6回にわたってコメントしてきた参議院選挙が終わりました。結果は予想通りの自民党大敗でしたが、安倍総理は退陣拒否で、今後の政治がどう動くのか、民主党に「打つ手」があるのかなあ・・という、傍観者的な観方があちこちに跋扈しはじめています。動かすのは政治家ではなく一人ひとりの市民であるはずなのですが。今回はちょっと怒りの・・メッセージです。
まず、この参議院選の最大のトピックスは東京選挙区川田龍平君の当選です。トップタイトルに入れたかったのですが、等距離外交の「市民の風」事務局長という立場から、それをひかえました。しかし、個人的には最も嬉しい当選でした。「無所属」というスタンスでの、今後の国会での活躍に期待したいと思います。
そして沖縄選挙区では糸数慶子さんが返り咲きました。社民党比例の山内徳信さんの当選とあわせ、沖縄には2人の明確に改憲反対の議員が誕生しました。(山内さんの場合は、同じ社民党比例議員だった太田昌秀さんとの交代ですが。)これで、辺野古への自衛隊掃海母艦の派遣など簡単には行えないという状況になると良いのですが。
その次のトピックスは、岡山選挙区と島根選挙区です。岡山では民主党新人の姫井由美子さんが、自民党参議院の重鎮・片山虎之助を破りました。片山虎之助氏には、参議院秘書時代に何度も実物に会いましたが、自分が参議院議員でなくなることなど日本が沈没してもあり得ないという自信に立脚して存在していたような議員です。尊大でえらそうでした。
島根も自民党の青木幹夫参議院幹事長の牙城で、国民新党新人の亀井亜紀子さんが、青木さんの片腕の景山俊太郎を破りました。まず自民党が敗れることなどあり得ないような選挙区で自民が敗れた・・ということは少なくとも有権者が相当に動いた結果であろうと思います。そのことが、29ある1人区で、自民党が6議席しか取れないという結果に現れたのであろうと思います。姫井さんも亀井さんも40代女性で、詳細な分析はまだできませんが、今回の選挙では、これまであまり動かなかった40代それも女性が動いたのではないかと思います。投票率では3%弱の増ですが、1%が全国では約59万票くらいですから、3%は177万票にもなるわけです。
9条護憲という観点からはどうだったでしょうか。冒頭に書いた川田君と糸数さんが朗報であったほかは、共産も社民も1人ずつ議席を減らし、あわせて12になりました。参議院定数242の5%を切りました。両党とも両党が伸びなければ憲法は守れない!といっていたわけですから、これでは憲法9条は守れないということを証明したようなことになってしまいました。この結果は国民が選んだのだ・・とでもいうのでしょうか?9条護憲の人が少ないわけではないと思います。そういう人たちにも、この2党が見放されつつあるという、そういう現実をいい加減直視すべきではないでしょうか。
なぜ見放されるのか?投票をしても投票をしても改憲を阻む力にならないからです。街頭で何百回「私は憲法が大好きです」と叫んでもらっても憲法は守れないのです。今の圧倒的な劣勢(本当にそうなのか、この両党が看板にしているから劣勢のように見えてしまうだけではないのか・・という冷静な分析も必要ですが・・)を跳ね返すために、自分たちは何をするのか、なぜ民主党や自民党や「護憲」だと自称している公明党やに押したり引いたりの揺さぶりプランが持てないのか。猛烈な反省が必要だろうと思います。そうでなければ、「自分たちだけが憲法を守れるのだ」というような発言を軽々しくはしてほしくありません。
その無力さと無能さを、実は有権者から見下されているのではないでしょうか?
ほかに9条護憲を掲げて「なけなしのお金をはたいて」挑戦をした9条ネットがあります。私はこの挑戦に反対でしたし、やはり予想通り議席は獲得できませんでした。とても頑張った人たちに申し訳ないのですが、どんなに志があっても、どんなに努力をしても、この闘い方はダメージを大きくするばかりです。得票数は27万票で、社民党の議席減に影響したとすらいえない低い数字です。あの得体の知れない「女性党」よりもはるかに少ない得票数を、どのように総括するのでしょう。
いずこも闘いかたが間違っているのです。
民主党新人で片山虎之助を破った姫井さん、国民新党で島根の自民党候補を破った亀井さん、2人とも「市民の風」のHさん調査では「準保守」分類です。でも「憲法9条は守る」という発言をしています。そんなのは嘘だ・・といってあちらへ追いやるのか、それとも「その発言」を信じ、そこからさらに深めていく関係性をつくっていくのか、ここは大きな違いとなるだろうと思います。
もう1人の無所属の闘いは広島選挙区の河野美代子さんでした。私は7月14日のブログで民主党候補に票を集中せず、それを河野さんに回せば自民党が落とせるという内容を書きました。自民党溝手顕正35万票と予測、結果は39万票でした。河野さんは30万票のところ、民主党と共産党の票を集中させることで38万票ならなんとか・・と書きました。実際には、溝手氏が少しだけその上を行き、河野さんの得票も20万票弱でしたので集めてもダメだったと読めますが、民主党の佐藤氏が57万票の大勝でしたので、「市民の風」方式とは対照的な逆の結果が出た選挙区と言えます。
私が応援に飛び込むべきだったかと悔やまれます。
神奈川では公明党落選という大波乱がありました。しかし、ここでも民主党への票の集中が起こりました。それぞれ70万票、60万票と予測していた民主党票が101万票と89万票、合計190万票で、前回16年選挙を上回りました。共産党の畑野さんは、私が睨んだ基礎票40万票からさえ票を減らしました。
多くの選挙区で、おそらくこんな状況で民主党が大勝したのだと思います。そこで、最後に締めくくりたいのですが、これは民主党を支持した票ではないということです。自民批判票あるいは安倍嫌悪票、その受け皿が民主党になったということです。この背景には、マスコミの報道の仕方、個人の選挙運動が事実上できない比例区選挙の仕組みなどがあります。次回には、この問題を少し詳しく考えてみたいと思います。