前回のポイントを整理しておく。
1.問題文に出てくる数値は単なる数値ではなく、必ず単位を伴う。
その単位を無視して勝手に使ってはいけない。
2.小学生に(円/本)の単位は無理なので、たし算を繰り返す回数の代わりとして使う場合は
単なる数値(何倍)として使ってよい。6本でも8個でも9枚でも関係ない。
このことを踏まえ
50 × 6 = 300円
6 × 50 = 300本
と指導されることによる弊害を考えてみよう。
この指導によって、こどもたちは「最初に書かれた数値に意味(単位)がある」と理解しているはずである。
では、長方形の面積を計算する問題を考えてみよう。
(問題)たて4㎝、よこ6㎝の長方形の面積はいくらか。
当然のことながら、面積の出し方は (たての長さ)×(よこの長さ) または(よこの長さ)×(たての長さ)
と指導されるはずである。
(解答例1) 4 × 6 = 24㎝
(解答例2) 6 × 4 = 24㎝
自信をもってこどもたちは答えるであろう。
50 × 6 = 300円
6 × 50 = 300本
と指導してきた教員は、この面積計算が間違っていることをどう説明しこどもたちを納得させるのだろう。
お得意の、頭ごなしに面積の単位は平方センチメートル、書き方は㎠であると丸暗記させるのだろうか。
いずれにしても、誤魔化すしかなくなる。
では
50 × 6 = 300円
6 × 50 = 300円
どちらでもよいと指導できる教員ならどうでしょうか。
この場合の6は6本ではなく、50円を6回たし算する代わりの6なのだから
単なる6倍の6で単位はない。
ということをこどもたちに理解させることができる。(6が6本を表してはいないことを理解させられる)
なので、次のような問題と根本的に違うことを明確に説明できる。
(問題例)4㎝のひもが6本あります。全体(つなげた場合の合計)の長さはいくらになりますか。
(解答例1) 4(㎝) × 6(単位なし) = 24㎝
(解答例2) 6(単位なし) × (4㎝) = 24㎝
( )の中は見えないけれど、このような計算をしていることを説明すればよい。
面積の問題に戻ると、この場合は「たし算の代わりになる数値はない」ことを説明すればよい。
たての長さ × よこの長さ (または逆)
という「かけ算しか方法がない」のである。
つまり単位を無視してはいけないことを説明する。
だから( )の中は目には見えないけれど
4(㎝) × 6(㎝) という計算、または
6(㎝) × 4(㎝) という計算をしていることになる。
ということをこどもたちに理解してもらえばよい。
このとき、面積の単位が㎝ではない(㎝ではおかしい)ことが、こどもたちにも容易に想像がつくはずである。
この後、面積の単位の書き方や読み方をどうするかは教員の工夫次第。
数値のもつ意味を正しく理解させることなく、「言葉遊び」による計算順序の強制など
こどもたちの思考力向上に全く役立たないことを理解していただけたと思う。