竜田川の夕映え(斑鳩)
前回、千早赤阪村の洒落の続きで
我流、古典落語「千早振る」にお付き合い
お願いします。
熊五郎 ”オイ!ハチ公不景気なつらして
いっていどうしたんで”
ハチ公””それがよ、ガキが寺子屋からこんな文を
もらってきやがって、おとっあん、これなんて
書いてあるんだって聞くんだ”
ハチ公””それでよ、知らねえと言う
のも沽券に関わるし、とっあんは今忙しいから
又後でなと言って出てきたわけさ”
熊五郎 ”情けねえ奴だなお前は、ちょっと
俺に見せてみな”
熊五郎 ”なになに、
「ちはぶる神代もきかず竜田川
からくれなゐに 水くくるとは」
ここで物知りと言われている熊五郎、
はたと困りはてたが、知らぬともいえず
熊五郎 ”吉原に有名な花魁千早太夫がおってな、
この太夫に関取りの竜田川がぞっこんほれ込んだってわけだ、
しかし「わちきは相撲取りはいやでありんす」
と振られてしまった。」
ハチ公””ふーん、振られたのか”
熊五郎 ”千早太夫に振られた竜田川は妹の太夫
神代にも言い寄ったがこれが又振られた」
ハチ公””ふーん、ちはぶる神代もきかず竜田川か」
熊五郎 ”失恋した竜田川は郷里に帰り親の跡を
継いで豆腐屋になっていたんだ。
そこえ落ちぶれた千早太夫が女乞食になってやって来て
「せめてオカラでもめんぐんで下さい」と頼んだ。
しかし恋の恨みは恐ろしもんで、オカラもくれてやらなかったんだ。」
ハチ公””ふーん、それがちはぶる神代もきかず竜田川
からくれなゐか。」
熊五郎 ”悲嘆した千早太夫は井戸に身を投げて死んじまったってわけさ。」
ハチ公””なるほど、それがからくれなゐに水くくるとはか。そうか、なるほどな。」
ハチ公””ところで兄い、水くくるとはの「とは」はなんだい?」
そこではたと困った熊五郎
熊五郎 ”そりゃあ、おめえ決まってるじゃねえか
「とは」は千早太夫の本名よ。”
お後が宜しいようで。