診察室でのひとり言

日常の診察室で遭遇する疑問、難問、奇問を思いつくままに書き記したひとり言

健康食品 ・・・ 科学的根拠が要らない

2022年12月29日 | 医療、健康

健康食品、サプリメント( 健康補助食品 )の市場が本邦では年間  兆円に届こうとしている。そもそも食品は一般食品と保健機能食品( 特定保健用食品( トクホ )や機能表示食品 )に区別される。保健機能食品はある程度、科学的根拠を示さないと承認されないが、この科学的根拠も非常に怪しいものである。一方、市場の多くを支配している健康食品やサプリメントは一般食品に属するため、科学的根拠は要らない。その半面、効果・効能をパッケージなどに表記することができない。『 ○○〇に効く! 』 などと表記してしまえば違法になる。いわゆる口コミで伝えていくしかない。一例を紹介すると、夜間の頻尿に効果があるのではと言われている 『 ノコギリヤシ 』 というサプリメントが数社から販売されている。一般食品とみなされるので効果・効能を表記することはできない。K製薬の商品では 『 水分をとると夜に何度も・・という中高年男性に 』 と記してある。D社の商品では 『 ◇ キレ・近さに悩んでいる  ◇ 夜中に何度も・・・ ◇ 安心して出かけたい 』 と記載されている。この文面だけ読めば何のこと? というわけだが、ノコギリヤシをネットで調べれば科学的根拠がないにも関わらず、男性頻尿に効果があるといったことはあちこちに載っている。まあ、インチキ的な法整備である。健康食品やサプリメントは科学的根拠不要で販売元がパッケージに記載さえしなければ、好きなことを言っても自由なのである。また、これらの摂取は副作用もなく安全であると誤解されている場合が多い。しかしながら、過剰摂取には注意を要する。歳を取ると骨が弱くなるという理由でカルシウムを積極的に摂ろうと、乳製品を過剰摂取した上に、カルシウムのサプリまで購入して服用されている人がいる。科学的にはどんなに多くカルシウムを摂っても、骨量はわずか1%未満しか増えない。逆に、多く摂れば摂るほど、血中のカルシウム濃度が上昇して、動脈硬化を加速させてしまい心筋梗塞や脳梗塞を招いてしまう結果になる。メリットとデメリットを考えるとお分かりかと思う。次回、『 トリプトファン事件 』 について触れようと思う。

 


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