駒澤大学「情報言語学研究室」

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はたけ【白田・畠】

2024-08-14 02:33:43 | 日記
                                                                                              2024/08/13  更新
はたけ【白田・畠】
萩原義雄識

 『和名類聚抄』
十卷本 卷一天地部 田野類
廿巻本 巻一地部第二田園類第七・十二丁表2行目
漢字十卷本『和名類聚抄』注文/廿卷本『倭名類聚抄』注文

白田  續捜神記云江南之白田種豆[白田一曰陸田和名波太介或以白田二字作一字者訛也日夲紀云陸田種子波多介豆毛乃今案延喜内膳式營瓜一段種子四合五勺位三百六十糞人壅人師云位訓久良比糞訓古江壅訓豆知加布

    續捜神記云江南畠種豆畠一曰陸田[和名八太介

 『和名抄』二種の標記語は、十卷本が「白田」、廿巻本が「畠」と記載する。「和名(ワメイ)やまとな」を真名体漢字表記「波太介」と「八太介」と第一拍の漢字表記を字母「波」と「八」を用いて記載する。十卷本では「或以白田二字作一字者訛也(或は白田の二字を以て、(畠の)一字に作くは〈者〉訛(クワ)あやまりなり〈也〉)」と記述する。此の漢字表記については、漢籍『續捜神記』の「江南之白田種豆」を引用し、注記説明としている。
 現行の小学館『日国』第二版には、当該語漢字「白田」「畠」を和語「はたけ」と収載した『和名抄』を語用例として引用していない事実を茲に再認識しておかねばなるまい。ただ、十卷本の「白田」の語については、【辞書/表記】に「【白田】和名・名義」と載せるに過ぎない。
 また、「【畠】(国字)白く乾いた農地の意。水を引かない乾いた農地。「田畠(でんぱた・でんばく)」《古はたけ》」と説明するが、此の単漢字は「国字」でないことを明確にしておきたい。実際、仏典資料では、『地藏菩薩儀軌』〔唐〕に、
○若念枯田畠五穀生者。加持古蔓菁。加持散。
と見えている。此外、内典資料に見る「畠」字は、数は多くはないが見いだすことが出来る。こうして、本邦に於ける和語「はたけ」と結びついていったと見て良かろう。
『名物六帖』《卷一・地理上・田疇村落・二六オ》
【白田】ハタケ。[晋書傅玄伝]白田、収至㊁十餘斛㊀。水田、収㊁数十斛㊀。
『晋書』傅休奕傳●上疏曰近魏初不務多其頃畝但務修其功力故白田收至十餘斛水田收數十斛白田見上。又晋書劉琨遣䕶軍王秀等救壺闗勒敗秀於。又李白贈徐安宜詩見楚老歌詠徐安宜又馬上聞鶯詩蠶老客未歸已繰絲厨田晋書陳騫傳賜騫親兵百人十頃厨園五十畝厨士十人鹵田晋書楊方

《補助資料》
小学館『日本国語大辞典』第二版
はたけ【畑・畠】〔名〕(1)野菜、また穀類をつくる耕地。水田に対して、水を引き入れない耕地をいう。はた。白田(はくでん)。*万葉集〔八C後〕一八・四一二二「雨降らず 日の重なれば 植ゑし田も 蒔きし波多気(ハタケ)も 朝ごとに しぼみ枯れゆく〈大伴家持〉」*宇津保物語〔九七〇(天禄元)~九九九(長保元)頃〕忠こそ「田・はたけ売りつくして、数知らずつかひ給へば」*報徳記〔一八五六(安政三)〕八「独り圃(ハタケ)を耕して以て活計を為す」(2)得意とする分野。専門の領域。また、ある特定の分野や領域。*洒落本・商内神〔一八〇二(享和二)〕「おいらがはたけにゃア、薬にしたくても、そんなやぼてんはねへよ」*歌舞伎・御国入曾我中村〔一八二五(文政八)〕中幕「どうかいつもの敵役を見るやうで、此方の畑(ハタケ)でねえの」*夜明け前〔一九三二(昭和七)~三五〕〈島崎藤村〉第一部・上・一・三「景蔵はもと漢学のの人であるが」(3)類するもの。同類のもの。*洒落本・廓大帳〔一七八九(寛政元)〕一「『ふりそでの女中は、かはいらしうざんすね』『松ばやの喜瀬川といふはたけだ』」*洒落本・志羅川夜船〔一七八九(寛政元)〕西岸世界「火いぢりをして居る女郎はひてへをかなづちで二つほどくらはせると、大橋のお今といふはたけだぜ」(4)女。女の腹。母胎。子宮。*最新百科社会語辞典〔一九三二(昭和七)〕「はたけ 畑 〔隠〕 女の腹のこと」(5)出自。うまれ。でどころ。出生地。出身階層。*洒落本・傾城買四十八手〔一七九〇(寛政二)〕しっぽりとした手「ナニサあのけいはこっちの畠(ハタケ)ではねへ女郎さ」*人情本・春色辰巳園〔一八三三(天保四)~三五〕三・五回「契情も唄女も元は乙女にて、生所(ハタケ)が別に有にはあらねど」【語源説】(1)「ハタカ(畠処)」の転〔大言海〕。(2)野原の草を焼いて畠としたところからヒタキ(火焼)の転〔滑稽雑談所引和訓義解〕。またカハキテタカキ所であることから〔日本釈名〕。(3)「ハタ」は治田の義〔東雅〕。(4)「ハタケ(畑毛)」の義〔円珠庵雑記・和訓栞〕。(5)「ハヤシタゴエツチ(生田肥地)」の略〔日本語原学=林甕臣〕。(6)「ハタケ(陸田頴)」の義〔俗語考〕。(7)「ハタカ(陸田所)」の義〔言元梯〕。(8)「ハタゲ(墾処)」の義〔南島叢考=宮良当壮〕。→「はた(畑)」の語源説。【発音】〈なまり〉ハタキ〔秋田・熊本分布相〕ハダキ〔岩手〕ハダギ〔青森・津軽語彙・岩手・秋田〕ハタク・ハッケ〔熊本分布相〕ハダ〓〔千葉〕ハダゲ・ハダゲー〔鹿児島方言〕ハツケ〔伊予大三島・壱岐・壱岐続・鹿児島方言・大隅〕〈標ア〉[0]〈ア史〉平安・江戸○●○〈京ア〉(タ)【上代特殊仮名遣い】ハタケ(※青色は甲類に属し、赤色は乙類に属する。)【辞書】和名・色葉・名義・和玉・文明・明応・天正・饅頭・黒本・易林・日葡・書言・ヘボン・言海【表記】【畠】和名・色葉・和玉・文明・明応・天正・饅頭・黒本・易林・書言・言海【陸田】色葉・名義・書言【圃】易林・書言・ヘボン【白田】和名・名義【壠】色葉・天正【暵】和玉【畑】書言【同訓異字】はたけ【畑・畠・田・圃・園】【畑】(国字)山野を焼いて開墾した農地の意。水を引かない乾いた農地。「田畑(たはた・でんぱた)」「畑作(はたさく)」《古はたけ》【畠】(国字)白く乾いた農地の意。水を引かない乾いた農地。「田畠(でんぱた・でんばく)」《古はたけ》【田】(デン)畦で区切られた農地。たはた。耕作地。「田圃」「田畝」 物を産出する土地。「油田」「塩田」 いなか。「田夫野人」「田翁」 (日本で)た。水田。「稲田(いなだ)」「青田(あおた)」《古た・ところ・さかひ・みづ・のぶ・かり・かりす》【圃】(ホ)苗代。野菜や果樹の畑。「圃畦」「圃田」 特定の目的をもった場所。また、畑仕事。農夫。「圃人」「老圃」《古その・うね》【園】(エン)塀をめぐらした場所。その。にわ。一定の区域。「庭園」「公園」 野菜や果樹の畑。「農園」「園芸」 みささぎ。「園廟」「園寝」《古その》

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