現実逃避 80年代に時間旅行というタイトルで書いていた頃の記事です
村上春樹の新刊
1Q84 はもうお読みになりましたか? わたしはまだ。
ノルウェイの森が映画化されるそうですが・・・
うーん、これは積極的に観に行きたいとは今現在は思っていません。
若い頃のわたしは案外読書家で、年間100冊くらいの小説は読んでいたかと思います。
ん?そのくらいで読書家なんて自分で言うのはえらそう。単に本を読むのが大好きでした。
結構記憶力はいい方で、生きていく上では何の役にも立たない余計なことばかりを覚えています。
しかしです、読んだ本の内容がすっかり頭の中から消え去っていることだってあるのです。
かと思えば、大体あの辺りにこう書いてあったとかくだらないことは覚えているんです。
ノルウェイの森は87年に出版されたそうですが、わたしが読んだのはその翌年だったかと思います。
とにかく流行っていたのです。流行り物的な扱いを作家はどう思っていたでしょう。
現在は流行り物とは距離を置くことにしています。
年をとっただけかもしれない
流行の渦中より、少し時間を置くことで正当な評価ができるという屁理屈。
鮮度の落ちたものを読んだり、観たりするのです。
節約にもなります これをケチともいいます
ノルウェイの森は物語に入る前に、目を引く装丁、(
クリスマスカラーとでもいうのか?赤と緑の上下巻に金帯)
著者、村上春樹というところに人々は引かれるわけ。わたしも、『蛍』『羊をめぐる冒険』とか好きでした。
こう言うと、なんですが、村上春樹のちょっとわけがわからない感じなところが当時のわたしを魅了しました。
わかりやすそうなふりをして簡単にわかってもらっちゃ困る、という奥深さが隠れているような、
云いたい事を押し出してはこない、別に何かいいたいわけじゃないんだけど・・・
というふりをしているような世界を感じていましたっけ・・・
何のことやら
高校生の頃レイモンド・チャンドラーが大好きだったのですが、大学で初めて村上春樹を読んだときに、
なぜか後ろに吹いている風に似たようなものを感じて、ノルウェイの森に至るまでの作品を
ほとんど読んだ覚えがあります。にもかかわらず、ほとんど忘れているんですよねえ・・・一体なぜなんだろう?
覚えていても断片的で、あれこれ考えてみるに、出た答えは、
村上春樹を読んでいた頃のわたしは気取った鼻持ちならぬ奴だったということです。
心を入れて本を読んでいなかった気がするのです。
冷えすぎたビール、ラバーソウルの靴、100パーセントの女性、カティ・サーク、といった
小説に出てくる小物に洒落たものを感じて(今見ると何でもないのですが)本もファッションみたいなものでした。
また話が脱線。ノルウェイの森に話を戻しますが、学生の頃、確か研修に行った先で、
ハイキングかオリエンテーリングに参加して山道を歩いているとき、友人の一人が
『ノルウェイの森読んだ?』と聞いてきました。『いいえ、まだ 良かった?』
『うーん・・・(ちょっと口ごもる)なんか出てくる人がみんな死ぬの まあ読んでみるといいよ』
とのことでしたが、彼女所有の本は三人くらいの予約が入っていて、回ってくるには時間がかかりそうでした。
程なくして、一般教養の政治学だったかな?の講義中に教壇からの声『ノルウェイの森、みんな読んだかい』
散々何やら語っていらっしたわけですが、結論、『あれは、不能の男女の話だ』
装丁やタイトルから、ビートルズとか、クリスマスとか、北欧とか、樹木を勝手に想像していたわたし。
友人と教授先生の話を足すと、ん?『みんな死んで、不能の男女が出てくる? 一体どんな話やら?』
それから日々は忙しく過ぎて夏休みになり、近所の古本屋さんに並ぶノルウェイの森を発見。
あんまり安くはなかったけど、奮発しました。
こんなくだらないことは覚えていやがる
しかしです、『みんな死んで、不能の男女が出てくる』っつう無茶苦茶な先入観がほんと邪魔でした。
何か、自分の頭をそれに合致させようという試みでごちゃごちゃ。
色々期待しすぎてしまったこともあるかと思いますけど、読み終えたときの感想は『こんなもんか』でした。
この作品を否定する気は全くないですよ。言いたいのは人の感想に惑わされたことの勿体無さです。
これから読む方が、万に一つこの駄文を読んで変な先入観を持たないように感想を薄く箇条書き。
『みんな死ぬ話』っていうのは、まあそうねえ・・・。当たらずといえども遠からず。
答えがそこにあったわけではないけれど、誰かの死に対して、
その乗り越え方について考えさせられました。
恋愛小説ではない。(100%恋愛小説は売り出し文句)
『不能の男女』っというのは・・・言わずもがな、性的にってことなのでしょうけど、
(うーん?子供だったからぁもう一度読んでみないとわかんないなぁ・・・嘘)
成り立っていたかどうかは御一読あれ。
あんまりこういう話題は苦手だけど、この本の根幹を成している気もするので、
思い切って触れますが、この作品の性描写には好感が持てませんでした。
主人公がどちらかと言えば、孤独癖の強い印象ゆえか『この道ばかりは別』って感じが嫌だったんです。
そう言えば、文学科の友人がこの本の性描写の部分を「あれ読んでて気分が悪くなった オエッ」
と言っていましたっけ・・・その友人、映画「トップガン」のラブシーンを観ても同じように言っていました。
大ベストセラーでしたが、それ以前の村上春樹の作品より秀でているとは思わず、
以前のものを膨らませた印象。はっきりしたことは『僕』が名前を持ったっていうこと。
この本を読んでいた80年代の後半は現在とも、それ以前とも異なる、価値観を持ち始めた頃でした。
その頃からポイポイ捨てるようになったものを、
今頃になって慌てて拾い集めているような気がするのはわたしだけではないはずです。
今回の新作は書き下ろしで、売り方も先入観を持たせない配慮がされているみたいです。
そして、ノルウェイの森の映画化キャストなのですが、レイコさんの配役に注目していました。
霧島れいかさんという美人。知らない人です。
この方
http://nest-net.jp/talentprofile/kirishima_reika/main.html
別に知らない人でもいいのですが、わたしのイメージはジャズシンガーの綾戸智恵さんを若くした感じ。
ついでに主人公は村上春樹本人を若くした感じ。
どちらも風貌のことですが
「小説に出てくる人(主人公のことでしょうね)と、作家のイメージがぴったり重なるのは村上春樹よ」と言っていた人がいたなあ・・・
ノルウェイの森以降、村上春樹を読んでいません。
上のように書きましたけど、その後人に薦めたりもしていたので、自分にとっては価値ある一冊だった
と思いますので特に読まない理由になったわけではなく、単に読みたいと思わなかっただけです。
確か、ノルウェイの森の主人公は30代の後半になってドイツ?にいて過去を見ていました。
劇的なことはないけど、わたしもここで80年代の過去を取り出して眺めています。
だから、1Q84が1984を意味するのなら、読んでみたいかな?
あと、カポーティの翻訳をしているのを読みたいと思ってます。
ノルウェイの森、。迷い込むもよし、引き返すもよし、最短コースでぬけるのも、楽しむのも全て良し。
だってぇ昔、『若きウェルテルの悩み』/Die Leiden des jungen Werthersを読んだ時、解説の人が
ウェルテルを書いたことでゲーテの悩みはゲーテだけのものでなくなったと書いてたのです。
そして、音楽などもリリースっていうでしょ。手放しているわけです。
それらを拡大解釈して、今更読書感想文コンクールに作文を出すわけでもないので、
一冊の本からどんな感想を持ったっていい!!!というのがわたしの大人の解釈。
そして、何か一つでも得るものがあると非常に良い。それは漢字一文字を覚えたということでもいいの。
心が動くと一層良い。それがわたしと本との気楽な付き合い方。
おしまい