2050年50%といって、あああれだな、と思う人が何人いるだろうか?これは2050年に年金をもらえない日本国民の数とか、2050年の日本の税率とか、そういうことではない。地球温暖化対策として日本が削減するCO2の割合である。
安倍総理が突如、5月24日の「アジアの未来」晩餐会で打ち出したものだ。その演説のタイトルは「美しい星へのいざない」と題されていて、ついに『美しい日本』から『美しい星』へと総理のコンセプトは進化を遂げたらしい。
問題は、CO2の50%削減は「いつから」(いつのレベルを基準にして)なのか・・ということである。
さきのG8、舌をかみそうなハイリゲンダムサミットにおいて、EUをはじめ多くの国が1992年レベルの50%削減ということをめざしていた。そこに「いつから」を消去した安倍総理案が突然、本当に数日前というタイミングで「殴りこみ」をかけたのである。
地球温暖化問題がもはや抜き差しならない状況に迫っていることは、多くの人には認識されている。しかし、ブッシュとか胡錦濤とか安倍総理のような政治世界の人は、本気には考えておらず、外交かけひきの一つぐらいとしか考えていないらしい。そここら、言葉をもてあそぶ軽々しい提案や表現が出てくるのではないか。ブッシュも突然地球温暖化問題は大切だといいはじめ、京都議定書とは別の枠組でやると言い出したし、中国も目標だけはすごい。
その中国では急速に川が枯れ砂漠化が広がっているが、その原点はヒマラヤの氷河が融けていることと関係がある。南極や北極の氷が解ける(あり得ないと感じるかもしれないが)ということが、現実にいまこの瞬間にも進行中である。ドラスティックに深海からの海流の流れが変化しつつある。これは、気象が根本的に変わってしまう可能性を示唆している。これに対し、私たちは手立てがないのか、というとそうでもない。
手立てはたくさんあるのだが、とにかく難癖をつけてやらない、もしくはやらせないのである。
自然エネルギーの普及はその一つだ。が、はじめから大して発電容量が稼げるはずがないと普及政策はポーズだけというものが多かった。いまのところ、政府の本腰を入れた普及応援策がるとはとても思えない。何も政策がないのに、2050年50%とぶち上げる。政策はと見ると、CO2の固定化技術など、あと何年かかるのか・・というようなものが多い。
安倍首相は2050年50%を、みずからのサミットでの成果のように宣伝しているが、もともとEUは1990年レベルの50%削減を目指していた。安倍総理のわけのわからない提案によって、「いつから」50%なのか、なんだか目標の定まらない「合意」になってしまったのである。
「あいまいにする日本」、これが2007年の安倍ニッポンに与えられる称号であろう。イラク攻撃の正当性問題でも、年金問題でも、松岡農相の自殺問題でも・・、すべてがあいまいである。少なくともEUは今度こそはアメリカとの対決をはかろうとしていた。安倍総理の提案は、これに水を差し、アメリカが逃げ込む格好の「あいまいな決着」を作ったという点で、アメリカにやさしく地球に厳しい態度をとったことは間違いない。
ところが、日本のマスコミの多くは逆の評価を書いている。週刊朝日の田原総一郎のコメントはこうだ。そもそも1992年レベルに比べて・・というのがおかしいと。これは東西ドイツが分裂していた当時の東ドイツなど共産圏の排出量の低さをEUが自己の利益のために使っているのだ・・と。
田原さんは1992年にブラジル・リオデジャネイロでサミットがあったことすら忘れているようである。EUがそうしたのではなく、地球温暖化問題はこのときから世の中に問題提起され、政策対話がスタートしたのである。1992年というのはそうした歴史の一つの基点に過ぎない。それを今更、難癖つけようというのは、とうていジャーナリストの風上にはおけない。
というわけで重要な1992年。日本はそれをベースにして、すでに14%上回っている。環境省は「チームマイナス6%」というのをスタートさせているが、とても間に合わない。総理官邸は、大々的に予算をつけて、先進的な「チームマイナス14%」というのを立ち上げるべきではないだろうか?それでこそ、2050年に50%の本気度が示せるというものである。
つまりは、責任をとらなくっていいという、そういうタイムスケールなんじゃないかって思う。
努力するのは、ずっと将来の政府だし、その政府が「昔の人が決めたこと」を実行できるかどうかなんてわからない。
これって、ていのいい先送り、なんじゃないの? とか思ってしまいます。
本当に、チームマイナス14%は必要ですね。
そうそう、紹介されていた写真集、買ってしまいました。
どうもありがとうございます。
今井明さんの写真集どうでしたか?
チームマイナス14%、マジにつくりたいですね。
JRや高速道路やロスの大きい送電線網など、大きく手をつけるところがいろいろあると思います。
ISEP(環境エネルギー政策研究所)の次の一手になるかもしれませんね。
なお、2050年はあと30年ちょっとなので、あのしぶとそうな安倍総理は生きていると思いますよ。中曽根ふうになって・・。