いまや世界は思春期の混沌を生きている。思春期とは幼少期に安住していた家族的世界観が動揺する時期である。どんな催眠状態も解けるときが来る。それをもたらすのは心身の変化、動揺だだ。それは成長のときだ。
催眠術の勉強のはじめは催眠誘導テストである。まず両腕が震えるテスト、次にパチンコ玉が大きく揺れるテスト、そして風船が膨らむ、しぼむテストであった。パチンコ玉テストとは、パチンコ玉のおもりで造った、30センチほどの振り子を被験者に親指と人差し指でつまませ、目の前10センチほどのところにぶら下げtまま20秒くらい凝視させ、それから「パチンコ玉が、まるで時計の振り子のように、左右に動き出したと思ってください」と指示する。被暗示性の高い人はすぐにパチンコ玉が動き出すという。続いて「ぐるぐる回る」や「大きく揺れる」と指示するとその通りに動く。
催眠誘導テストは「心に思ったことが体に伝わると」いう人間の生理現象を利用している。「パチンコ玉が動き出す」と思うと手は無意識に振り子を動かすのである。
僕の場合、家で予行演習したとき、動き出すのに数秒かかった。動き出したときは微妙だが意識的に動かしたような気がする。何度か繰り返すうちに自然に動くようになった。おかげで催眠教室ではすぐ動き出した。
この現象を自分なりに理解してみた。すぐ動き出さなかったのは集中力が足りなかったのだろうか。いや、すぐ動き出すようになったのは動き出すという言葉と動くイメージが連動したからではないだろうか。動くと思うだけでパチンコ玉が動くのは不自然だという理性が働いていたのだが、繰り返しイメージしているうちに理性は眠り、習慣が勝ったのであろう。催眠になかなかかからない人も、何度も繰り返せばかかるようになるのは、この理屈だろう。
このテストでもう一つ重要な要素がある。30センチの振り子を目の前10センチに掲げていたら、肉体的条件によって違うが、20秒もすれば自然に手が震えるなどして重りが揺れ出すのは自然なことなのである。それを動くと思ったことによって動き出したというのは錯覚である。
被暗示性と一概に言うが、様々な心の状態、性格が絡んでくるようだ。理性の弱い人、動くと思うだけでパチンコ玉が動くわけはないと思わない人もいるだろう。有名な先生が言うのだから動くのだろうと思っている人は、無意識に先生のいうとおりに動かしてしまうようだ。名利権勢に弱いのも被暗示性の高さの特徴のようだ。こういう人は詐欺師の催眠術にかかりやすい。
催眠にかかりやすい人は有名人の前に立つと緊張して理性が吹っ飛ぶ。一方催眠にかかりにくい、深い催眠状態に入りにくいのが弛緩タイプであるという。一体どんな性格の人だろうか。バカとひねくれ者は催眠にかからないといわれるが、それは言葉による暗示を受け入れられないからだろう。
一般的催眠といわれるのは言葉によるものだから言語能力に優れた人ほどかかりやすいという理屈になる。幼児はかからないが7,8歳から20歳くらいがかかりやすく、大人になると疑い深くなってかかりにくくなる。小学生のように素直な人多い現代っ子はかかりやすそうだ。ラーメン屋に並んだり、AKB48に群がったりする大人が多いのはそのためだろう。素直さのいい面は被災地のボランティアに向かう人が少なくないというところだ。
それにしても催眠にかけられて力が抜ける弛緩タイプとはどういう人間だろう。