眉村卓 『消滅の光輪』 ←アマゾンへリンク
この作品は、眉村氏が1976~1978年にSFマガジンに連載した長編で、
最初は早川書房でハードカバー、次に文庫、それからハルキ文庫、そしてこの創元推理文庫から出た。
出てからずいぶん時間も経つし、本の出所が変わる。
長く読み継がれている、ということだ。
この話はSFなのだが、なんというか宙に浮いた感じがない。
ゲームのコマを淡々と一つ一つ動かしていく、というような緩やかなテンポで話が進む。
じりじりしている、とでもいおうか。
しかしそれが冗長だ、ということは決してない。
そういうコマの動き一つ一つが大事で、それはどういう意図なのか、
コマの動きに対するレスポンスによって主人公はまたどのように動かすのか、
そういうところが味わい深い。
上巻では、さあこれから一大事業を始め、またきっちり終わらさなければならない、
という主人公の気負いをこちらも充分に負うことができる。
SFでそのような大事業をリアルに描くことができるのだろうか!?
お手並み拝見、というようなわくわくした気持ちだ。
そうして話が進んで行って下巻になると…、
だめだ、ネタバレを嫌うわたしがそれ以上のことを書くのは許さない。
とにかく面白いから絶対読んでほしい!
とだけ。
こんなんじゃこの記事を読んでもちんぷんかんぷんだしなぁ。
うーん、上巻にもまして下巻が面白い。
きっちり納得させてくれるし、読後感も大変よい。
眉村氏の話の組み立て方、キャラの作り方、これはすごい。
30年経っても読ませてくれるのはそういうところなのだろう。
おススメです。
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この本のように、出どころが変わってまた古いSFを読めるということが最近ままある。
これは古い作品が篩にかけられて、よいものだけが残ってきた、ということなのだと思う。
自分が子供の頃の事情を考えると、SFはしっかり歴史を作ってきたんだなぁ、と感慨深い。
(再相葉月 『星新一 一〇〇一話をつくった人』 でSF文壇の黎明期について読んだから余計に。)
このようにまた出てきたタイトルを見ると、これが知っていても読んでいないものがけっこう多かったりする。
タイトルや惹句を読むとやっぱり今も退いてしまうものも多いのだが、
好き嫌いばかりせず、まあ試しに、くらいの気持ちに読んでみたら収穫があるかもしれない。
↑↑ 写真は1月20日の山。まだ雪が残っているが、明後日にはまた雪の予報だ。
砂の捲かれた雪が車に踏まれてガリガリツルツルの圧雪になって、頑固に残ったままというのに。
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