友人のカメラマン、今井明さんが写真集を出した。先月の末、5月26日に出版記念会があって行って来た。すぐにでもご紹介したかったが、直後に松岡農水相の自殺等々があり、少し遅れてしまったが、その感動を伝えたい。
この写真集は、アスベスト被害者を追った写真集である。アスベスト問題が指摘され始めたのは、私のおぼろげな記憶では30年も40年も前だと思う。ところが、日本で大きな問題になり、制度的な規制や対策が取られ始めたのは最近のことである。
大きな問題にし、政治を動かしたのは、ほかならぬ被害者自身である。今井さんは、この被害者の運動に常に寄り添い、黙々と写真を撮ってきた。出版記念会には、遠方からも多くの被害者、あるいはご遺族が参加をしておられ、今井さんへの「謝辞」や「賛辞」を語っておられた。
そしてこの今井さんの写真集には大きな特徴がある。被害者の皆さんの写真が、みんなニコニコ笑った家族写真のような穏やかな写真なのである。普通、被害を伝える写真は、悲惨さを伝える苦しげな写真や病魔と闘う写真などを集める。ところが、今井さんは違うのである。
このことを、今井さんは出版記念会でこう語っている。アスベスト被害を受けている人は、特別な人ではないということを伝えたかった。あなたの隣りの人かもしれない。それほどに、普通の人が被害を受けている、ということを知ってほしかった・・と。
今井さんにカメラを向けられた被害者は皆さん穏やかな安心した良い表情になる。自分たちの運動に長年常に寄り添ってくれたカメラマンであることを知っているからだろう。そして常に被害者の立場に立ち、その目線からシャッターを切ってきたことを知っているからだろう。
そのことが原因なのか、本人は語らなかったが、予定していた出版社と写真の内容について意見が食い違い、結局、すべてを引き取って自費出版となった。出版費用も被害者家族、遺族、支援者が出し合ったらしい。価格は1冊1500円。下記のサイトからも購入できる。
http://www.atworx.co.jp/works/pub/ashita.html
もともと今井さんは人物を取ることに長けたカメラマンであった。良い表情を取るのである。その力量が、アスベスト被害者と関わることによってさらに磨かれたようだ。
ところで、アスベスト被害者の運動は、私の知る限りでは30年以上前、横須賀の米軍艦船のメンテナンスを行う補修工の人たちの中で塵肺などの疾病が発生し、その補償と規制を求める運動からだったように思う。
海外ではすでに規制されていて、日本では野放しという落差が、その頃から指摘されていた。労災職業病センターが神奈川県内に作られ、友人、知人たちがこの運動を担いはじめた。そのようなう友人知人の労苦がやっと報われて、現在のようにアスベスト問題が社会の前面に出てきたのである。
アスベスト被害は長い潜伏期間がある。まさに20年、30年を経て、その影響が現れる。そういう意味では、この海外の規制から遅れること数十年、その間にアスベスト被害は日本中に広がってしまったのである。
学校や病院やスーパーマーケット・・、今後ますます、本当に日本中の町のあちこちで、日本の政治の「無策=犯罪」の結果が現れてくるだろう。
ついでに、「介護保険情報」という月刊誌に書評も書きました。
竹村さんには掲載誌を送りました。
もし、見かけることがあったら、読んでやって下さい。