「帰人」と「婦人」
萩原義雄識
禅藉抄物『人天眼目抄』〔万安永種編〕本に、
○偏中正海雲依約タリ神山山ノ頂皈人鬂髪白シテ如絲羞ラクハレ對スレハレ秦臺ニ寒照ヿヲレ影ヲ 海雲カ神山ノ頂ニ約シタルヤウニ依タナリ。海雲ハ偏也。神山ハ正也。是偏中正ソ。㱕人ー㱕人一ニハ 作レ婦トモアルホトニ婦人ノヿニ見テ好キソ。婦人謂テレ嫁ヲ作レ㱕トアルニ依テソ。婦人ノ鬂髪カ白イニ依テ秦臺ノ寒キニ對シテ影ヲ照スヿヲ羞タナリ。秦臺ハ秦ノ鏡ノヿソ。秦鏡ニハ邪心ノ者カアレハキラリト移ルソ。爰テハ婦人ノ鬂髪カ白イニ依テ影ヲ照スヿヲ羞タナリ。又只秦臺トアルホトニ秦ノ樓臺ノヿニ見ヤウスルトモ照レ影ヲトアルホトニ鏡ノヿニ見ヘキソ。婦人ート云ハ偏位ソ。羞對ート云ハ正位ソ。是偏中正ソ。〔承應三年板、卷三・八十三オ(一九七頁)8~八十三ウ(一九八頁1)〕
とあって、「婦人、嫁ヲ謂テ㱕に作るトアルニ依テソ」と茲で「皈」に異体字「㱕」字が「婦」に作ることを良しとすることを説く。
皈人=「㱕人」と「婦人」 が共に同じく、一に解くことが記載されている。
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○紅梅下婦人(コウバイのもとのフジン)
蜀州に紅梅數本あり。郡の主閣を立て鑰をおろして遊人を其所へいるゝことなし。一日婦女二人髻(もとゞり)を高くゆひて廣袖(ひろそで)を着(き)て閣の欄干(ランカン)にもたれて笑語す。郡主不思儀なることゝ思ひ鑰(ジヤウ)をひらきて見じぇれば、閣の中にさらに人なし。只東の壁に詩を題したり。曰く、 南枝向[レ]暖北枝寒シヽ 一種ノ春風有[二]兩般ニ[一]憑[一]仗髙樓ニ[一]莫[レ]吹[レ]笛ヲ大家留取。倚ル[二]欄干ニ[一]事文類聚に見ゆ。〔五十五オ3~5〕
と言う語句に「婦人」が用いられている。