始発で地方都市から帰ってきたモラ(父)
おじたちに挨拶をするでもなく、葬儀屋に出かけていった。
葬儀屋さんは母を冷凍庫に保管してくれているだけで、本来面会はできないのだけど、特別に葬儀の前に一回だけなら、、、と会わせてもらえたようだ。
とても暑い夏だった。
お家に連れて帰ってくるとしたら、エレベーターの奥を鍵をもらって開けなくちゃならないし、管理事務所はお盆休みでもあったから、連れて帰らなかった。
ほどなくして、おじたちは一旦帰り、モラと二人きりになる。
「飯は?」
なぜ、わたしがあなたのご飯を用意しなくてはならないのか?自分のことは自分でやれよ、、、、
幸い、おじたちに朝ごはんをたべさせていたのでその残りを出す。
モヤモヤモヤモヤ。
子供の頃から、とんちんかんな親を見て育ってきたので、わたしはずっと、自分は
『強くて優しい人になりたい』と思っていた。
偽りの優しさや、弱いから優しそうに見える人ではなく、強くて優しい人でありたいと思って生きてきた。
そんなわたしは、どちらかというと、言われなくてもこんな時は、出来るならご飯をつくっておいてあげたいタイプの人間だ。
父がこんな人じゃなかったら、母があんな人じゃなかったら、彼らを普通に優しくねぎらい、尊敬し、もっと家族仲良く暮らしていたと思う。
優しさはいつも彼らの餌食になった。
モラは、犬が餌を食べるように、行儀悪くご飯を食べると、葬儀屋との打ち合わせの準備に入った。
午後、葬儀屋さんが来てくれて、葬儀の打ち合わせをする。
何も決められないモラ。
お花を選ぶときに、わたしは言った。
「全て白い花でお願いします」
母をお手軽パックの菊で送るのは絶対に嫌だった。
「こんな祭壇もありますよ」と、向こうも商売だから、フラワーアレンジメントの立派な祭壇を勧めてくる。
「いや、こんなのはいらないのです。とにかく、使うお花を供花も含めて、全て白にして欲しいんです」
という話をする。
モラは黙っていた。
が、、、、もろもろ打ち合わせを終えて、葬儀屋が帰った瞬間モラ発動である。
我慢できなかったか!
「花、、白にすると追加料金かかるだろ。やめてくれない?」
「は?さっき葬儀屋さんの前でいえばいいじゃん」
「電話してことわってよ」
「なぜ?大した差じゃないよね?お花くらいすてきなお花に囲まれて送ってあげなよ」
「うちには金がないんだよ」
うそつけ!社長!
わたしは、
「もう、知らない。好きにしなよ。あんたの奥さんなんだから」
と、家を出た。
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