前回示した、2つの式
50円 × 6 = 300円 (教員の解答例)
6 × 50円 = 300円 (教員と同じ意味で、児童が書き方を変えた解答例)
最初の式は、教員の式だが2つ目の式は、
「先生の式が正しいのなら、こうしても(こう考えても)正解であるはず」
というこどもの声を小生が代弁したものと思っていだきたい。
さて、この式(教員の解答例)が成り立つのは、前回の説明通り50円を6回たし算
する代わりに、6倍するための6であるという暗黙の了解がある場合のみである。
しかし、こどもたちにはそんなことは伝わっておらず、了解していない。
しかも、実際の計算式には50円の円は書かない(見えない)ので
素直に、この場合の6は問題文の6本であると認めざるを得ない。
ごともたちの声を代弁すると
「6 × 50円 としてもいいじゃん、なんでこれだと6本になるの?」
「それなら先生の式だって、50円 × 6本 じゃないか。」
その通り!
50×6=300
も
6×50=300
も
50(円)×6(本)=300(円本)
6(本)×50(円)=300(本円) ・・・もし50音順に統一するとすれば(円本)
で、とちらも300円にはならないのだ。従ってどちらも間違えというのが前回予告の結論。
では、どうしたら正解になるのだろう。
ここからの話は小学生には無理である。しかし、少なくとも教員はそのことを理解したうえで
こどもたちに分かりやすくどう説明したらよいか工夫するのが腕の見せ所である。
式の順番を覚えさせることが自分の役目だと思っているとしたら勘違いも甚だしい。
そうしないと、次の段階で必ず行き詰まる。
その話は次回とするが、まずは今回の結論を。
1本50円とは、単なる50円ではない。暗黙のうちに、50円/本という単位を伴う。
時速(1時間につき、1時間当たり)50kmが、50km/hであるのと同じである。
3時間で進む距離の計算で
3 × 50 = 150 時間(h) ということにはならない。
3(h) × 50(km/h) = 150(km) である。
順序の問題ではない。数値は数値として、単位は単位として別々に計算されるのである。
従って、
50(円/本) × 6(本) = 300(円)
6(本) × 50(円/本) = 300(円)
となり、どちらも300(円)という答えが出る。
これが本来の正解である。
しかし、この話は小学生には無理なので、前回述べた通り大切なのは
たし算を6回する代わりの6なのだから、6本を掛けるのではなく
「単なる6を掛ける(6倍すればよい)こと」だけ理解させればよいのだ。
順番は推奨程度にしておくべきである。不正解はとんでもない話である。
こどもが、6を掛ける(6倍する)という意味で、6を使っていることさえ理解していれば
よいのであり、式の順番ではなく、そのような考え方を指導すべきである。
そうすれば、商品の単価がいくらであっても、またお菓子7個であろうと、画用紙8枚であろうと
関係ないことにこどもは気づく。
今回の問題文も、教員が説明するのに都合のよいように単価、個数(数量)の順で書かれているだけで
問題文のパターンはいくらでも考えられる。
例えば
「普通の鉛筆と色鉛筆を4本ずつ買った。普通の鉛筆は1本60円で、色鉛筆は普通の鉛筆より15円高かった。
代金は全部でいくらになるか。」
「かける数」と「かけられる数」なとどいう言葉遊びはこどもの思考を停止させるだけだ。
かけ算を使う場面は、今回の問題だけではなくたくさんあるのだから。
次回は
50 × 6 = 300円
6 × 50 = 300本
と指導されたこどもたちが、次の段階で混乱する場面について考えてみる。
この混乱は、間違った指導による弊害とも言える問題である。