家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

渡り顎(わたりあご)

2004年11月22日 | 我が家のスペシャルな仕様
ウチの古屋は純和風建築だが、新築部分は純和風ではない。箱が組み合わさったような形状で、竣工したら遠くから見たら木造建築だということも分からないかもしれない。
さらに、平坦な壁だったら、近くで見ても木造かRC造か、わかりにくかっただろう。
しかし、近くに立てば、壁に突起物が横に並んでいるのが目に付く。それが「渡り顎(あご)」であり、我が家が木造建築であることを認識させてくれる(はず)。

 私が依頼した建築家のモットーは「木は木で組む」。ウチの家も金物は極力使わず、昔からの木組みの技法が使われている。「渡り顎」もそうした木組みの技の一つである。渡り顎では梁ががっちりと組まれる。最近多い「京呂組み」より、ひっぱりなどに強いようだ。

 構造上の利点だけでなく、外観上のポイントとなるのに気づいたのは最近のことだ。
 図面を見ているだけの段階では「渡り顎」をあまり意識しておらず、我が家が竣工したら、木で組んだ家であることが他の人にわかってもらえないのではないかと、ちょっと気にしていた。
上棟され、外壁に木ズリが張られると、「渡り顎」が次第に目立ってきて、外壁が塗られればさらに存在感が増すであろうことが見えてきた。伝統的な木組みの一部が木で組まれた家であることを主張するのだ。
この段階に至って、またしても「そうか、そういうことだったのか」と、建築家の仕掛けに感心させられたのだった。

そして、その後。
 「谷中M類栖」のm-louisさんが、私のエントリ「欄間を見直す」にトラックバックしてくれた「欄間を介して」を読んだことで、別の期待が生まれてきた。
m-louisさんの家では、再利用する古い欄間と丸太梁が妙に浮き上がることのないよう、天井の節のある杉縁甲板という材が視覚的に活躍している。同じように、我が家においては、「渡り顎」が、新築部分と古屋がよそよそしく接するのを和らげる視覚的効果をもたらしてくれるのではないだろうか。そんな期待である。

つくづく、建築設計というものは奥が深いと思う。そして、施主はこうした奥深さに触れては喜ぶことができるのだ。