「かたま」→「かたみ」【筐】
大槻文彦編『言海』〔一八八九(明治二二)年刊~一八九一(明治二四)年刊〕所蔵本は、無刊記本(大型一冊)と明治四四年版本(中型一冊)、他に(小型)など。
かたま【堅間】〔名〕〔編ミテ目ノ密ナル意〕籠(かご)。笊(ざる)。〔架蔵一九五頁二段〕
かたみ【筐】〔名〕〔古名、堅間(かたま)ノ轉〕カタマ。籠(かご)。「花ー(筐)」〔架蔵一九五頁二段〕
「かたま」から「かたみ」という、今の「かご」「ざる」の古名だが、此方も
かご【籠】〔名〕〔圍籠(かきこ)ノ略カ〕竹ヲ削リテ編ミ造レル種種ノ器ノ總名。籃〔架蔵一九五頁二段〕
ざる【笊】〔名〕〔笊籬(サウリ)ノ音轉ナラムト云、和名抄ニ笊籬(ムキスクヒ)トアリ、うんどんノあげざるナリ、下學集ニ、笊籬(イカキ)、味噌漉ト注セリ〕竹ヲ削リテ編メル圓ク開キタル器ノ稱。カタミ。イカキ。〔架蔵四二六頁一段〕
と収載する。
茲には、『和名抄』『色葉字類抄』観智院本『類聚名義抄』に見える「笭箐(レイセイ)」の漢語記載は見えていない。此を同時代の、
高橋五郎『漢英対照いろは辞典』〔一八八八(明治二一)年刊〕
れいせい【笭箵】〔名〕かご、あみたるかご(漁夫等が持つ) A basket or creel. 〔四三九頁r〕
かだみ【筐】〔名〕かご、かご、籠、樊、笯、簍、籃、笭箵(魚籠) A box, a case; a basket.〔三一五頁r〕
とあって、「笭箵」と表記は異なるが見えていて、意味も「(漁夫等が持つ)あみたるかご」とし、標記語「かだみ【筐】」の最後熟字とし「魚籠」としてその記載をみる。
そして、現在の小学館『日本国語大辞典』第二版でも、見出し語「笭箐」、「笭箵」の語例は未収載とする。