世界標準技術開発フォローアップ市場展開

ガラパゴス化から飛躍:小電力無線IEEE802規格開発会議・・・への寄与活動拡充

進化するクラウド・シーディング技術中国、日本、・・・と仏、米ワイン業界2022.01.06ワイン通販Firadis WINE CLUB

2022-09-14 16:33:04 | 連絡
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2011年よりお取引様であるレストラン、酒販店などワインを取り扱うプロフェッショナル向けに毎月お送りしているニュースレターをコラムとしてまとめました。出張先で得た最新の情報やマリアージュ、温度変化、熟成の実験など幅広いテーマでワインについて掘り下げるニュースレターはお取引様にも大変好評をいただいております。
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皆さんは「クラウド・シーディング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「雲の種まき」という直訳の通り、ヘリコプターなどから雲に直接ヨウ化銀やドライアイスといった化学物質(=種)を撒く事で雲の内部構造を変化させ人工的に雨や雪を降らせる、いわゆる人工降雨/人工降雪技術のことです。
今回は、世界中で研究が進む「クラウド・シーディング」の現状と、ワイン業界での活用事例を掘り下げていきたいと思います。
〇クラウド・シーディングの技術について
雨や雪が降るには、雲の中で「氷晶」と呼ばれる微細な氷の結晶が生成されることが必要不可欠となります。
この氷晶を核にして雲の中の水蒸気が集まり成長、雨や雪となり地上に降ってくるのです。
しかし、雲によってはこの氷晶が生成され難いことがあります。
そこで人間が代わりに氷晶の元となる種を撒き、最小限の人工的刺激により自然の雲が持つ潜在的降水量を最大限に引き出すというのが「クラウド・シーディング」の基本的な考え方です。
この技術は1946年、アメリカのゼネラル・エレクトリック社の化学者らによって発見されました。
彼らは、過冷却※の小さな水滴でいっぱいになった冷凍庫にドライアイスの破片を落としたところ無数の氷晶が発生することを偶然に発見したのです。(※過冷却・・液体が、凍って個体になる温度を下回っても、液体のまま冷やされている状態のこと)
なぜこの現象が起きたかというと、過冷却状態の水滴が凍るには、微小なちりや氷のかけらなどの「核」になるものが必要だからだと言われています。もう少し詳しく見ていきましょう。
水には3つの状態があり、液体、100度で気体(水蒸気)、0度で個体(氷)へと姿を変えます。
液体は水の分子が動き回っている不規則な状態ですが、氷は規則的な結晶構造を持つ安定した状態です。
過冷却水の場合は、0度を下回っても水分子が動き続けている不安定な状態なのですが、そこに安定した結晶核(微小なちりや氷のかけら)が生じると、本来凝固すべき温度に達していた水分子はより安定した状態を求め、微小な結晶核めがけて一斉に集まり、その部分を起点に一気に結晶化していきます。
これが自然の中でも起こっており、上空の雲の中では、空気中のちりなどが核となり、氷の結晶(氷晶)が育っているのです。
この発見に基づき、ゼネラル・エレクトリック社の化学者が小型飛行機でドライアイスを零度以下の冷たい雲に撒いてみたところ、同じように過冷却の小さな水滴から大量の氷晶が生まれ、それが雪に成長して落下しました。
この実験をきっかけにクラウド・シーディングの研究が世界中に広がっていったのです。
尚、結晶核となる種にはドライアイスかヨウ化銀が主に使用されますが、氷晶の生成法が少しずつ違います。
ドライアイスは空気の温度を下げることで水蒸気から氷晶をつくりますが、ヨウ化銀は氷晶とよく似た性質を持つので、ヨウ化銀自身が核となり周りの水蒸気を集め氷晶をつくります。
ここで気になるのがヨウ化銀の人体への影響です。
ヨウ化銀には毒性がありますが、微量であれば人体に影響を与えるほどではないと言われています。
クラウド・シーディングで使うヨウ化銀は極めて少ない量で驚くほどの効果を発揮するため、降ってくる雨に含まれるヨウ化銀の濃度は自然環境とほとんど同程度におさまります。
また、ドライアイスに比べ安価で、地上からの散布が可能になる事からも、実験用シーディング物質として最も広く用いられています。
〇世界での研究例
こうして偶然に発見されたクラウド・シーディングの技術は、現在では水不足の解消や猛暑の抑制などを目的に、世界約50か国で研究が進められています。世界の人工降雨装置市場は2016年に9,770万米ドル(=約110億円)の市場価値に達し、2017-2024年の間に世界中で7.1%の年平均成長率で拡大すると予想されています。
◇中国
世界最大規模でこの技術の研究を続けているのが中国です。
中国では農作物の生産や自然災害防止を目的に、国家プロジェクトとして1960年代からこの技術を用いた独自の計画を立ち上げ、1,500億円を超える資金を投入し、3万5千人を雇用しています。
2025年までにプロジェクトの対象地域を同国の56%、550万平方kmまで拡大する事も発表しています。
余談になりますが、中国は2008年の北京オリンピックでもこの技術を活用して話題になりました。
当初、開会式当日の天気予報は雨でしたが、クラウド・シーディングにより事前に強制的に雨を降らせることで、開会式を青空で迎えたのです。
◇タイ
意外かもしれませんが、タイも中国と同じくクラウド・シーディングを国家プロジェクトに据えて60年以上も前から研究を進めてきた国の1つです。
熱帯モンスーン気候のタイでは、雨季には十分すぎるほど雨が降るのに乾季には一切降らず農業に支障が出てしまいます。
そこで人工降雨でダムに水を溜めることで年間を通じて安定した農業環境の構築を目指しています。
◇アラブ首長国連邦
最近ではアラブ首長国連邦で、猛暑に対応するためドローンを使った人工降雨実験が行われたというニュースもありました。
◇日本
日本も例外ではありません。日本では1947年に大手電力会社と大学が在日米軍の協力により航空機からドライアイスを散布するはじめての人工降雨実験を行いました。
現在では文科省主導で夏の渇水リスクの高い地方をモデルに水資源を確保するための研究が進められています。
具体的には、水資源の半分以上を春先の雪解け水に依存する関東地方では、冬の小雪と空梅雨が重なると渇水のリスクが高まります。
そこでクラウド・シーディングにより冬の降雪量を増やすことで十分な雪解け水を保持し、夏の渇水を防ぐという研究です。
季節予報(長期間の気候を予報する天気予報)の精度がまだ低いため実用化には至っていませんが、クラウド・シーディング技術により通常の年には約30%ほど降雪量を増やすことが出来るという研究結果が出ています。
〇ワイン業界におけるクラウド・シーディング
①ヨーロッパのフランスの場合
日本を含む世界での研究例を見てきましたが、ワイン業界ではどうでしょうか?ヨーロッパなどの高緯度の地域では雹による農作物への被害を減らすためのクラウド・シーディングの研究が盛んで、実はワイン業界でもこの技術が少しずつ活用され始めています。
雹一粒による被害の大きさは、雹の直径の4乗に比例すると言われています。雹のサイズが大きいほど与えるダメージは甚大になるので、種となるヨウ化銀を雲に散布し小さな雹の数を増やすことで、大きい雹の発生を阻み被害を最小化したり、雹に成長する前に強制的に雨として降らせてしまうことが可能になります。
フランスでは、南仏、ボルドー、ブルゴーニュで主にこの研究が進められており、2005年から2014年に酷い雹の被害にあったブルゴーニュでは2013年頃からクラウド・シーディング技術が導入されています。
サン・トーバンに拠点を置くアンリ・プリュードンの当主、ヴァンサンに話を聞いたところ、今ではコート・ド・ボーヌ、コート・ド・ニュイの全ての村がこのプロジェクトに動員されているとのことでした。
全ての村に人工降雨装置が装備されており、気象学者による「雷雨警報」が発生した際には対策としてヨウ化銀が畑から空に撒かれるのです。
自身の村だけでなく、周囲の村でも同様の処置が行われるので、それが自身の村や畑を守るトリガーにもなっていると言います。
種となるヨウ化銀の散布方法には大きく2つの方法があります。
1つはヘリコプターから散布する方法、もう1つは地上にセットした発生機を用い、低沸点の液体であるアセトンとヨウ化銀を混ぜた液体を燃やすことで、気化した粒子を大気中に放って雲に作用させるという方法です。
ヘリコプターは非常にコストがかかりますが、それに対し比較的手軽で低コストで導入できる後者は各村や規模が小さいドメーヌにとっても現実的な選択肢となるようです。
またヨウ化銀を含んだロケットを直接雲に打ち込む、という方法もあり、これは大手ネゴシアンであるAlbert Bichotが自社で活用しています。
最近では遠隔操作が可能なバルーンを空に飛ばしヨウ化銀を散布するという方法も生み出されており、この方法だと準備から10分もかからずに散布が可能になります。
クラウド・シーディングが実施されたにも関わらず、2014年はブルゴーニュ全土、特にボーヌ、ポマール、ヴォルネイでは酷い雹の被害に見舞われました。生産者としては少しでも威力が弱まったはずだと信じる他ありません・・。
ヴァンサン曰く、2014年以降、雹の嵐の発生は減っており、2000年~2010年代前半に比べると遥かに被害は少なくなった実感は得られているとのことでした。
 ここで1つ疑問が浮かびます。
ブルゴーニュでもオーガニックやビオディナミへの意識が高まっていますが、人工的な気象改変であるクラウド・シーディングはこの流れに沿わないのでは・・・?
その点についてヴァンサンに質問してみたところ、「この技術は自然なプロセスのため、全く問題ない」との答えでした。
ブルゴーニュでは非常に古くからクラウド・シーディングを活用しており、最近になり再び利用されるようになったそうです。
あくまでも雲の中にある水滴が大粒の雹に姿を変えるのを防ぐ技術ですので、軌道をそらしたり、雲や嵐自体を消してしまうといった気象変更ではなく、雲に含まれる水分が雨や小粒の雹として落ちるのか、大粒の雹として落ちるのかの違いのみです。
化学ではなく物理学に基づいたシステムだからこそ先祖の代から現在に至るまで安心して利用されているのだ、と話してくれました。
 一方ボルドーでの導入状況についてあるネゴシアンに質問してみたところ、ボルドーではアペラシオンもしくはシャトーごとに導入を検討しており、アペラシオンとして正式にクラウド・シーディング技術を導入しているのはサン・テミリオンだけであるとの回答でした。
しかし、ジロンド県ではADELFAという雹害対策や大気汚染の研究、調査を行う協会が設立されたとのことなので、今後サン・テミリオンに続くアペラシオンが続々と出てくるかもしれません。 
②米国のカリフォルニアの場合
雹がリスクとなるフランスの産地での例を見てきましたが、干ばつや山火事が問題になるカリフォルニアではどうでしょうか?
この技術が発見されたアメリカでは中国ほどの規模ではありませんが、1940年代後半から積極的な研究が進められています。
カリフォルニアでも1950年代前半より、降水量を増やすためにシエラネバダを中心にヨウ化銀散布によるクラウド・シーディングが実践されてきました。正確な数字を把握するのは難しいですが、カリフォルニア州の水資源に関する報告書によるとクラウド・シーディングで年間2~15%程度の降水量の上昇を見込むことが出来るといいます。
しかし、100社以上のカリフォルニアワインの輸出を手掛ける会社の代表に話を伺ったところ、ワイン生産エリアがその恩恵を受けるのはまだまだ難しい現状が見えてきました。
カリフォルニアの内陸部にはシエラネバダ山脈が広がりますが、クラウド・シーディングに適した雲はこの山脈エリアでしか発生せず、山脈以西のメインとなるワイン産地エリア(ノースコースト、セントラルコースト、セントラルヴァレー)では、十分なサイズの雲が発生しないのです。
海岸沿いでは「マリン・レイヤー」と呼ばれる、海の影響で地表低くに発生する雲ができますが、これもクラウド・シーディングには向いていません。
そのためワイン生産者たちは干ばつの被害を軽減するため別の方法を模索していると言います。
現実的な対策としては、水を節約するためのサスティナブル農法の導入、貯水池の保全、長期的な視点では化石燃料の使用を減らし地球規模で大気中への炭素放出を減らす事を挙げていました。 
また、気になる山火事に対してですが、ワイオミング大学で大気科学を専門とするTerry Deshler教授は「煙の粒子の影響で雲粒が十分に育たず、雨を降らせるには至らない」と述べており、この技術はまだ不確実性が高く山火事対策に用いるには時期尚早のようです。
〇まとめ
人の手によって「天気を操る」という夢のような話が既に現実で起きていることに驚いた方もいるのではないでしょうか。
天災による被害を最小限に抑えたいという人間の欲望は尽きることなく、現在では、降雨、降雪、降雹制御に止まらず、ハリケーンや台風の進路や強度を変更するという研究もアメリカで進められているといいます。
ワイン業界においては、手軽で低コストなクラウド・シーディング方法が確立するにつれて、この技術を導入するエリアやワイナリーはより増えていくのではないでしょうか。
天災による収量減などのニュースを生産者から聞くのはいつも胸が痛いので、この技術が生産者たちを救う1つの希望になれば良いな、と思う反面、将来「ヴィンテージによる違い」というワインの面白い点が失われていってしまうのではないか、とも考えずにはいられません。
ワイン業界においても今後様々な議論がなされるでしょうが、この技術の正確性に磨きがかかっていけば、数十年後には「ヴィンテージ・フリー」という考え方が定着している…なんてこともあながち空想ではないかもしれません。


人体に悪影響を及ばす「ヨウ化銀を雨雲の中に散布」人工降雨もむなしく…中国発の食糧危機に要注意9/13(火)藤和彦デイリー新潮編集部

2022-09-14 11:33:40 | 連絡
藤和彦 
経済産業研究所コンサルティングフェロー。
経歴は1960年名古屋生まれ、
1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、
2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。
 
 

デイリー新潮編集部
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国連食糧農業機関(FAO)が9月2日に発表した8月の食料価格指数は5か月連続で低下した。
ウクライナの穀物輸出の再開に加え、北米やロシアの豊作予想が価格を押し下げる要因となっている。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて過去最高を記録した食料価格指数は低下傾向にあるものの、8月の同指数は前年に比べて7.9%高い。
 国連やトルコの仲介でロシアによる黒海沿岸の港の封鎖が解除されたことで、ウクライナの8月の穀物輸出は7月の300万トンから400万トンに増加することが見込まれている。
ロシアの侵攻前の水準(毎月600万トン)には達していないが、合意成立のおかげで世界の小麦価格などが下落したことから、国連は「世界各地の食料市場が安定化し始めている兆候がある」との見方を示している。  
だが、世界市場での価格下落がすぐに消費者に恩恵をもたらすことはなさそうだ。
世界の穀物市場は不安定な状態が続き、1年以上にわたって価格が高止まりすることが指摘されている。
円安が急速に進む日本では、むしろ為替の効果で今後しばらくの間、食料価格が上昇する可能性が高い。  
さらに、食糧危機は来年以降、さらに悪化する懸念が生じている。
〇中国を襲った「地球史上最悪レベルの熱波」
 ウクライナでは戦争によって種まきなどの農業活動が妨害され、来年の収穫量が大きく減少することが危惧されている。  
世界各地の農家は価格が高騰している肥料の使用量を減らしており、これによって収穫量が減少する可能性が高い。  
世界で不足する食糧を囲い込む動きも加速しているのも気がかりだ。
ロシアのウクライナ侵攻後、その件数は1.6倍に急増しており、次の生産減を呼ぶ負の連鎖を引き起こすとの懸念が強まっている。  
これらの悪材料に加えて、さらに深刻な問題が浮上している。
悪天候のせいで世界最大の穀物の生産・消費国である中国の今年の秋の収穫が危ぶまれているのだ。 
 中国国営メデイアは6日「先月は正確な観測記録が残る1961年以降で最も暑い8月になった」と報じた。
中国南部は先月、専門家が「地球史上最悪レベルの熱波」と表現するほどの高温に見舞われた。
先月は史上3番目の雨量の少ない8月でもあり、平均降水量は過去の平均より20%以上も少なかった。  
最も深刻な打撃を受けているのは中部と南部を流れる長江流域だ。
約4億5000万人が生活している長江流域の今年の夏は、70日以上にわたって異常な高温と雨不足に襲われた。
上海のビルは一斉に明かりを消し、エアコンを使えない人々は涼を求めて地下壕に逃げる。
長江の一部で川底が露呈するほど水位が下がったことで600年前の仏像が発見されるなどの事態が相次いだ。 
 長江流域はここ数年、夏になると増水による洪水が問題になっていたが、
今年は水量が枯渇するという想定外の事態となった。 
危機感を高める長江流域の地方政府は、長引く干ばつの影響を緩和するため、人工的に雨を降らせる取り組みを開始した。
その先鞭を切ったのは例年に比べ50%以上も降水量が減った四川省だった。  四川省は8月25日から29日にかけて人工降雨に着手した。
6000平方キロメートルに及ぶ範囲で大型ドローン2機がヨウ化銀を雨雲の中に散布した結果、「恵みの雨」が降ったが、皮肉なことにその後、豪雨が続き、洪水の発生が警戒されている。 
〇秋の収穫危機
中国ではクラウドシーディング(雲の種まき)というヨウ化銀を雲に散布させて人工的に雨を降らす方法が当たり前になってきているが、リスクも指摘されている。  
まず第一に挙げられるのは、ヨウ化銀から発生する有毒な銀イオンが生態系を汚染し、人体を脅かすことだ。
1回に散布されるヨウ化銀はわずかでも特定の地域で繰り返しこの技術を使用すれば、安全な基準値を超える可能性は十分にある。
 この方法ではトータルの降水量を変えることはできないことから、ある地域に人工的に雨を降らせると、その周辺地域では降水量が減るという問題もある。
将来のリスクに目をつぶってでも人工降雨に躍起になっている地方政府の念頭にあるのは秋の穀物収穫だ。
中国では年間穀物生産量の75%が秋に収穫されるが、穀物の生産にとって重要なのは夏の天候だ。
穀倉地帯では稲の穂が育ち、トウモロコシの収量を決める季節を迎えているが、酷暑と干ばつが深刻なダメージを与えている。  
中国メデイアは「秋の収穫まで2か月」と連日のように秋の収穫危機を報じている。
地方政府は農業技術者の専門チームを農村地帯に派遣し、早期収穫などの指導に当たっているが、政府の危機管理の専門家は「今年は最悪の猛暑が襲来した上に、沿岸部や南部への台風の上陸も少ない。
中南部の干ばつが深刻になっており、秋の収穫が減少する地域が出る」ことを認めている。
中国政府の公式見解は「全国的には食糧生産量が不足することはない」というものだ。北部と東北部は昨年秋の降水量が多く、今年も天候が比較的安定していることから、この地域の収穫が見込まれるからだと説明しているが、楽観は禁物だ。 
中国はコメ、小麦、トウモロコシの95%以上を自給しているが、
収穫量が激減すれば輸入に頼らざるを得ない。  
ウクライナ危機の悪影響が残っている中、中国発の食糧危機が勃発すれば、世界の食糧事情はこれまでに経験したことがないほど悪化してしまうのではないだろうか。

 

アビィ首相、農業「人工降雨の実験」や工業などさらなる経済成長に意欲、国会で答弁2021年03月29日関隆夫

2022-09-14 11:23:19 | 連絡
エチオピアのアビィ・アハメド首相は3月23日、政治経済・社会・外交問題などについて国民議会で答弁した。首相府のホームページなど(注1)によると、アビィ首相は2018年4月の就任以降に取り組んできた「自国創発的な経済成長改革」(注2)に触れ、債務削減や仕掛け中の公共工事の完遂、歳入増加に向けて尽力するとともに、砂糖など農業生産の制約を解消することなしに一層の経済成長は達成し得ないとあらためて強調した。
農業では、主食穀物テフの増産に向けた機械化や、小麦の増産に向けた灌漑拡大などに注力する。
雨量管理と農業生産拡大のために人工降雨の実験もしており、アムハラ州(ノース・ショア地区、ゴジャム地区)では良好な結果を得ているという(注3)。
工業では、原材料や補修部品の不足、停電や燃料不足、煩雑な公的手続きなどが企業の稼働率を引き下げているとした。
アビィ首相は、これら状況を改善すれば、生産増加につながるとの認識を改めて示し、課題解決に向けた施策の促進が期待される。
新型コロナウイルスやティグライ州での紛争(2020年11月9日記事参照)など、就任当時には想定し得なかった課題について、新型コロナウイルスに係る経済対応では主要国と比べればうまくいっているとし、2019/2020年度(2019年7月8日~2020年7月7日)の実質経済成長率が6.1%を達成したことや、国内市場の整備のために道路建設に注力していること、銀行の預貯金は2020年12月末時点で1兆2,000億ブル(約3兆1,200億円、1ブル=約2.6円)まで増え、産業界への貸出余力も高まっていることを紹介した。
銀行融資のうち民間部門への貸出比率は、2017/2018年度には45%だったが、2018/2019年度に61%、2019/2020年度に70%、2020/2021年度上半期には74%まで上昇しているという。
ティグライ州の紛争では、祈りや希望だけでは解決できず、具体的な行動が必要として、引き続き国民に協力と理解を求めた。
(注1)首相府のホームページやツイッター、政府系新聞(3月24日付「エチオピア・ヘラルド」紙)などが詳報している。
(注2)Homegrown Economic Reformと称される。
(注3)人工降雨技術は、雲に向かってヨウ化銀、ドライアイス、塩化ナトリウムなどの微粒子を散布して降雨させる技術。
アビィ首相は科学技術相を務めたこともあり、科学技術や情報通信産業への関心が高いとみられている。
(関隆夫)

(エチオピア)



世界的な異常気象、中国の気候改変「クラウド・シーデイング」プログラムが影響か…中国全土に豪雨災害、「気象兵器」レベル2021年8月3日藤 和彦

2022-09-14 10:58:34 | 連絡
藤 和彦 FUJI Kazuhiko
コンサルティングフェロー
公益財団法人世界平和研究所客員研究員
RIETIでの活動
1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 現職 
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世界規模で異常気象が発生している。
北米地域の熱波襲来、欧州地域での壊滅的な洪水、さらには中国を襲った「1000年に1度の大雨」など枚挙のいとまがない。
異常気象を引き起こしている共通の原因は偏西風の蛇行である。
北米地域では偏西風が通常よりも極端に北上したことで南からの熱い空気が入り込んで異常な高温状態になり、欧州地域や中国では偏西風が南下したことで寒気がなだれ込み豪雨に見舞われた。
偏西風とは、北半球の上空を西から東へ吹くジェット気流のことである。
高気圧や低気圧の移動に大きな影響を与える偏西風が、このところ大きく蛇行するようになったのである。
地球温暖化が原因との説があるが、そのメカニズムは不明である。
筆者は気象学の専門家ではないが、気になることがある。
それは中国が人工的に雨を降らせるなどの気候改変プログラムを大々的に実施していることである。
中国では7月1日、北京の天安門広場で中国共産党100周年記念式典が開かれたが、事前の予報で「雨が降る」ことが指摘されたため、前夜と当日早朝に上空の積乱雲に向けて数百発以上の降雨ロケット弾を発射、早めに雨を降らせたとされている。
2008年の北京五輪でも競技中の降雨を避けるために人工的に雨を降らせていた。
人工降雨に用いられる技術は「クラウド・シーデイング(雲の種まき)」と呼ばれる。
湿度の高い雲の中に氷と似た結晶構造のヨウ化銀などを航空機やロケット弾などで注入すると、水分がヨウ化銀などの粒の周りに集まり、重くなって雨として落下するという仕組みである
1946年に米国のゼネラル・エレクトリックの化学者によって発見された。
クラウド・シーデイングに使用されるヨウ化銀は毒性を有するが、中国当局は「使用量はわずかであり人体に害はない」としている。
〇世界で群を抜く中国のクラウド・シーデイング研究
気候改変の技術が一躍有名になったのはベトナム戦争のときである。
米軍が北ベトナム軍の動きを封じるため戦場に人工的に雨を降らせる作戦を極秘に展開していたが、この作戦が1972年に米国のメデイアによって明らかにされたからである。
これを契機に米国内外でその使用に対する懸念が高まったことから、1978年に「軍事的又はその他の敵対的な気候改変技術の使用禁止に関する国際条約」が締結・発効した。
中国もこの条約を2005年に批准したが、1960年代から気候改変の技術の習得・改善に熱心に取り組んできたとされている。
北西部の広大な乾燥地帯に気候改変の技術で雨を降らせ、耕作地を拡大させることが狙いだった。
米国などでもクラウド・シーデイングの研究が継続されているが、中国の活動が群を抜いている。
2012年から17年にかけて13億4000万ドル超の資金を投入した。
中国政府は昨年12月、「2025年までに気象改変プログラムの対象地域をこれまでの5倍の550万平方キロメートル超に拡大する」方針を明らかにした。
550万平方キロメートルという規模は中国の国土面積の5割以上であり、隣国インドの国土面積の1.5倍以上に相当する
中国で気候改変プログラムに従事するスタッフは約3万5000人と世界最大である(2020年12月14日付ビジネスインサイダー)。
今年1月に大型の気象制御無人機の初飛行が成功したことで、有人飛行では不可能だった厳しい気象条件でも人工降雨剤の散布が可能になったといわれている。
中国の前代未聞の動きについて懸念の声が上がり始めているが、中国政府は「天候に影響を与えるのは短時間で非常に限定的である。
世界の気候に影響を与えるというのは誤解だ」と反論している。
しかし中国側の言い分を鵜呑みにはできない。
気象の世界では「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす」とする「バタフライ効果」が指摘されている。
〇世界全体の気候へ悪影響
中国政府は「2006年から2016年までの10年間の降水量が550億立方メートルも増加した」とその実績を誇っているが、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」。
中国は昨年から夏期の豪雨災害に苦しんでいる。
長江流域では6月から断続的に大雨が降ったことで三峡ダムは建設以来の最高水位を記録し、国内外のメデイアは連日のように「ダムの崩壊が近づいている」と報じていた。
今年も5月から南部地域を中心に持続的な降雨の影響で洪水警報が発令されていたが、そのタイミングは例年よりも1カ月近く早かった。
中国水利部は「今年の6月から8月にかけて、長江流域に加えて北部の黄河、海河などでも大規模な洪水が発生する可能性がある。今年は最悪の洪水被害が出るのではないか」との懸念を示していたが、その予測が的中しつつある。
7月に入ると豪雨災害が全土で発生する事態となっている。
北部地域では内モンゴル自治区でダムが決壊し、北京市でも地下鉄駅が冠水した。中部地域では四川省や河南省で洪水被害が発生し、南部地域では貴州省が大雨となっている。
中国だけの被害であれば「自業自得」ということになろうが、中国の巨大な気候改変プログラムが、周辺国のみならず世界全体の気候へ悪影響を及ぼさないとは言い切れない。
日本をはじめ世界の関係機関は中国の気候改変プログラムについてノーマークのようだが、そのレベルは「気象兵器」の域に達している可能性がある。
今年11月に英国のグラスゴーで第26回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP26)が開催されるが、世界各国は中国の気候改変プログラムがもたらす副作用についても真剣に議論すべきではないだろうか。
ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/2021/07/post_240242.html
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2021年7月27日 Business Journalに掲載



ドイツを襲う「欧州の大動脈」ライン川水位低下の深刻度。エネルギー危機の最中、石炭輸送まで止まると…Aug. 12, 2022唐鎌大輔

2022-09-14 09:51:56 | 連絡
  • 唐鎌大輔 [みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト]
  • みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに従事。
  • https://diamond.jp/ud/authors/5c1afa927765610336010000

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  • ウクライナ危機を経てロシアとの関係を悪化させたドイツ。同国を含め、ユーロ圏全体がいま深刻なエネルギー危機に見舞われている。
  • エネルギー価格高騰が後押しするインフレは、もはや「コストプッシュなので一過性」などと言っていられる状態ではない。
  • 欧州中央銀行(ECB)に金融政策の修正を強いるなど、ユーロ圏の経済・金融に強い制約を与えている。
    欧州委員会や欧州中央銀行は、ロシアからのエネルギー供給が途絶えた場合を念頭に、従来とは異なる予測シナリオを用意し、対応を急いでいる。
    さて、それだけ緊迫した状況がすでにあるなか、ユーロ圏のエネルギー事情をいま以上に悪化させる材料が浮上してきた。
  • ライン川の水位低下だ。
    ドイツにとって物資流通の要と言えるライン川は、猛暑による渇水で水位が急速に低下し、このままの勢いなら船舶が航行不能になる水準まで達する可能性があるとの見方が出てきている。
  • ドイツにとって、と書いたが、同国への影響にとどまらず、欧州全体にとってのライン川の重要性は言うまでもない。
    源流はスイスの山岳地帯に発し、ドイツの主要都市をめぐり、最後は欧州最大の港湾都市ロッテルダム(オランダ)から北海へ注ぐ総延長1200キロ超。石炭や鉄鉱石などの燃料、化学製品、自動車部品など重要な交易財を運ぶ役割を果たす、「欧州の大動脈」との形容がふさわしい国際河川。
    陸上輸送に比べて大量運搬が可能なそのルートが、いまにも使えなくなる恐れがあると言うのだ。
    ブルームバーグの最新データによれば、ライン川中流に位置するドイツ西部の都市カウプ周辺の水位は、8月10日時点で50センチ近くまで低下している【図表1】。
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過去のデータを見る限り、水位には秋口(9~10月)にかけて低下する季節性が見られるため、今後航行不能に陥る展開は十分あり得る。
ドイツが輸入する石炭の大部分はロッテルダム経由でライン川を水上輸送されているため、航行不能が現実に起これば、エネルギーの供給制約が強まる可能性がある。
と言うのも、昨今のロシアによる天然ガス供給の削減を受け、ドイツはこれまで掲げてきた脱炭素の方針を棚上げして、再び石炭火力発電に傾斜しつつあるからだ。
ライン川の航行に支障が出て石炭の入手が困難になれば、当然、火力発電にも頼れなくなる。
そうした展開の最後にあるのが、電力不足を通じたドイツ経済の停滞や混乱だ。
最悪の事態を回避するには、(従来の長期契約ではなく)割高なスポット価格で天然ガスを買い続けるしかない。
それでも、もともと懸念されていた冬場のエネルギー事情の深刻度が増す展開は避けられない。
また、製造と納品の遅れが顕著になっている自動車産業などへの悪影響も必至だろう。
なお、ライン川の渇水は酷暑の影響と言われるが、その酷暑は元をたどれば気候変動に起因すると評価されている。
ドイツは気候変動対策として脱炭素シフトを進めてきたが、それが実質的に破たんしつつあるいま、それでも脱炭素を維持してエネルギー危機を打開する道があるとすれば、国民の8割が支持するとされる原発再稼働しかないように思われる。