20年程前、トヨタは「品管(品質管理)のトヨタ」だった。元々はトヨタの車作りはアメ車から学んだものだったが、トヨタはその余りにも大雑把でアバウトで杜撰な工程の一つ一つにメスを入れて行き、気づいたときにはこれと言って学ぶものはなくなってしまい、逆に「アメリカが世界に誇る車産業」の中核を成す各社の方がトヨタから車作りのノウハウを学ばなければならない時代になっていた。何を学ぶのか?「品質管理」と所謂「トヨタ生産方式」をである。これをやらないと車は「作れない」し「売れない」。トヨタと言えば「系列」である。トヨタは基本的には自分では心臓部のエンジン(電子機器を含む)しか作らない。あとのボディだの備品だのは下請けに出し、本社工場ではそれら全てを必要なロットだけ注文し集めて、1台売れれば1台、また1台売れればもう1台とトコロテン式に、ライン上の流れ作業で一気に組み立ててしまうのである。下請けと言っても直属しているのはエアコン・カーステレオ・アルミダイキャスト・・と、どれ一つとってもトヨタと共に成長し続けた巨大企業ばかりであって、彼らもまた個々に多くの下請け(トヨタから見れば孫請け)を抱えている。品質というものはそれを作った側が納品の際保証するものである。上位のものは当然、納品された部品がOK品か規格外の不具合品・不良品であるかを逐一厳密にチェックする。これが言わば「品質管理」で上位が下位を管理するのがその実態である。万一クレームが付けば下位のものは大騒ぎである。一つでも不具合品が発見されればトヨタから相応の責任者が呼びつけられて、何百何千とあるそのロットは現場で全品検査させられる。トヨタ生産方式というのは別名「トヨタ看板方式」と言った。世界中の刻々の売行きを掌握するトヨタ本社から下請け各社に対し、何日何時までにどのパーツをどれだけ届けろと厳命が下り、各社の各ラインにはその旨の看板が立つ。部品の作り置きをトヨタは許さない。売れなくなった車は直ちに生産縮小から停止するためである。いわゆる「在庫ゼロ」が建前である。我々の頃は「在庫は今高速道を走っている」とか「塀の外で入荷の順番を待っている」などというジョークが囁かれていた。トヨタの系列大手はトヨタと共に海外進出を果たしたが、孫請けや曾孫請けまでは連れて行かなかった。翻って系列が壊れたことと今回の問題とは無縁ではないと私は考えるのだが。 . . . 本文を読む