海の汐は満ちるとまもなく退くものだ、
朝の露、夕べの霧、澄みきった山の気、そして朽ち木や洛陽の中で育つからこそ、それぞれの薬効がそなわるのだ。
「いったい人間はどうしてこんな徒労を重ねているんだ」
――人間の一生とはどういうことだろう。主水正はあたたかい夜具の中で、熱いほどのななえの躰温に包まれながら思った。死ぬまで生きる、というだけなのか、それともなにか意義のあることをしなければならないのだろうか。
*山本は、人間、人間とうるさい、「人」が適当であろう。
人の生き方に規矩はない
兵部はまた、樹が呼吸することに気づいた。陽が登ってから森へ入ると、檜も杉も、その幹や枝葉から香気を放つが、その匂いかたには波があり、匂わなくなったり、急にまた匂いはじめるのである。
*平成三十年一月二十八日抜粋終了。
*ななえとつるの書き分けは見事なものである。
*と思ったが、口にしなかったという手法は再々に過ぎなかったか。
*次々の展開に、上下巻を一気に読んでしまった。
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