2024/2/20付で、鹿児島市内の国道10号鹿児島北バイパスに関する動画付き記事がYahoo!ニュースに配信されました。
事業着手からまもなく半世紀 国道10号・鹿児島北バイパス 渋滞解消の日は来るのか
国道10号の鹿児島市街地と姶良市街地の間の区間は、シラス台地の急峻な崖と錦江湾に挟まれた僅かな平地をJR日豊線とともに通っており、災害に対して脆弱です(中間部のJR竜ヶ水駅付近で1993年8月に発生した土砂災害はよく知られています)。さらに、約10kmの該当区間のうち3分の2は4車線化されているものの、鹿児島市街地寄りの区間は2車線のため慢性的な渋滞となっています。
鹿児島北バイパスは、その鹿児島市街地寄りの区間に現在の国道10号とは別に主にトンネルからなる(一部海上を渡る橋あり)新たなバイパス道路を建設し、渋滞緩和と災害対策の強化につなげるものです。
https://www.qsr.mlit.go.jp/kakoku/works/road/kitabai/
2016年9月に発刊されたパンフレットはこちら
1975年に全区間が事業化され、このうちJR鹿児島駅付近と祇園之洲の埋立地の間は2000年までに開通しましたが、これ以外の区間は遅々として進んでいません。
令和2年度 第2回九州地方整備局 事業評価監視委員会における評価資料によれば、
https://www.qsr.mlit.go.jp/site_files/file/s_top/jigyo-hyoka/200925/3-2kagosimakita.pdf
残り4.1km区間は2002年になってようやく道路計画の超初期段階のステップであるPI(Public Involvement、市民参加型道づくり)が始まりました。
https://www.qsr.mlit.go.jp/n-shiryo/kenkyu/program/01/01_10.pdf
これを受けて、2005年にルートおよび整備手法の検討に着手し、2007年に道路設計が始まったものの、8年後の2015年に都市計画は見直しとなりました。それ以降は地質調査・道路詳細設計・漁協との協議のプロセスがメインとなり、祇園之洲地区(仙厳園よりも南側)については遅まきながら2019年に現地での建設工事が始まっています。といっても、2024年初頭時点でも海上を通る橋脚と背後の山のトンネルのアプローチとなる橋台が存在するだけですが・・・
残るトンネルがメインとなる区間は、未だ工事着手に至っていません。上記URLの記事によれば、この区間の経過は以下のようになっています。
当初は磯海水浴場付近の裏の山にトンネルを掘り、仙巌園の前の海を埋め立てて道路を造る計画だった
→景観保護の観点から住民の支持を得られず見直しを強いられる
→2002年になって、磯海水浴場と仙巌園の前に海底トンネルを掘る案が立案された(注)
→事業費の増大で計画は実質的にストップ
→東日本大震災や桜島の海底火山などの災害リスクの再評価が必要となった
→2015年に、磯海水浴場と仙巌園の裏の山にトンネルを掘るという3つ目の案が承認され現在に至る
(注)海底トンネル案と山岳ルート案の比較に関する当時の資料はこちら
したがって、2019年度末時点では用地進捗率が約89%なのに対し事業進捗率は約20%にとどまっています。総事業費は、前回2015年度の再評価時点から80億円増の約555億円となっています。
そして、上記URLの記事では触れられていませんが、2023年度に入ってさらにルート変更が発生しています。2019年に吉野町花倉で発生した土砂災害への対応のためで、2023/10/25に開催された第82回鹿児島市都市計画審議会において決定されたものです。
姶良市寄りの約1340m区間が対象で、うち約660mは現ルートよりも海側にシフト、残りの約680mは構造を海上を通る橋梁形式に変更することで安全を確保するとのこと。
なお、この道路の都市計画上の名称は「鹿児島都市計画道路「磯街道線」」となっています。鹿児島県による都市計画上の変更なので、このブログ記事を書いている時点では、鹿児島北バイパスの事業主体である九州地方整備局鹿児島国道事務所のサイトをいくら探してもこの情報を知ることはできないようです。