここからは独り歩きだ.でも余り速く歩いても,バス待ちの時間が増えるだけ.時計を眺めながら歩行速度を調整する.
途中,ほんの少しの間,雲間から太陽が顔を出す.
登山口付近で,再びYUさんが私に追い付く.
「バス,12時22分ですよ…」
とYUさんが私に注意する.
■ミスタードーナッツでコーヒー
12時14分,バス停大倉に無事下山する.下山所要時間は2時間09分.こちらの所要時間はほぼ何時もの通りである.
バス停には,私より先に下山し始めたTGさん,MGさん,YDさん,HMさんが居られる.
「あれ~ぇ…1本前のバスに乗られたんじゃないんですか…」
結局,今朝方の1番バスに乗車した常連の内,NGさんを除く全員が,帰りも同じバスに乗車する.奇遇と言えば奇遇である.
これだけ示し合わせたように顔ぶれが揃えば,渋沢駅構内のミスタートーナッツでお茶は当然の帰結である.
私は270円也のホットコーヒーだ.
<渋沢のミスタードーナッツ>
■今日も良かった!
14時05分頃,お茶会がお開きになる.
YDさんと私は下り電車で小田原へ.小田原でYDさんとお別れして,私は14時27分発快速アクティに乗車する.14時56分に大船に到着する.
大船付近では,薄日が射して爽やかな天気である.自宅まで歩いても良いなと思ったが,今日は僅かながら疲労感が残っている.そのため,無理をしないで,バスを利用して,15時30分頃無事帰宅する.
無事塔ノ岳を往復できたので,今日も大満足.良かった! 良かった!
<ラップタイム>
7:03 歩き出し
7:27 観音茶屋
7:45 見晴山荘
8:20 駒止茶屋
8:40 堀山の家
9:24 花立山荘
9:41 金冷シ
9:55 塔ノ岳山頂着(+15.0℃)
10:05 〃 発
10:16 金冷シ
10:29 花立山荘
11:02 堀山の家
11:17 駒止茶屋
11:40 見晴山荘
11:55 観音茶屋
12:14 大倉着
[山行記録]
■水平距離 7.0km(片道)
■累積登攀下降高度 1269m
■登攀所要時間(雑談時間を含む)
大倉 発 7:03
塔ノ岳 着 9:55
(所要時間) 2 時間52分(2.87h)
水平歩行速度 7.0km/2.87h=2.43km/h
登攀速度 1,269m/2.87h=442.2m/h
■下降所要時間(休憩時間を含む)
塔ノ岳 発 10:05
大倉 着 12:14
(所要時間) 2時間09分(2.15h)
水平歩行速度 7.0km/2.15h=3.26km/h
下降速度 1,269m/2.15h=590.2m/h
(おわり)
「丹沢の山旅」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/5a16531a2d2b58c68b3c0c7b4dea9acb
「丹沢の山旅」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/d6d05da23ae6fde5c24497f95c1ab7c1
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