<トレイルリッジロード>
ロッキー山脈紀行(38):第8日目(1):ツンドラの散策路
(アルパインツアー)
2010年8月19日(木)~28日(土)
第8日目:2010年8月26日(木)
<第8日目の行程>
午前,専用車でロッキーマウンテン国立公園へ.北米最高所の舗装道路であるトレイルリッジロードを進む.ベアーレーク周辺で軽ハイキングを楽しんだ後,今夜の宿泊地,デンバーへ向かう.
<峠を越えて>
■定番の朝食
昨夜は,気分が良かったためか熟睡することができた.
6時丁度にモーニングコールの電話が掛かってくる.今日は,2日間連泊したブレッケンリッジを出発して,今日の宿泊地であるデンバーへ移動することになっている.
荷物を纏めて,6時30分に,所定の場所まで,自分でバゲージダウン.序でに7時少し前にロビーで無料サービスのコーヒーを賞味する.いわゆるアメリカンコーヒーである.
そのままレストランで朝食を摂る.トマト,ハムと卵2個のサニーサイドアップ.安心メニューの朝食である.
■峠を越える
8時15分,例によって2台の専用車に分乗して,2日間滞在したザグレートデバイドロッジを出発する.途中まで,昨日グレイズピーク.トレイズピーク登頂のときに通ったルート9を北上する.
その後,何時頃,どこを通っているのか,手許の地図を頼りに車窓を眺め続けるが,粗い地図なので,どうもハッキリしない.ただ,数十分走ったところで,左折してルート40に入る.道路は次第に左右に大きくカーブする谷間の坂道になる.専用車はますます高度を上げる.
9時42分,大きな谷間の峠を越え,今度は下り坂になる.
ここは,地図によると,どうやらベルソウドパス(Belththoud Pass,標高11,325ft.3,448m)と呼ばれる峠らしいが,正しいかどうか分からない.専用車は谷間の道をゆっくりと下り続ける.
■セーフウェイで昼食を購入
9時44分,巨大なマーケットのセーフウェイ(Safeway)に到着する.ここで,今日の昼食,それぞれが自分の好みのものを購入する.このマーケットがどこに位置しているか,手許の地図では良く分からないが,多分,タベマッシュ(Tabemash)という小さな町の近くだろうと想像する.
私のリュックには昨日来の食料がまだ沢山残っているので,改めて食料を購入する必要はない.ただ,炭酸飲料が欲しいので,1.67ドルでスプライトを1本購入する.
■グランディ湖
10時17分,セーフウェイを出発する.暫くの間,ルート40を北上し続ける.
10時30分,グランバイ(Granby)という小さな町で,ルート40から右折してルート34に入る.進路は北東に変わる.
10時39分,進行方向右手(東方向)に大きな湖が見え始める.グランディ湖(Lake Grandy)である.道路はグランディ湖の個半に沿って続いている.個半には別荘風の綺麗な住宅が建っている.ボートや水上スキーの道具などが見え隠れしている.
<アルパインビジターセンター>
■公園入口の看板
10時50分頃,ティンバークリーク(Timber Creek)を通過する.
暫くの間,急勾配の九十九折り道が連続する.10時50分,ロッキーマウンテン国立公園(Rocky Mountain National Park)と大きな字で書かれた看板の前に到着する.専用車を看板の横に駐車して下車.写真を撮りながら,暫時,休憩.
■アルパインビジターセンターに到着
10時55分,再び専用車に乗って出発.この辺りから,トレイルリッジロード(Trail ridge road;尾根伝いの道路)に入る.そして,10時57分,アルパインビジターセンター(Alpine Visitor Center:標高3,595m)に到着する.
■自然環境保護の寄付金ボックス
センターの建物に入る.中は売店になっている.土産物,写真,案内書などが陳列されている.建物の入口付近に,自然環境保護のための寄付金ボックスが置かれている.机の上に透明なプラスチック製の枠が沢山作られている.その枠の一つひとつに国の名前が書かれている.主要なヨーロッパ諸国やカナダ,アメリカに混じって「JAPAN」という枠もある.
勿論,1セントも入っていない国もあるが,多くの国の枠には1ドル札が何枚か入っている.残念ながら「JAPAN」の枠は空っぽ.それを見て,私は何となく義憤を感じて,ポケットから1ドル札を1枚取り出して,「JAPAN」枠に入れる.このとき,心の中では,
「1ドルでも惜しいな・・でも,たった80円余りか.じゃあ,いいや・・」
と邪悪な気持ちが勢いよく駆け巡る.私が1ドル札を入れたのを切っ掛けにして,数名の方が1ドル札を挿入する.これで日本の面目躍如である.
■見渡す限りの焼け跡
11時25分,再び専用車に乗車して,ビジターセンター出発する.なだらかな上り勾配の尾根道が続くが,周囲の風景が一変する.車窓から山火事で焼け落ちた灌木の林が,どこまでも続いている.
専用車を運転しているジョッシュが興味ある話をしてくれる.
「この山火事ですが,今は自然に任せています.なまじ森林を保護すると,根元に燃えやすいものが沢山貯まってしまい,返って大規模な山火事が起こりやすくなります.火事が激しくなると木の根まで焼けてしまい再生不能になってしまいます.だから,自然に任せた方が良いんです・・・」
「なるほど! ガッテン!」
<ロックカット駐車場>
■ロックカット駐車場
途中,道路工事をしていて,交通渋滞になっている.工事現場と思われるところから遙か手前で数珠つなぎの車に阻まれて先に進めなくなる.
日本の常識から考えると,工事現場から随分と離れたところに通行止の標識が立っている.運転席から前を眺めると,交通止めになった車線が,延々と続いていて,工事現場は遙か先,全く見えない.沢山の車が数珠つなぎになったままピクリとも動かない.
「・・・仕方ないな・・ここで車から降りて歩こうか・・」
業を煮やしたツアーリーダが,決断したとき,車列がソロソロと動き出す.下車は中断して,そのまま車内に留まる.その後,ソロリ,ソロリと車は進む.そして飛んでもなく遠いところにある工事現場を通過する.
■車内で昼食
12時33分,漸くロックカット(Rock Cut Garden)駐車場に到着する.ここは標高約3,600メートルの高所である.
駐車場脇の道路に専用車を停めて下車する.そして日当たりの良い路肩に腰掛けて昼食を摂ることにする.前方には4,000メートル級の高山が屏風のように連なっている.素晴らしい景観である.
ところが,少し強い風が吹くと寒くて座っていられない.結局は専用車の中に戻って昼食を摂る.
<ツンドラ散策路>
■散策地図
正確な距離は分からないが,ロックカット駐車場から,ロックカットまで,1キロメートルほどである.往路はなだらかな登り勾配.見晴らしの良い散策路である.
■ツンドラ地帯
昼食後,12時50分,駐車場に隣接するツンドラ散策路入口(Tundra Communities Trailhead)から,ネイトさん先導で,小1時間のトレッキングを開始する.
辺り一面に青いものが少し混じった枯れ草の原野が広がっている.この辺りの土地は,表面から少し掘ると永久凍土のツンドラが広がっているという.要するに寒い所である.トレッキングルートは入口から東北東の方向に伸びている.私達以外にも多くの観光客が散策を楽しんでいる.
散策路の所々に案内板が設置されている.勿論,英語で書いてあるので,イチイチ読むのが煩わしい.そこで手っ取り早く,現地ガイドのネイトさんにあれこれと説明する.
■不凍液を持つ植物
ツンドラにも植物が細々と育っている.ネイトさんが説明する.
「ツンドラで植物が育つのは,この植物が不凍液を持っていて凍らないからです・・」
すかさず,私が,
「・・不凍液って,どんなものですか?」
と質問する.
「さあ,良く分からないですけど・・」
と言いながら,ネイトさんは近くにある説明文を読む.
「この説明文によるとアンソシアニン(anthocyanin)という物質のようです・・・アンソシアニンが何だかは分かりません」
「どうもありがとう・・・日本に帰ってから調べてみます・・」
(注)2010年11月19日現在,まだ調べていない.
■茸岩
13時11分頃,前方に大きな岩塊が一列に並んでいるのが見えてくる.また,進行方向右手(つまり東南東)にも,頭でっかちで奇妙な形をした大きな岩が屹立している.近くに立っている案内板によると,この奇妙な岩は「茸岩(Mushroom Rocks)」というらしい.
■岩塊に登る
13時26分,先ほどから前方に見えていた岩塊に突き当たる.ネイトさんの誘導で,岩塊の上に登る.
「ここがロックカットの名前が付いた岩です・・」
ここから,360度の眺望が楽しめる.岩塊の頂上には360度の眺望を説明する円盤が設置されている.この円盤を見ながら,ネイトさんが周囲の山の説明をしてくれる.
その脇で,もう一人の現地ガイドのジョッシュさんが,大きな食器を抱えている.食器の中から,パンのようなものを千切っては食べ,千切っては食べている.その量は,私の食事の2日分ぐらいに相当するような気がする.
■ロックカットの由来
13時36分,岩から降りる.
降りたところで,ネイトさんが私達に質問する.
「皆さん,ここをどうしてロックカットというか分かりますか.前方を見て下さい.この道は岩と岩の間の狭いところを通っています.さて,この岩と岩の間の狭いところは,どうして出来たんでしょう.
1番,道を作るために掘った,
2番,初めからこんな形をしていた,
さて,どっちでしょう?」
私は,何も苦労してこんな所を掘る必要はあるまい,ほんの一寸,迂回すれば済むことだ・・だから2番と決めつける.案の定,正解は2番だった.私は心の中で,
「バカにするな・・」
と思ったが,彼の生真面目さに免じて,許すことにしよう.
(つづく)
[加除訂正]
2010/11/23 転換ミス訂正
「ロッキー山脈紀行」の前回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/710bd3c69af93356b0ef30d109716f9d
「ロッキー山脈紀行」の次回の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/6f5325ff4ac8aab611ad75424cbc7c80
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また、ロッキー山脈で見られる白い肌のシラカバに似た木は、アスペンというドロヤナギの種類の木です。
http://zmchip.com/Namnp/roc/index.htmlをご参照ください。
コメント,大変有り難うございました.
折角の旅行記ですので,できるだけ正確なものにしたいと,常日頃,思っております.
ご指摘の虫の被害につきましても,現地ガイドから話を聞いておりましたが,私のメモがあやふやだったので,この記事には載せませんでした.
また,私は植物や食べ物のことに,大変疎いので,ご指摘のドロヤナギのことも確かに現地ガイドから説明を受けていましたが,これまたあやふやなことしか分からなかったので,植物の名前は記事には載せませんでした.
ご指摘戴いたことによって,記事の内容が正確になり感謝しています.
なお,この記事の中で取り上げた山火事は事実です.現地の写真が撮れていないので残念ですが,下草も焼けて炭になっているだけでなく,人の背の高さの2~3倍もあろうかという木々も真っ黒な炭になって,累々と続いていました.こんな所が,数分の間,車窓から見えておりました.
山火事があった年や,焼けた面積などの説明もありましたが,上手にメモが取れていなかったので,これも記事から省略しました.火事の詳細は,このシリーズの後ろで記載しましたMountain West社のガイドに問い合わせれば分かるかと思います.
どうやら,沢山の方々が,私の旅行記にアクセスして戴いているようです.これらの方々に正確な情報をお伝えするためにも,これからも何かお気付きの点がありましたら,ご指摘戴きたく,宜しくお願いいたします.
どうも有り難うございました.
http://zmchip.com/Namnp/roc/ro3rd.htmlをご覧下さい。
アメリカの国立公園内では、山火事の原因が落雷など自然現象が主で、そのためもあって特別な場合以外はそのまま自然消火に任せます。
日本ではその原因がタバコなど人為的なものと
国土が狭く人家も近いことなどから積極的に人工で消火します。
度々のコメント,有り難うございます.
お説の通りだと思います.
現地ガイドも同じようなことを言っておりました.
どうも有り難うございました.
なお,山火事をなぜ消さないかについても,以前は消火していたが,それが返って大きな自然破壊を引き起こすので,結局は自然に任せるのが一番良いのだという話を,いくつかの事例を交えて,伺いました.
ただ,私に基礎的な素養がないので,うまくノートが取れませんでした.そのため,このブログでは記述を省略させていただきました.
火を消すスモークジャンパーという命がけの仕事をしている人も居ます。 スティーヴン・スピルバーグ監督、晩年のオードリヘップバーンが出演したオールウエイズという映画はこのスモークジャンパーが主人公です。
お話ついでに、アルパインビジターセンターとしてお載せになっている写真は、グランドレイクから国立公園に入って直ぐのKawuneeche(カウニーチェと発音?)ビジターセンターではないでしょうか。
アルパインビジターセンターはトレイルリッジ道路の真ん中辺にあって標高も3000m以上で樹木限界を超えているので周りに樹木は生えていません。
それにしても、FHさんは日本は言うに及ばず世界中の山にお登りになられていてすばらしく羨ましいかぎりですね。
度々のご指摘有り難うございます.
(1)山火事については,次のような説明を受けました(記憶が多少あやふやですが・・).
自然に任せる理由
■下草が残る
人手で消火すると,かなりの下草が燃えずに残り,次の火事の時に燃えて大火になりやすい
■植物系のバランスが崩れる
焼け残った下草の種子が繁茂して,生態系のバランスが崩れてしまう.
■?
もう一つ何か言っていましたが,思い出せません.
ご指摘のビジターセンターの標高は,地図で調べると3595m.確かに森林限界以上ですね.
ご指摘の通り,私の記事は誤りのようです.
本文訂正は,少々手間が掛かるので,後日にしますが,とりあえずは,頂戴したコメントを読者の皆様にも公開して,訂正したことにさせて戴きます.どうも有り難うございました.
私が“世界中の山”とのご指摘ですが,素人の山登り愛好者が登れる山は知れています.ただ,山の魅力は素晴らしいので体力の続く限り,応分の登山を続ける積もりです.
記事とは直接関係ありませんが、米国の国立公園は、日本と違い土地も連邦政府所有でパークレンジャーは園内では警察権までも持っています。日本は公園を区域指定して法律の網をかける行為規制公園制で、土地の所有者は別者です。
山火事を積極的人為的に消火しないのは、いかに広大な米国といえども国立公園内だけで、木材生産をも主目的にする国有林(連邦有林)、州有林や米国西部に多い連邦土地管理局(BLM)の森林、インディアン保留区、もちろん私有林は、森林資源保護のため山火事は積極的に人為で消火しますし、水害、山崩れなど自然災害にも防除措置を取っています。国有林などには、山奥の森林の山火事監視塔に半年以上1人で登って山火事を監視して山火事を見つけたら直ぐ連絡して消火活動に当たる人たちもおります。
なお、余計なことですが、前にお話ししたことの記事へのリンクを下に記しておきますのでご参考にして下さい。
アルパインビジターセンターのトレイルリッジカフェ
http://zmchip.com/Namnp/roc/3cafe.html
コロラド州のマウンテンビートル(Bark Beetle)の被害地図
http://zmchip.com/Namnp/roc/4bmap.html
アスペン
http://zmchip.com/Namnp/ptmv/ptaspen.html
(お泊まりになったアスペンはこの木の名前に因んで付けられた街のようですね。)
これからも日本や世界の登山やトレッキングをお楽しみ下さい。
さまざまな貴重なご指摘,本当に有り難うございました.
現在,私は五街道宿場廻りの記事の編集に追われていて,このローキー山脈関係の記事の修正までなかなか手が回らない状態ですが,ご指摘戴いた誤り箇所は,近々,必ず手を入れる積もりです.
また,機会がありましたら,是非,フォロー状態をご覧戴きたいと思っています.
ご案内戴きましたトレイルリッジは,確かに見覚えがあります.大変懐かしく思い出しています.
なお,ご紹介戴きました資料の一部を,出典明記の上,引用させて戴きたく,こちらもよろしくお願いいたします.
どうも,いろいろと有り難うございました.
(私の場合は軽いトレッキングだけですが)
http://zmchip.com/Namnp/roc/index.html
どうぞ、資料、記事、写真何でもご自由に引用、お使い下さい。
度々のコメント有り難うございます.
では,後日,記事に手を入れるときに,goostakeさんの記事を山行にさせて戴きます.
私はもっぱら登山と仲間内の記事を優先して処理していますので,こちらの記事に手を入れるのは少々先のことになります.
現在,今年はどこの山へ行くか検討中です.どこか標高4000~5000m級の山へ行きたいなと思っていますが,実現できるかどうか,今のところ定かではありません.
また,機会がありましたら,当ブログへお立ち寄り下さい.
どうも有り難うございました.