高齢者医療費負担増が改革!? 9月23日

おちおち病院にもかかれないなあ・・・薬剤師として、窓口で患者さんに投薬する際、いつもつくづく思う。私のような貧乏人には特にその傾向が強いはずだし、何かと体がくたびれてくる高齢者の方々にとっても、医療費の負担増は実は死活問題であるはずだ。

ただ、つれ合いに先立たれ寂しい独り暮らしを強いられているシニアの方々にとっては、病院に出かけて、医師と話をしたり、看護師さんと気軽な会話を楽しんだり、また私たち薬剤師に身の上話を吐露することは、ある種、楽しみの一つでもあり、ストレス発散につながっていることは否めない。このような社会的通院が、外来診療の一定程度を占めている限り、医療費のムダは、実はなかなか解消されない。

2000年に導入された介護保険制度は、そもそも、膨らむ医療費を抑制することが主眼だった。しかし、現実には、異業種の人たちが介護保険制度をビジネスチャンスと捉え、本来相互扶助の概念であるはずの介護福祉が、完全なビジネスへと変貌してしまった。その意味でも、介護保険制度は「成功」したとはとても言えず、私は「発展途上」という表現すらおこがましいのではないかと感じている。完全に国策の誤りだ。

ケアマネジャーとして実際の現場を経験した者の一人として、介護保険制度の根本的な矛盾は、ケアマネジャーの独立・中立性を保てなかった点にあると私は断言する。特養や老健施設あるいは介護事業所に所属のケアマネジャーが立てるケアプランは、所属する事業所に少しでも多くの利益をもたらそうとするものだ。しかし、それはある意味至極当然の流れで、決してケアマネジャーを責められるものではない。

理想は、街角のかかりつけ薬局やそれこそ地域の郵便局にケアマネジャーが所属して、郵便局員と同様に公務員に順ずる立場で、利用者の尊厳を保ちつつ、あくまでも利用者の自立を念頭に過剰すぎない必要かつ適切なサービスをプランニングすることだと、私は考えている。

現状では、介護保険制度をビジネスチャンスと捉えた事業者が、1円でも多くの利益をあげようと必死で、結果的に医療と介護の総額は、年々益々膨れ上がっている。介護スタッフは、劣悪な労働条件にさらされ、高齢者への虐待のニュースも後を絶たない。

そんな制度の根本的な矛盾の解決をよそに、厚生労働省が打ち出した介護保険制度改正への方向性は、なんと筋力トレーニングなど予防介護へのスライドだった。定年退職後も、長年培った巧みの技を生かして、「年金+α」で社会に貢献していただけるシルバーネットワークの構築こそが、PPKならぬ元気なまま歳を重ねていくための王道だと考える私は、「元気高齢者政策」という言葉を日本で初めて提唱し、その推進を強く訴えてきた者の一人だが、デイサービスにトレーニングマシーンを導入して「重点を予防介護にシフトする」と言われた日には、正直、厚生労働省の見識とセンスを疑わざるを得ないほど驚いた。

しかし現実に、膨らむ医療費と介護費用を抑えるためという名目で、高齢者医療費の窓口負担の引き上げと、骨折もしかねないマシーンを利用したデイサービスでの筋力トレーニングの導入が、今まさに実行されようとしているのだ。

長野県など、「社会的通院」の代替施設の構築に成功した自治体では、医療費は年々抑制傾向にある。同県はまた、地域のネットワークを生かして、老々介護も含め介護保険制度を利用しなくても安心した介護サービスを得られる仕組みにも取り組み、成功をおさめている。国は、もっと現場に目を向けて、何故、医療費が高騰しているのかその原因を追究することから始め、抜本的な医療・介護保険制度改革に臨むべきなのだ。霞ヶ関の机上の空論からは、そろそろ脱却しなければならない。

残念ながら、小泉総理が圧勝したことで、来年には高齢者医療費の窓口負担が、現行2割の人は3割に、1割の人は2割に引き上げられる可能性が非常に高まった。しかし、間違ってもこれを、医療制度改革と呼ぶことはできない。現在2割負担をしている人は、年収ベースで夫婦二人世帯なら621万円、単身世帯なら484万円とされ、70歳以上の高齢者の約8%にあたる。経済的に苦しい子育て世代でも3割の窓口負担を強いられているのだから、裕福に老後を送る人たちにも同様の負担をという発想は、ある意味妥当な選択とも言える。

しかし、例えば混合診療を解禁して風邪をひいても自由診療という時代が到来するのであれば、いよいよ国民皆保険制度の崩壊という事態は免れない。あわせて、外資への売国・小泉流の郵政民営化法が断行されれば、日本の医療保険制度をも、アメリカが席巻するという事態に陥ってしまうのだ。果たして、そんな国家を幸福と言えるだろうか。

小泉マジックに我を失い、マスメディアにあおられ、「みんなで渡れば怖くない」的なムードで小泉自民党を圧勝させてしまった有権者は、自分で自分の首を絞めていることに一刻も早く気付かなければならない。勿論、選挙期間中にそのことを明言できなかった野党第一党である民主党の責任は、大きい。権力闘争に終始することなく、本当の意味での日本再生への牽引役として、民主党が大きく羽ばたくことが、今の日本には必要なのだ。

わずかな年金で生計を立てている高齢者の方々の医療費の窓口負担が、来年から2倍に引き上げられることになると思うと、窓口で投薬する私の心は益々痛む・・・。小泉政治とは、弱者斬り捨ての政治なのだ。努力し成功した人々が報われる社会は当然だが、それと同時に、無力の弱者がバッサリと切り捨てられる社会を、成熟した民主主義社会と言えるはずがない。現場を知らない人たちによる制度設計ほど、罪深いものはない。

地に足をつけて国民の目線に立った政策を発信する政党に、民主党が生まれ変われるならば、たとえ少数であろうとも、国会での存在感また存在意義を、強く国民にアピールできるはずだ。日本再生には、官僚政治からの脱却が必須であり、その為には絶対に政権交代が必要なのだ。民主党に、国民から見過ごされない「キラリと光り輝く政党」に脱皮する、真の覚悟があるか否か。今まさに、その真価が問われようとしている。
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なたまめの効用

最近、虫歯や歯周病の予防になることが判明。
巨大な豆、「なたまめ」です。
なんとなく梅干のような味だと、私は感じました。
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