マーク・チャンギージー氏によるヒトの視覚と聴覚に関する新しい捉え方。
新しい、といっても「視覚」は2009年「聴覚」は2011年に原著が出ているし、今回取り上げる2冊は文庫本で文庫化するまえのハードカバーの「視覚」は2012年「聴覚」は2013年に出ているから、知っている人にとっては特段新しいわけではないのだろうけれど。
まず『ヒトの目、驚異の進化 -視覚革命が文明を生んだ』。
顔色を読む能力、両目が前側についている/両眼視出来る角度が広いのはなぜか、錯覚が何種類もあるのはなぜか、文字が読めるのはどうしてか、ということについて書いてある。思ってもいないことばかりだった!
文字は自然の模倣なのでヒトの脳が読み取りやすい、というのには驚いた。似ているようには見えないのだけれど、それを示すデータの取り方にもビックリした。研究ってそういう風にするんですね。
それから『〈脳と文明〉の暗号 -言語と音楽、驚異の起源』。
今度は聴覚である。視覚編の文字の捉え方を話し言葉や音楽に応用させた感じ。似ているように聞こえなくても実は似ているんです、というのにはやっぱりピンと来ないのだけれど、それは脳が情報を受け取り解釈するのに何段階かあるうちの低次のところには意識がいかないように脳が出来ているからなんだそうだ。
音楽に対しては自分としてはそれなりに謙虚で真摯な態度をとっているつもりなので、本のカバーの裏表紙にある紹介に「音楽は人間の歩行を模倣している」とあるとスルーできない。わたしは自分が演奏するときにはまずノリというかグルーヴというか聞いていて体が動いてしまうというのを大事にしていたので、我が意を得たりの気分である。焦った演奏は嫌いですけどね。
これらの本の内容は聞いたことのない話ばかりなので、もしかしてトンデモ !? と一瞬疑ってしまったが、どのようなデータを根拠にしているのかという記述を読み進めていくにつれチャンギージー氏の独創性に感心する。
ヒトが己の中の野生をハックして文明を築いていったしたたかさに、もっと風呂敷を広げると、生き物のなんでも利用して生き抜く力に感動する。
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