チームが発足して間もなく 彼らは新たに発見された緊急課題の研究に着手した。
1971年 アーサー・ハーブスト教授が
若い女性に非常に珍しい膣がんが連続発生していることを詳細に報告し
患者の共通点は 母親が妊娠中にDESを投与されたことだとした。
これは全米を揺るがす大ニュースとなった。
マクラクランにとっては なかば予想し 恐れていたニュースだった。
「妊娠中にDESを投与された何百万人もの女性のことで
医学会は降ってわいたような大パニックだった。
DESの研究は もはや純粋な医学的関心だけのためのものではなくなった。
ふと気づくと 彼らはみな 医学研究の最前線にいた。
「最初は DESが膣癌の原因だという考えをはねつけられた。
そして 激しい論争になった。
いずれにせよ問題のある妊娠であり 薬はそれを救った という議論もあった。
おそらく染色体の異常からがんが発生したのだろう とね」
と マクラクランは説明する。
出生後すぐに異常が明らかになったサリドマイドと違い
問題が生じたのは思春期以降だった。
膣がんは青年期になって ホルモン環境が変化した時期に
発生したのだと思われた。
子宮内の化学物質の影響がそのように遅れて現れる例は
それまで報告されていなかったし
DESの副作用については知られていなかった。
これはまた 子宮内での化学物質暴露によって後からがんが発生した。
経胎盤発がんが報告された初めての例だった。
「ハーブストの研究はDESに対する認識を根底から覆した」と
マクラクランは回想する。
・・・略・・・
マクラクランは研究を発表し
DESがマウスに膣がんを発生させたと説明した。
突如として 彼は時の人となった。
NIEHSとの契約は更新され
DESに関する彼の研究は一躍有名になった。
・・・略・・・
チームが研究を進めるにつれ
DESにさらされて生まれてきたオスのマウスから
さらに予想外の事実を発見した。
「妊娠中にDESを投与された母親から生まれたオスを調べたところ
大きなショックと驚きを感じた」とマクラクランは言う。
「彼らは雌雄両方の生殖器官をもっていた つまり半陰陽だ」
・・・略・・・
マウスの実験結果は 人間に起きたことを不気味なほど予言していた。
1975年 彼らは研究結果を「サイエンス」に発表し
妊娠中にDESを投与したマウスから生まれたオスの60%が不妊だった
と報告した。
間もなくこの研究は 臨床医がDESの男性への影響を測る基準となった。
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