中国が推し進める一大経済圏構想「一帯一路」
しかしそこには恐るべき中国の「債務の罠」が仕掛けられている。
ギリシャの国家破綻の危機は年中行事で、騒がれない時の方が不思議に感じるほどひどい債務超過している国だ。
ギリシャは東洋と西洋の中間にあって、ヨーロッパの玄関口と言われる。
その玄関口であるピレウス港は中国にとってはヨーロッパ輸出の荷揚げ港として重要な拠点でもある。
2008年中国海運大手が、同港の一部埠頭の運営権を獲得した。
ギリシャは財政危機で公営企業民営化の一環として国家資産の売却を迫られていた。
2016年、先の中国海運大手は埠頭運営会社の株式51%を取得したのである。
買収額はわずか2億8050万ユーロ(約360億円)。
現在では、株式保有率は7割ほどに引き上げられている。
中国は今、ピレウス港と欧州中央を直結する交通の要衝を押さえるため、高速鉄道などへの大規模投資を進めている。
次にスリランカ、ハンバントタ港を中国に99年間租借する。
思えば清国がイギリスに香港を99年間租借し、中国がやっと取り戻したのが1997年だった。
香港返還は中国の切実の願いだったはず、それを今度は立場を変えてスリランカや債務で苦しむ国に同じようなことをやっている中国共産党。
ハンバントタ港を99年間中国へ貸与することになった事情。
もともとは田舎漁港のようなところだったハンバントタ港に目をつけた中国は、2010年、建設費約13億ドルそのほぼ全額を中国融資で賄い、最高で年6.3%という金利、しかしスリランカは返済に窮した。
その結果、2017年12月に港湾運営会社の株式の70%を中国国営企業に貸与し、リース料として約11億2000万ドルを受け取ることで合意させられる羽目となる。
貸与期間は99年間、中国に売却したのも同然となった。
その上同国の18年の債務予想が、国内総生産(GDP)の約8割と言われる財政状態
インフラ投資で借金を重ね、IMFも債務返済のために資産売却を奨励しており、マッタラ・ラジャパクサ国際空港も売却の候補として挙がっている。
同空港は、建設費約2億ドルの大部分を中国輸出入銀行が融資しており、これも中国が入手するのではと言われている。
インド洋の島国モルディブは、スリランカとパキスタンに続いて中国の「債務のわな」に陥った。
モルディブが中国に対して負う負債は、ロイター通信などによれば約32億ドル(約3630億円)に上る。
国民1人当たり、8000ドルずつの借金を負っていることになる。
「中国が2012年にモルディブに約4億ドルを融資したことも忘れてはならない。これは、モルディブの国民総生産(GNP)の25%に相当する金額だ」
モルディブが最終的に自国の主要な資産を中国に引き渡してしまうことになるのか
モルディブ経済は、それほどの規模の負債を抱えるには「小さすぎ、弱すぎる」ということだ。同国の経済規模はスリランカのおよそ5%、パキスタンの約1.5%だ。
インド洋に面したパキスタンは、「一帯一路」の中央に位置する。
中国が安全保障戦略上、極めて重視しているのがパキスタンのグワダル港である。
グワダル港は中国が建設した深水港で、中国企業が2017年から40年間リースすることで合意している。
中国にとってパキスタンは、対インド戦略でも重要なパートナー
IMFは一帯一路関連プロジェクトである中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に基づいて、インフラ整備が進行中で、中国から約620億ドル(6兆7800億円)の融資が見込まれている。
調査は「高い金利が、パキスタンのリスクとなる」と警告した。
パキスタンの対外債務は900億ドルを超え、うち4割超が対中債務とされている。
10月11日、パキスタンはついにIMFに支援を求め、80億ドル規模と見られている。
80億ドルなど焼け石に水、あっという間に中国の懐へ蒸発してしまう(わらい
米シンクタンク「世界開発センター」は、一帯一路参加各国の債務リスクがある国としてジブチ、キルギス、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8カ国をあげている。
まだまだその他にも中国の債務の罠で喘ぐ国はゴロゴロある。
しかし、ペンス米副大統領は、こうした中国のあこぎな植民地主義に対抗したペンスプランとも言うべきもので、中国の植民地支配のツールである「一帯一路」に対抗した、インド太平洋諸国支援策を打ち出す。
昨年11月のパプアニューギニアでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、インフラ投資で相手国に巨額の融資を行って債務不履行に陥らせる中国の「借金漬け外交」に対抗した、米国による開発支援の拡大策として最大600億ドル(約6兆8000億円)の融資枠を使って、インド太平洋諸国に優先的にインフラ支援をする考えを正式に表明した。
>「一帯一路は曲がり角」 防衛研が中国安保リポート
2019.1.30 産経 正論
報告書は、一帯一路について「米国を中心とした先進諸国だけでなく、発展途上国の間でも警戒と反発が高まりつつある」と強調した。インド洋の要衝に位置するスリランカのハンバントタ港をめぐり、中国側が多額の融資により99年間の運営権を取得したことについて「債務のわなとして批判を招いている」と触れた。
その上で「中国が軍事力を背景に強引な現状変更を図れば図るほど、相手国の対中不信が高まる」とし、「国際社会で大きな役割を発揮するには、地域諸国の支持を固めることが先決だ」と注文を付けた。
軍事力の海外展開も強調した。南シナ海での軍事拠点化や東シナ海での軍事活動に加え、「西太平洋への展開行動を強化している」と指摘。中国海軍「遼寧」の宮古海峡通過や爆撃機などによる展開訓練について「米軍の行動を制約する『接近阻止・入域拒否(A2AD)』能力の向上を目指したものだ」と分析した。