新年早々、政界に激動が走った。
通常国会の直前に、民主党の小沢幹事長の秘書、元秘書の現職議員と相次いで三人も逮捕された。金庫番の大久保秘書、元秘書で政治資金を担当だった石川衆議院議員、そして石川議員の後任だった池田元秘書。
政治資金規制法違反の虚偽記載は「入口」で、本命は虚偽記載の対象である4億円の出所で、これを西松建設他ゼネコン各社からの「企業団体献金」と立件し、小沢逮捕、政界からの引退へ追い込むのが検察の目的であろう。
小沢一郎が金権政治「家」であることは間違いない
いまさら指摘するまでもなく小沢氏はもっとも自民党的政治家である。与党として予算を押さえ、公共事業配分の采配をふるって、企業献金を獲得し、資金力にもの言わせて派閥を拡大し与党総裁をつくり出し、与党内での主導権を確立し日本を動かす。田中、竹下、金丸と続いた金権政治の「正統」伝承者である。
そのために国土が破壊され、無駄なダム、無駄な高速道路、無駄な港、無駄な空港、無駄な原発などなどが増産され、巨額な財政赤字と弱い地方自治と農林業の衰退と自立性の低い経営や教育などなどを産み出してきた。
その反省が民主党政治である。したがって小沢氏はいま真逆の立場に自らを置いている。その意味を小沢氏がわかっているか否かは知らないが、西松建設問題に代表される違法献金疑惑は、民主党の政治理念の中にあっても、小沢氏は変わらず「正統派」金権政治を行なっていたように見える。少なくとも検察の見方はそうだ。
実際に昨年の総選挙そして今年の参議院選挙にむけた「小沢手法」は同じに見える。予算と引き換えの「票」だ。ご同輩の野中氏が全土連(全国土地改良事業団対連合会)の予算確保のために、自民党公認の候補者を取り下げてまでお願いに行ったことが、これを際立たせる。まさに「金権」だ。
もしかして、それも・・作戦か
今回の秘書逮捕の伏線となる違法献金事件は2004年頃のこととされている。小沢氏が自民党を出て久しく、民主党も政権からは遠く小泉総理全盛期である。その時代にあって、マスコミが騒ぐほどの権勢を誇っていたとは、実はにわかに信じ難い。
確かに岩手県では盤石の地盤を誇っていたかもしれないが、政府予算を自由にできるような立場ではなかったはず。胆沢ダム関連で2004年に水谷建設(三重県の中堅ゼネコン)が大久保秘書に5000万円を渡したとされる事件も、なぜ野党の小沢氏が介在できたのか解せない。
大久保秘書が「胆沢ダムは小沢ダムだ」と怒鳴った云々の話だけでは、それは野に下った元権力者が「過去の栄光」をひけらかしているだけとも取れる。仮に金権政治の延長線上にあったとしても、大手ゼネコンにしてみれば、メインは別にあり(当時の自民党側のはず)小沢ラインは「保険」程度の位置づけのはずだ。
「陸山会」の土地購入に関する政治資金規制法違反は、それ自体を取り出すと、とても三人の人間を逮捕できるような重大な違反ではない。そのウラに違法献金ありと確信しての逮捕という、いわば「別件逮捕」だ。もしそれを立件できなかったときには、参議院選挙を控えたこの時期の検察の行為は特定政党に対する「選挙妨害」と指弾されても否定できない。それほど危ない、思いきった突撃を検察は見せているのだ。
ただし、本来「金権」を暴くというのであれば、胆沢ダム問題でも「与党の本命」が大手ゼネコンを洗えば出てくるはずである。それが二階氏なのか、より大物建設族がいるのか知らないが、やるならそこまで徹底してやるべきだ。ところが、今回、「本命は小沢」という中途半端な検察の姿勢が見え見えである。金権を暴くのではなく「小沢を潰す」なのだ。本来なら総理の管轄下であろうに、別のところからの指令でも出ているかのような突撃で、「小沢=金権」という国民意識を醸成するため「野中広務の小沢詣で」まで演出したなら大したものだ。
こんな作戦、誰がウラにいるか
検察によって徹底的に潰された政治家が2人いる。田中角栄、金丸信である。田中角栄は中国との国交を開いたし、金丸信は北朝鮮との太いパイプを作ろうとしていたと言われる。日本外交は実は日本独自では決められない。常にアメリカの世界戦略があり、その範囲の中で日本の役割は決まる。
折々のアメリカの政権交代で、その世界戦略も百八十度変わることがある。場合によっては同じ政権の中でもそれはある・・というのが、前回ブログの最後でご紹介した孫崎亨「日米同盟の正体」の分析である。田中はアメリカの意向に反して日中の国交を開いたし、金丸は北朝鮮をアジアの火種として残したいアメリカの意向を汲まず平和な関係を築こうとした。
小沢氏をこの視点で見ると、アメリカとの対等な同盟関係という、かなりアメリカ戦略と対決する挑発的な姿勢をとっていることが見て取れる。与党になる前から、米軍の日本への駐留は第7艦隊だけで十分と主張、与党になっては普天間問題で辺野古への移設反対の社民党を援護、中国に大勢の議員団を連れて表敬訪問、習近平国家副主席の日本訪問時の天皇会見問題での強硬姿勢と、「対等な同盟」と「中国最重視」という方針である。
アメリカのオバマ政権も中国最重視なのだが、アメリカ側から日本に求めることは、まずアメリカ最重視、そのアメリカの戦略に基づいて中国との関係を築くというふうに動きなさいというものだ。小沢氏は公然とこれに反旗を翻しているように見える。そういう大きな流れを見ると、マスコミや野党が全く関係ない「政治と金」の問題に終始しているのは奇異に聞こえる。あえて見て見ぬ振りか間抜けなのか?どちらにしても、この国は外から操るには「簡単な国」だ。
「政治と金」は本質ではない
私は政治資金の問題は重要ではないというつもりはない。しかしいつも、大きな政治の転換点、みんなが議論しなければならない課題が見えてくると「政治と金」の問題が出てくるということだ。いま議論しなければならないのは、日米の関係の問題、この国の財政の問題、人の生存と生きがいの確立と、コンクリートに変わる雇用と産業振興の確立の問題などなどであろう。
政治家が調査と政策立案、そして選挙のために数多くの秘書を雇い維持しようとすれば金がかかる。そんなに何十億円も要らないが億単位の金になる。それは会社経営した人であればわかるはずだ。秘書経験者の私としては、秘書はパンの耳をかじって生きろとは言いがたい。人並以上の労働には人並以上の賃金をもって報いるべきである。
それなのになぜ今の政治家はおしなべて「企業団体献金の廃止」を金科玉条にしてしまったのだろうか?私が以前から主張しているのは「完全な透明性」であって企業団体献金の廃止ではない。「真の中立」などこの世の中にない。企業や団体や市民運動、マスコミも旗色鮮明に、その支持する政党を支持する理由を明確にして打ち出すべきだと思う。それでこそ、一人一人が考えはじめる。自分がこの組織にいること、この新聞を読んでいることが、それで良いのかと。
今の政治資金規正法は特定の政党支持を旗色鮮明にしている政治団体ですら献金ができないという不思議な制度だ。しかし金は要る。そして各政治家ともあの手この手で法の網をくぐる。叩けばほこりの出る人たちばかりの中で、たまたまそのときそのときのキーパーソンだけを検察捜査権という伝家の宝刀でほじくり出す「検察」というのは、本当に政治を大事なところでねじ曲げる役割を担っている。今回の出方を見ても、本当につくづくそう思う。この検察を見て、「正義だ」などと思うとしたら、なんと日本の国民はお人好しなのであろう。
政治資金規正法は存続させるとしても、企業団体献金は解禁し(上限は設ける必要はあるだろう)、そのかわり1円の単位まで公開を原則とする形に変えるべきだ。支出も1円単位まで領収書必須添付とする。透明性を確保するのは、不正の観点ではなく、その議員が「どこのひも付き」かを有権者が判断するためである。電力会社からたくさん献金もらって原発を推進している議員、武器輸出産業からたくさん献金をもらっている議員、ゼネコンからたくさん献金をもらっている議員などなど、そうであるとクリアーに見えることが大事だと思うからだ。
企業団体献金が合法でも、西松建設や水谷建設から、工事受注の見返りに金品を受け取ったらそれは収賄罪で政治資金規正法でなくても罰せられる。今どき「票をお金で買う」という露骨な選挙運動をする候補者がいれば、それだけで指され逮捕されるだろう。逆に真面目にやろうとすると選挙を手伝ってくれた人に食事も振る舞えないのが今の選挙制度だ。いまだに貧乏な候補者が唯一足で闘える「戸別訪問」は禁止されている。この国の選挙制度は間違いだらけなのである。一日も早く、この愚かな仕組みから脱却すべきだと思う。
通常国会の直前に、民主党の小沢幹事長の秘書、元秘書の現職議員と相次いで三人も逮捕された。金庫番の大久保秘書、元秘書で政治資金を担当だった石川衆議院議員、そして石川議員の後任だった池田元秘書。
政治資金規制法違反の虚偽記載は「入口」で、本命は虚偽記載の対象である4億円の出所で、これを西松建設他ゼネコン各社からの「企業団体献金」と立件し、小沢逮捕、政界からの引退へ追い込むのが検察の目的であろう。
小沢一郎が金権政治「家」であることは間違いない
いまさら指摘するまでもなく小沢氏はもっとも自民党的政治家である。与党として予算を押さえ、公共事業配分の采配をふるって、企業献金を獲得し、資金力にもの言わせて派閥を拡大し与党総裁をつくり出し、与党内での主導権を確立し日本を動かす。田中、竹下、金丸と続いた金権政治の「正統」伝承者である。
そのために国土が破壊され、無駄なダム、無駄な高速道路、無駄な港、無駄な空港、無駄な原発などなどが増産され、巨額な財政赤字と弱い地方自治と農林業の衰退と自立性の低い経営や教育などなどを産み出してきた。
その反省が民主党政治である。したがって小沢氏はいま真逆の立場に自らを置いている。その意味を小沢氏がわかっているか否かは知らないが、西松建設問題に代表される違法献金疑惑は、民主党の政治理念の中にあっても、小沢氏は変わらず「正統派」金権政治を行なっていたように見える。少なくとも検察の見方はそうだ。
実際に昨年の総選挙そして今年の参議院選挙にむけた「小沢手法」は同じに見える。予算と引き換えの「票」だ。ご同輩の野中氏が全土連(全国土地改良事業団対連合会)の予算確保のために、自民党公認の候補者を取り下げてまでお願いに行ったことが、これを際立たせる。まさに「金権」だ。
もしかして、それも・・作戦か
今回の秘書逮捕の伏線となる違法献金事件は2004年頃のこととされている。小沢氏が自民党を出て久しく、民主党も政権からは遠く小泉総理全盛期である。その時代にあって、マスコミが騒ぐほどの権勢を誇っていたとは、実はにわかに信じ難い。
確かに岩手県では盤石の地盤を誇っていたかもしれないが、政府予算を自由にできるような立場ではなかったはず。胆沢ダム関連で2004年に水谷建設(三重県の中堅ゼネコン)が大久保秘書に5000万円を渡したとされる事件も、なぜ野党の小沢氏が介在できたのか解せない。
大久保秘書が「胆沢ダムは小沢ダムだ」と怒鳴った云々の話だけでは、それは野に下った元権力者が「過去の栄光」をひけらかしているだけとも取れる。仮に金権政治の延長線上にあったとしても、大手ゼネコンにしてみれば、メインは別にあり(当時の自民党側のはず)小沢ラインは「保険」程度の位置づけのはずだ。
「陸山会」の土地購入に関する政治資金規制法違反は、それ自体を取り出すと、とても三人の人間を逮捕できるような重大な違反ではない。そのウラに違法献金ありと確信しての逮捕という、いわば「別件逮捕」だ。もしそれを立件できなかったときには、参議院選挙を控えたこの時期の検察の行為は特定政党に対する「選挙妨害」と指弾されても否定できない。それほど危ない、思いきった突撃を検察は見せているのだ。
ただし、本来「金権」を暴くというのであれば、胆沢ダム問題でも「与党の本命」が大手ゼネコンを洗えば出てくるはずである。それが二階氏なのか、より大物建設族がいるのか知らないが、やるならそこまで徹底してやるべきだ。ところが、今回、「本命は小沢」という中途半端な検察の姿勢が見え見えである。金権を暴くのではなく「小沢を潰す」なのだ。本来なら総理の管轄下であろうに、別のところからの指令でも出ているかのような突撃で、「小沢=金権」という国民意識を醸成するため「野中広務の小沢詣で」まで演出したなら大したものだ。
こんな作戦、誰がウラにいるか
検察によって徹底的に潰された政治家が2人いる。田中角栄、金丸信である。田中角栄は中国との国交を開いたし、金丸信は北朝鮮との太いパイプを作ろうとしていたと言われる。日本外交は実は日本独自では決められない。常にアメリカの世界戦略があり、その範囲の中で日本の役割は決まる。
折々のアメリカの政権交代で、その世界戦略も百八十度変わることがある。場合によっては同じ政権の中でもそれはある・・というのが、前回ブログの最後でご紹介した孫崎亨「日米同盟の正体」の分析である。田中はアメリカの意向に反して日中の国交を開いたし、金丸は北朝鮮をアジアの火種として残したいアメリカの意向を汲まず平和な関係を築こうとした。
小沢氏をこの視点で見ると、アメリカとの対等な同盟関係という、かなりアメリカ戦略と対決する挑発的な姿勢をとっていることが見て取れる。与党になる前から、米軍の日本への駐留は第7艦隊だけで十分と主張、与党になっては普天間問題で辺野古への移設反対の社民党を援護、中国に大勢の議員団を連れて表敬訪問、習近平国家副主席の日本訪問時の天皇会見問題での強硬姿勢と、「対等な同盟」と「中国最重視」という方針である。
アメリカのオバマ政権も中国最重視なのだが、アメリカ側から日本に求めることは、まずアメリカ最重視、そのアメリカの戦略に基づいて中国との関係を築くというふうに動きなさいというものだ。小沢氏は公然とこれに反旗を翻しているように見える。そういう大きな流れを見ると、マスコミや野党が全く関係ない「政治と金」の問題に終始しているのは奇異に聞こえる。あえて見て見ぬ振りか間抜けなのか?どちらにしても、この国は外から操るには「簡単な国」だ。
「政治と金」は本質ではない
私は政治資金の問題は重要ではないというつもりはない。しかしいつも、大きな政治の転換点、みんなが議論しなければならない課題が見えてくると「政治と金」の問題が出てくるということだ。いま議論しなければならないのは、日米の関係の問題、この国の財政の問題、人の生存と生きがいの確立と、コンクリートに変わる雇用と産業振興の確立の問題などなどであろう。
政治家が調査と政策立案、そして選挙のために数多くの秘書を雇い維持しようとすれば金がかかる。そんなに何十億円も要らないが億単位の金になる。それは会社経営した人であればわかるはずだ。秘書経験者の私としては、秘書はパンの耳をかじって生きろとは言いがたい。人並以上の労働には人並以上の賃金をもって報いるべきである。
それなのになぜ今の政治家はおしなべて「企業団体献金の廃止」を金科玉条にしてしまったのだろうか?私が以前から主張しているのは「完全な透明性」であって企業団体献金の廃止ではない。「真の中立」などこの世の中にない。企業や団体や市民運動、マスコミも旗色鮮明に、その支持する政党を支持する理由を明確にして打ち出すべきだと思う。それでこそ、一人一人が考えはじめる。自分がこの組織にいること、この新聞を読んでいることが、それで良いのかと。
今の政治資金規正法は特定の政党支持を旗色鮮明にしている政治団体ですら献金ができないという不思議な制度だ。しかし金は要る。そして各政治家ともあの手この手で法の網をくぐる。叩けばほこりの出る人たちばかりの中で、たまたまそのときそのときのキーパーソンだけを検察捜査権という伝家の宝刀でほじくり出す「検察」というのは、本当に政治を大事なところでねじ曲げる役割を担っている。今回の出方を見ても、本当につくづくそう思う。この検察を見て、「正義だ」などと思うとしたら、なんと日本の国民はお人好しなのであろう。
政治資金規正法は存続させるとしても、企業団体献金は解禁し(上限は設ける必要はあるだろう)、そのかわり1円の単位まで公開を原則とする形に変えるべきだ。支出も1円単位まで領収書必須添付とする。透明性を確保するのは、不正の観点ではなく、その議員が「どこのひも付き」かを有権者が判断するためである。電力会社からたくさん献金もらって原発を推進している議員、武器輸出産業からたくさん献金をもらっている議員、ゼネコンからたくさん献金をもらっている議員などなど、そうであるとクリアーに見えることが大事だと思うからだ。
企業団体献金が合法でも、西松建設や水谷建設から、工事受注の見返りに金品を受け取ったらそれは収賄罪で政治資金規正法でなくても罰せられる。今どき「票をお金で買う」という露骨な選挙運動をする候補者がいれば、それだけで指され逮捕されるだろう。逆に真面目にやろうとすると選挙を手伝ってくれた人に食事も振る舞えないのが今の選挙制度だ。いまだに貧乏な候補者が唯一足で闘える「戸別訪問」は禁止されている。この国の選挙制度は間違いだらけなのである。一日も早く、この愚かな仕組みから脱却すべきだと思う。
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