家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

大人と子供と家――「オン」と「オフ」の違い

2007年10月10日 | 家について思ったことなど
大人の場合、職場がオンタイム、家はオフタイムと区分けすることができるが、子供の場合はオン・オフの区別はあいまいないし柔軟だ。学校でオフ(遊び)になることもあるし、家でオン(勉強)になることもある。また「遊び」から身につける能力もあり、成長するのが仕事である子供にとって、なにがオンでなにがオフとも判断しにくかったりする。
子供はあらゆるものから学んだり、鍛えられたりするが、すでにある程度の能力を身につけてしまった大人はそうでもない。大人と子供ではオンとオフの状況に違いがあって当然に思う。
そして、子供に限らないが人間が成長するためには刺激が必要だ。
刺激の中には環境変化もある。ストレスとかプレッシャー(負荷)は心理的には敬遠したいとは思うが、理性で考えれば、ストレスやプレッシャーがまったく無くなったら人間は成長もしないし、堕落する恐れもある。逃げるだけでなく、うまくつきあっていくことが重要だと思っている。

漠とした変な前振りになってしまった気がするので、そそくさと本題に移ろう。

基本的に、家は家族がやすらぐ場だと思っている。
だからできるだけ気持ちのいい、くつろげる場所であったほうがいい。
ただし、気持ちよさにもいろいろあると思うし、どこまでも快適さを追求し続けることについては疑問がある。
考えたいのは、大人の快適と子供の快適は違うということ。
そして、子供を「大人の快適さ」に浸らせっぱなしにしていいのか、ということ。

私が家を建てるにあたっては、「誰でも老人になるということを考えよ」というアドバイスに納得した。だから、家の性能の重要さを意識した。
しかし、よく考えるとそればかりではいけないと気づいた。「大人、老人が快適に感じる環境」というのは子供にとってもよい環境か、という問題意識がわいてきたのだ。
快適にもいろいろあるが、特に子供にとって、「身体的負荷をなくすことによって得られる快適さ」というのは要注意だと思う。
子供の場合、どんなところに成長のためのタネが転がっているか分からない。大人の好みで、なにげない負荷まで排除した快適空間を作り出し、そこに子供を浸らせたら成長が阻害されたりはしないかということを考える。
私達が子供だったころ、季節の移り変わりによって家の中にもそこそこの負荷があった。今の子供はそうした負荷から開放されることで、私達が何も意識しなくて自然に身につけたことが身につけられなくなるかもしれない。

先日、こんなニュース↓を読んだ。
(読売新聞ニュースサイトより)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20071008-OYT8T00076.htm
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子供の体力 危機的レベル
ゲーム遊びや塾通い 運動不足定着

 小学生の運動能力は20年前をピークに低下し始め、ここ10年間は低水準のまま推移していることが7日、文部科学省が公表した「2006年度体力・運動能力調査」の結果で明らかになった。
 同省は現状について、「これ以上下がりようがない危機的な水準ではないか」と指摘している。

(中略)

 文科省生涯スポーツ課は、「真っすぐ走れなかったり、飛んできたボールをよけられずにケガをしたりする子供も多い。運動能力の低下傾向に歯止めがかかったというより、最低限のレベルまで落ちてしまったと考えるべきではないか」とする。原因としては、ゲーム機の普及や塾通いなどで、運動不足の生活が定着していることを挙げている。
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記事には「これ以上、下がりようがない危機的な水準ではないか」というコメントがあるが、私は今後まだ身体能力が下がるかもしれないと危惧している。運動能力というよりストレス耐性が弱くなる方向で…。
その要因になりそうなのが、大人にとっての快適さを追求する高性能住宅の普及である。
これまで家作りに関する情報を見ていて、「超高性能住宅で負荷のない環境で暮らすことが子供をひよわにしかねない」という警鐘に対し、「子供というものは外で鍛えるものだ」という反論があったことをいくつかの場所で目にしている。
「なるほど、たしかに別の場所で意識的に子供を鍛えればいい」と、その時点ではおおむね納得していたのだが、この記事を見れば、我が家はともかく社会的にはそれもなかなかに難しい情勢になっていると思える。そして良く考えたら、子供はオンとオフの境界があいまいなのである。
親が何も気にしないで、子供をぬるま湯のような環境に置き、ゲームばかりやるのを許していたりしたら、基本的身体能力すら身につけにくくなりはしないだろうかと危惧する。

大人向きにどこまでも負荷を軽減しようとする風潮と、子育ての関係には注意しておきたいと思っている。行き着くところまでいったら、逆に三鷹天命反転住宅(関連エントリ→LINK)のように、家の中にわざと負荷を作り出すようになるかもしれない。

新築した我が家も、「超」とまではいえないが結構高性能化している。家を「閉じる」ことで身体負荷が小さい環境を以前より容易に作り出せるようになった。
ところが、我が家は窓を開けていることが多い(注)。風が抜けるように越屋根地窓もある。

それは季節感を積極的に享受したいとか、風が好きというような動機だけではなく、ちょっぴり子供のことも意識しているのだ。



(注)さすがに真夏や真冬に開けっ放しなんてことはない。